表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
与えられたのは希望ではなかった  作者: 黒羽 凪
第一章~日常からの旅立ち~
7/24

受け入れがたい現実

――死んでしまった? 一体、誰が?


「…………」


 地面に横たわっているのは、俺の幼馴染みの白川結愛。

 俺の妹のような存在であり、家族のような存在――。

 この日常での唯一の俺の味方――。


「……う……そだ……」


 その結愛が死んだ?

 あんな玩具(おもちゃ)みたいなモノで? あんなにも簡単に?

 そんな馬鹿な!


「…………」


 でも俺は身をもって知っている。あの玩具の威力を。化け物である俺が動けなくなるほどの威力を、確かにあの玩具は所有している――それを、俺は身をもって知っている。

 それを一般人が受けたらどうなる?


「――っ!?」


 ショック死する――あの男が言っていた。

 それはつまり……。


「ゆ……あ……? おぃ? 結愛? 返事をしろよ……?」

「…………」

「なぁ結愛!? おい!! 頼むから返事をしてくれ!!」

「…………」


 いくら俺が呼びかけても結愛は返事をしない。その姿はまるで、糸の切れた人形のように停止していた。


「速やかに処理したまえ」

「佐倉総隊長、了解しました。事故死で処理しておきます」

「おぃ! ちょっと待てよ!? 結愛をどうするつもりだ!?」

「構うな。行け」

「はい、佐倉総隊長」


 黒服の一人は軽々と結愛を抱きかかえると、その場を速やかに離れていく。その光景を見て、俺は両眼が熱くなるのを感じた。特に左目が燃えるように熱い。


「……結愛を返せよ」


 俺は泣いていた。涙を流したのは何年振りだろう? そんなことすら考えられないほど、俺の頭には一つの言葉で埋め尽くされていた。

――佐倉英雄……奴を殺す!! 殺す、殺す、殺す!!

 気付けば、あれほど痺れて動かなかった体で俺は立っていた。確かな殺意を持って。


「ん? ふむ。あれを受けて立つか。これは予想外だな。なぁ黒羽くん、私が憎いかね?」

「当たり前のことを聞いてんじゃねぇぇぇぇ!!」


 俺は手頃な石を手にしていた。それを佐倉の頭へ向けて放つ。それも至近距離で。

 野球で鍛えたコントロールとスピードを持った石は、佐倉の頭を砕く――ことはなかった。


「なっ……!?」


 なぜなら、一人の少年が俺の放った石を蹴り落とした(・・・・・・)のだから。

 この至近距離で石を蹴り落とす反射神経。そして何より深々と地面に突き刺さっている石からは、少年の蹴りが相当な破壊力を秘めていることが見て取れた。

 

「佐倉総隊長、ここは僕にやらせてください」

赤坂(あかさか) (つばさ)くんか」


 赤坂翼。この名前には聞き覚えがあった。二年前に脚を怪我して、選手生命を絶たれた天才サッカー少年だったはずだ。風になびくサラサラの金髪に童顔で小柄な体型、それはテレビなどで見た容姿と一致する。だけど――赤坂は確か、交通事故で死んだはずだが……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ