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日常の終わり

俺は酒が苦手だ。

特に会社での付き合い で飲む酒はうまいと思った事がない。

不味い酒をさもうまそうに飲んで見せて、酔っぱらっても回りに気を配らなければならず、吐き気がきてもさらに飲まなくてはならないなんて苦痛でしかない。

ウチの会社は四半期毎に飲み会がある。

他の会社の人からは「仲がいいんですね」なんて羨ましそうに言われるが、とんでもない。

出来れば替わって欲しいくらい。

今日だってこんなに見るからに泥酔してますと言っているような足取りで帰路についてる。

こりゃ、間違いなく明日は二日酔いだな。

わずかに残った冷静な部分で思う。

そう、今はまだ大丈夫。

視界がぐるんぐるん回っているが、何とか自宅まで行けるだろう。

そしたらもう寝ていいんだ。

嫌なことも悪いことも全て忘れて細やかな安らぎに身を委ねよう。

クソみたいな現実を唯一忘れることができる俺の至福の時間だ。

ほらあと少し、あの短いトンネルをくぐればすぐだ。


しかし、胃袋は限界にきており不意に襲ってきた吐き気に耐えきれず、思わず歩道の脇に踞ってしまう。

何度か断続的にリバースし、少し楽になり回りを見てみると何か違和感を感じた。

毎日通勤で(休日?ありませんよ?)通いなれた道がいつもと違って見える。

はて?

しかし、俺の脳は既にスリーブモードには入っており考えを放棄した。

早く寝たいので立ち上がろうとするが足に力が入らない。

こんなとこ(俺のゲロ有り)で寝たく無いため何かにしがみついて立ち上がる。

何とかたてた俺は改めてしがみついたものを見る。

それは一体の石像だった。

大きさはよくある地蔵ぐらい。

しかし見たことのない像だった。

といっても俺が知らないだけで有名な物かもしれない。

今まで興味はなかったが、この像には何か妙に惹き付けられる。

なんか色気が有る?そんな感じだ。

明日覚えてみたら調べてみよう。

覚えていたらな。


「神様、仏様、汚いものを供えてすんません。ごめんなさい。」

像の前で手を合わせ謝った。

信心深い訳じゃないがこれくらいはした方がいいだろう。

たぶん明日になったら忘れてるし。

さてじゃあ帰って寝るか。

再び歩き始める。

このトンネルを抜ければ自宅に着く。そしたら寝てまた明日から出勤だ。

そう思うと自然と足が止まってしまう。

「あー、嫌だ帰りたくねえ!!どっか違うとこにいけねぇかなぁ」

叫んで自分に活をいれなんとか足を動かす。

そしてトンネルを抜け自宅へ…………

行けませんでした。

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