第151話 北大陸の冒険者斡旋組合
ノルテ・ボーデンの冒険者斡旋組合は、ココリ街で聞いた場所に建っていた。大きな街だけあり、冒険者斡旋組合建物の大きさも今まで一番大きい。
石造りで、二階建て。体育館を四つ繋げたような大きさだ。
入り口も大きい上、二重になっていた。この辺に雪国らしさを感じる。
中には入ると昼間だけあり冒険者達が多い。
外が吹雪のためか皆、外へ出ようとはせず適当に雑談をしたり、受付嬢と相談、壁に貼られたクエストなんかを確認している。どこにでもある冒険者斡旋組合の光景だ。
オレとリースが最初に雪を払い落とし中へと入る。
一瞬だけ注目が集まったがすぐに他へと移る。冒険者斡旋組合に新参者が顔を出すなど日常茶飯事だ。
次にシアが続く。
彼女は手に鞄しか持っておらず、雨具を付けていないはずなのにほとんど濡れていない。
いったいどうやって降る雪を回避したのだろう。
「いらっしゃいませ、今日はどういったご用件ですか?」
受付嬢がめざとくオレ達を見付け、声をかけてくる。
この辺では見ない顔で、まだ若いそうなため冒険者登録に来たのかと思っているらしい。
オレはタグを取り出し、用件を告げる。
「飛行船の停める倉庫を借りたいのですが」
「承りました。それではこちらの番号札をお持ちになってお待ち下さい」
オレは彼女から番号が書かれた木札を受け取る。
ちなみにこのやりとりをした受付嬢は、獣人種族の女性だった。他に対応している受付嬢にも魔人種族はいないようだ。
「どうやら例の受付嬢さんはいないみたいだな」
「あたりまえです。ここにも居たら、怖いですよ」
「いやいや逆にいないと物足りない気がしないか?」
「もう、しませんよ」
「こっちの雪はなんだかさらさらして、まるで粉のようですね」
『妖人大陸などでは、もう少し雪がべたついてましたよね』
「こっちの雪は他のに比べて水分が少なくて、雪の粒が小さい粉状なんだって。魔術師学校の図書館で読んだことがあるよ」
嫁達の声が入り口辺りから聞こえる。
見ると、メイヤ、クリス、スノーの順に室内へと入ってくる。
オレの分の雨具も綺麗に畳んでいてくれたため遅れたのだ。リースの分はシアが自然な動作で受け取りすぐ畳み終えてしまった。
本来、オレの雨具もシアが畳む所だったが、彼女達がやりたいと断ってしまったのだ。
なんだろう……妻としての拘りみたいなものなのか?
『!?』
「ん?」
スノー達が入ってくるベルの音が響く。
冒険者達は先程のオレとリースのように、スノー達が合流したオレ達一行を一瞥する。
一度、みんな視線を元に戻したがすぐさま目を剥きこちらを再度見る。
その視線には驚きと興奮の光が灯る。
まるでダンジョンに潜り込み隠し部屋を発見、宝箱を見付けたような悦びの光だ。
「「「その白狼族は! 俺(私、儂etc)の獲物だぁぁぁああッ!」」」
「はぁぁ!?」
冒険者斡旋組合に居た冒険者達が一斉にオレ達目掛けて突撃してくる。男女、年齢、種族関係なく全員だ!
白狼族が獲物って!? どういうことだ!
「若様! 奥様方! お下がりください!」
シアがオレ達の前にその身を躍らせると同時に、手にしていた鞄の取っ手に付いている――引鉄と安全装置が連動したスイッチを押し込む。
側面の銃口を隠していた名札を、9mm(9ミリ・パラベラム弾)が吹き飛ばす。
『うぎゃぁ!』
冒険者達は9mm(9ミリ・パラベラム弾)を喰らい床へと倒れる。中には魔術師も居て咄嗟に張った抵抗陣で防いだりしていた。
鞄には1丁のMP5Kしか入っていないためすぐに弾切れをおこす。
「シア、こんな所でグレネード使うなよ!」
「はい! 若様!」
こんな近距離で使われたオレ達まで被害を受ける。
シアは返事をしながら、剣の一撃を鞄で弾き返し、さらに向かってきたクマみたいな冒険者を鞄で殴り倒していた。
「リース! 特殊音響閃光弾!」
「分かりました!」
リースが上着ポケットから特殊音響閃光弾を両手に1つずつ取り出す。ハイエルフが持つ精霊の加護を隠すための行動だ。
オレは彼女の手から2つとも奪い取るように掴む。
「みんな! 特殊音響閃光弾を使うぞ! 部屋を出ろ!」
声をかけ安全ピンを口で抜き、群がってくる冒険者達へと投擲する。
オレ達はすぐさま扉の外へと飛び込んだ。
入り口近くで襲われたのが不幸中の幸いだった。
扉を閉めるとほぼ同時、瞬間的に175デシベルの大音量と240万カンデラの閃光が室内を満たす。
ゆっくりと扉を開くと、冒険者達はみんなうめき声を漏らしながらうずくまっていた。冒険者のなかには魔術師も居たがいくら抵抗陣でも、特殊音響閃光弾の光と音までは防げなかったらしい。
当然だ。
特殊音響閃光弾の衝撃波は強く、窓ガラスを吹き飛ばし、時計やテレビ、家電などの精密機器を壊すほどだ。
前世の地球、特殊部隊員が犯人の立て籠もっている建物内に特殊音響閃光弾を投入し、バリケードに当たって跳ね返ってしまった。結果、足下で特殊音響閃光弾が爆発し、足を骨折させる事件が起きたほどだ。
雪国特有の頑丈な建物内で浴びてただで済む筈がない。
室内でなんとか無事なのはカウンターに隠れていた受付嬢や男性社員ぐらいだ。
オレ達は何時また襲って来られても大丈夫なように、MP5SDを握り締め安全装置を解除して銃口を室内へと向ける。
カウンターからふらふらと立ち上がった受付嬢達が短い悲鳴を口にするが、配慮してやるほどオレは優しくない。
たった今、襲われたのだから。
オレが怒鳴る前になぜかメイヤが、マジギレして声をあげる。
「アナタ達、突然襲いかかってくるとはどういう了見ですか! しかもこちらにおわす方をどなたと心得ているのです!? 畏れ多くもこの全大陸! いえ、天上世界にすらその名を轟かせる魔術道具開発の大天才神! リュート・ガンスミス様ですわよ! 本来ならアナタ方のような一般庶民さん達がお声、お姿、ご尊顔をこんな間近で拝見出来るなんてありえない奇跡だというのに……ッッッッッ! えぇえぇえい! 頭が高いですわ! 頭が高いですわ! 頭が高いですわぁあ!」
オレはどこのご老公だよ……。
だが、メイヤが興奮してくれたので、横でオレは冷静さを取り戻すことが出来た。
青筋を立て怒鳴るメイヤの肩を叩き落ち着かせる。
「落ち着けメイヤ。怒ってくれてありがとうな」
オレが声をかけると一転、メイヤは鋭く吊り上がっていた瞳にハートマークを浮かべて、笑顔すら浮かべる。
「そんなお礼だなんて! わたくしとはリュート様の一番弟子にして、右腕、腹心。ただ当然のことを行っただけですわ!」
オレは微苦笑を漏らしながら改めて受付嬢達に向き直る。
「僕はハイエルフ王国、エノール、ハイエルフ族、国王から名誉士爵を授与されたリュート・ガンスミスです。軍団、PEACEMAKERの代表も務めております」
再度、首から提げているタグをかざし、自己紹介する。これにカウンターに隠れていた受付嬢達の顔色があからさまに変わる。
オレ達がただの冒険者だったら、まだ話は穏便に済んだ。
しかしこちらは妖人大陸である意味最も著名な国家、ハイエルフ族、国王から名誉士爵を授与された貴族だ。場合によっては一国家に喧嘩を売った、宣戦布告と取られることすらある。
動揺するな、というほうが無理だ。
「それでどうして僕達は彼らに襲われたんですか? どうも僕の妻である彼女が目的で襲いかかってきたようですが」
彼、彼女達の口から『白狼族云々』という言葉が出て、矛先は常にスノーに向いていた。
スノーの一族、白狼族が何かしたとでも言うのか?
オレは笑顔の中に好戦的な表情を混ぜ、受付嬢達に言葉を重ねる。
「もちろん僕達の納得できる詳しいお話をして頂けますよね?」
彼女達に選択肢など与えない。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
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明後日、6月1日、21時更新予定です!
150話についてですが、アイナのその後を書き足した最新バージョンと差し替えておきます。一部追加するだけなんですけどね(なので、既読の人は読み返すほどではないかもしれません)。
後、凄い個人的な話だけど、最近朝食を準備するのが面倒で今日は白米にふりかけで済ませたんですが、久しぶりに食べると美味いですね、ふりかけ! 大人が食べても十分満足出来るレベルですね。いやぁ~朝、一人で食べるふりかけは美味しいな! だから、別に一人でも問題ないし……強がりとかじゃないし!




