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無能令嬢、追放先で上手くいったら家族と元婚約者が代れと訪ねて来る話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/07/26

「ロザリー、僕は王都に出て陛下に認められて大臣になるのが夢さ」

「ヘクター様、すごいのです」


「でも、大商会長もいいな」

「ヘクター様なら何でもなれるのです」


「騎士団長も捨てがたい」

「ヘクター様の剣術なら可能なのです」



 私の婚約者ヘクター様はとても優しいのです。角のように飛び出ている前髪を払う様は胸がキュンとなるのです。

 私はロザリー18歳、アルザック伯爵家の総領娘なのです。




「ロザリー、狩りの時も君の事を考えていたよ」

「嬉しいのです」


 今日はカフェで婚約者のヘクター様とデートなのです。


 ヘクター様は私と同じ18歳、金髪で前髪がピョンと角のように飛び出ているのがかっこよいのです。近隣で一番の色男と評判なのです。




「僕は君が無能でも気にしないさ」


 嬉しいことを言ってくれるのです。そう、私は無能です。能力が低く。残念令嬢、無能令嬢と揶揄されてきました。



 ヘクター様は学業と剣術が優秀なのです。



「ロザリー、支えてくれるかい?」

「はい!」


 顔が近いのです。手をそっと添えようと勇気を出すのです!



「おっと、これから剣術の稽古があるから。また連絡をするね」

「はい・・・」


 席を立ったのです。残念なのです。


「あ、ヘクター様、会計・・・」


 会計を忘れたのです。仕方ないのです。ヘクター様の分も払うのです。

 ヘクター様は子爵家の三男、お金はないのです。



 ヘクター様といると楽しいのです。

 しかし、あの日のデート以来連絡が取れないのです。



「お嬢様、ヘクター様からの手紙はございませんね」

「有難うなのです」


 お手紙を書いても返事がこないのです。シュンとしていたら一歳下義妹のデイジーが心配してくれたのです。



「ロザリーお義姉様、私が問いただして差し上げますわ」

「デイジー・・・」


「許せませんわ。ロザリーお義姉様を無視するなんて!私が怒って差し上げますわ!」


 頼もしい義妹なのです。お父様が再婚をされてから生まれた子なのです。



「無能でも健気に生きているお義様の魅力が分からないなんて!」

「グスン、有難うなのです」



 頼もしいのです。彼女は真っ赤なドレスと髪型を2時間かけて整えて行ったのです。





 ☆☆☆一月後。



「「「デイジー様とヘクター様、婚約おめでとう!」」」

「お似合いのカップルだぜ」

「正に美男美女よね」



 何故か、デイジーとヘクター様が婚約を結んだのです。

 アルザック家のガーデンでお披露目パーティーが開かれたのです。



「お、お義姉様、ごめんなさい。ゆ、許して!」


「ロザリー、デイジーを責めないでくれ。だけど名誉のために言わせてくれ。デイジーはこんな良い義姉を袖にするなんて許せないと怒っていたよ。

 僕、こんなに他人ひとのために一生懸命になれるがいるなんて・・感動したよ」


「グスン、お義姉様にはきっと善い人が現われますわ」



 ショックなのです。私は口をあけてアワアワすることしか出来なかったのです。



「ロザリー嬢、許してやれよ」

「そうよ。ロザリー様、赦すのも愛よ」



 赦せないのです。私の婚約は・・・・

 使用人までも赦せと言うのです。


「ロザリーお嬢様、元々身の丈にあっていなかったのです」


「「「さあ、赦しを」」」

「「「赦すのも淑女の道ですわ」」」



 結局。赦したのです。


「グスン、グスン、赦すのです」



「「「「やったー」」」

「「「おめでとう!ヘクター様、デイジー様!」」」



 皆は2人にかけより私は1人ぼっちになったのです。


 せめて、慰めて欲しいのです。


「ニャア!」


 黒猫が足下にやってきたのです。まだ、子猫なのです。

 この子は黒猫だから不吉と引き取り手がなかったのです。


 スリスリしてくるのです。


「グスン、クロちゃん。食事もってくるのです。少し待つのです」


 ナデナデしたら手を舐めてくれるのです・・・

 私は決めたのです。この子の母親になるのです!






 ☆☆☆


「ロザリーよ。この書類にサインをしろ。君のためになる」



 婚約破棄のパーティーの翌日。お父様とお義母様が部屋に来たのです。




「お父様、家の事はどうなるのですか?」

「ロザリー、それは貴女が心配する事ではないわ。サインをしなさい」

「シャアアアアーーーー」

「クロちゃん・・・」


 大人しい子なのに2人を威嚇するのです。でも、可愛いのです。


「書類を読むのです」

「いいから、無能だろう?父の言う通りにしなさい。幸せになれるぞ」


 サインをしたら、お金をくれて・・・・


「さあ、荷物をまとめて出て行きなさい。アパートメントは用意した」

「ロザリー、自立しなさい。さあ、メイド達、荷物をまとめて」


「「「はい、奥様」」」


 勝手に荷物をまとめられてお引っ越しをしたのです。グスン。


 どうやら、追放されたようです。グスン。



 小さなアパートメントにつきました。


「では、ロザリー様、私どもは業務がございますので」


 メイド達はそそくさと去りました。


 引越祝いもさせてもらえなかったので、クロちゃんとパーティーです。

 招待するお友達もいないのです。


「ミャア」

「クロちゃん。お魚でちゅよ」


 猫ちゃんと話すとき赤ちゃん言葉になるのです。


 お父様から頂いた袋を開けました。金貨が10枚ほどあります。家賃が月銀貨5枚だから、20ヶ月で底をつきます。

 クロちゃんと私の食費、クロちゃんのオモチャ代を考えたらあっと言う間に消えるのです。


 働かなければならないのです。メイドでもしようと思ったら。


 デイジーが来たのです。


「グスン、お義姉様を追い出すなんてヒドいです。私、お父様に抗議をしましたわ。でも、淑女は父に反抗できませんの」


 私に抱きついて泣きじゃくります。


 根は善い子なのです。私と違って友人も多く社交的です。



「でね。お詫びにお義姉様にとっておきの情報を持って来たの。絶対に儲かる話だわ。ここだけの話ですわ」


「本当なのですか?」


「ええ、お義姉様は無能よ。メイドをやったらアルザックの家門の名誉が落ちるわ」

「そうかもです」

「商会を立ち上げたらいいわ。私が準備しておいたから」


「有難うなのです」


 デイジーから良い儲け話を聞いたのです。



 クロちゃんは終始、後ろ足でデイジーに砂をかけるジェスチャーをしていたのです。

 ウンチをしたら砂をかける仕草なのです。


「クロちゃん。失礼なのです」

「シャアアーー」


「フフフ、お義姉様、畜生ですから気にしませんわ。それにしても縮れた黒髪と黒の毛並みがまるで姉妹のようですわ」


「本当なのですか?」


 嬉しいのです。

「ニャア?」

 抱っこしたのです。


「では、お義姉様、お膳立てはしたから、必ずやって下さいませ。全財産を投資ですわ」


「はいなのです」

 無能なのです。でも、皆助けてくれるから恵まれているのです。


「ニャア!」



 それで私はデイジーに言われた通りウォーミングパンを買ったのです。料理を温め直す調理器具です。

 フタのついている柄杓のような形の鍋なのです。今は夏です。激安状態です。


 いつも、冷めた料理を温めていたのでなじみ深いのです。


「ウォーミングパン500個下さいなのです」

「はい、どこに運びますか?」

「サウス地方に運ぶのです」

「はあ?ストーブいらずの地域だぜ!料理なんて温め直す必要はないぜ」


「やるのです!お金は払うのです」


 ロザリー商会長なのです。毅然と業者さんに依頼したのです。


「まあ、やるけどさ・・・」



 一月かけてえっちらおっちらサウス辺境伯領に運び市場で販売をしたのです。


「いらっしゃいませなのです!お料理を温める道具なのです」

「ニャア!」


 胸を張って呼びかけたのです。 だけど、皆は馬鹿にするのです。


「ここは冬も20度だぜ・・・」

「馬鹿なのか?馬鹿にしているのか?」

「ウォーミングパンくらい知っているわ!」


 ヒィなのです。売れないのです。グスン、グスン泣いていたら・・・


「待て・・・知っているけど見るのは始めてだ・・・これ、あれに使えるんじゃねえ?」


 1人の農家さんに買って頂いたのです。


「毎度ありなのです」

「ニャア」





 ☆☆☆3日後


「ウォーミングパンを売ってくれ!」

「10個だ!」

「ズルいぞ!1人個だぜ!」


「毎度ありなのです!」

「ニャア!」


 ウォーミングパン売れまくったのです。

 嬉しいのです。



 売れ終わった時・・・

 辺境伯様のお屋敷にお呼ばれしたのです。



「全くの盲点だった。ウォーミングパンは知っていたが・・・まさか、砂糖の蜜をすくうのに最適だとはな・・・」



 褒められたのです。


「これは紹介してくれたお礼だ。金貨100枚差し上げよう」

「どこでもあるのです。いらないのです」


「そう、言わずに。領内でも作ろうと思う」

「では半分のお金を領内の孤児院に寄付するのです」

「何と・・・」



 大もうけしてアルザック領に帰ったら、また、デイジーが来ました。

 何故か怒っているようでした。



「デイジー、有難うなのです。利益が出ました」

「まぐれね・・・」


「え?」

「何でもないわ。でも、柄杓だなんて、ありきたりでしょう?」

「多量生産されているから安いのです。料理用なので熱して溶けた砂糖の精製水をすくうのに安心なのです。それにフタがついているから冷めにくいのです。紹介してくれて有難うなのです」


「それよりも、良い儲け話があるわ」



 デイジーの話は信じられませんでした。


「本当なのですか?」

「ええ、本当ですわ。お義姉様、私を信じて」

「はいなのです」



 今度は魔石を買って、魔石鉱山都市アモンで売る計画です。

 全財産を投資です。


「馬車一台分の魔石を下さいなのです」

「お嬢さん。どこに運びますか?」

「アモンなのです」

「はあ?まあ、やるけどさ」



 魔石鉱山都市アモンに売りに行ったのです。





 ☆☆☆魔石鉱山都市アモン



「何故、分かった・・・」

「くれ!言い値で払うから、即決で頼む!」


 鉱山都市の支配人達に売ってくれと懇願されたのです。

 理由は・・・




「大規模なストライキが発生したのだ。最低、今月分を王都におさめなければ信用を失う。ライバル鉱山が出てくるだろう!さあ、値を言え」


 いくらで売って良いか悩んでいたら


「金貨1万枚までなら出す」


 と言って下さいましたが。


「お母様に言われたのです。人の弱みにつけ込んではいけないと、だから適正価格で良いのです。その代わり労働者の方々と話し合って下さいなのです」

「ニャア」


「「「分かった!」」」

「グスン、慈愛の令嬢だ」


 褒められたのです。

 おだてられて・・・


「是非、話会いの場に出てくれ!」

「はいなのです」

「ニャア」


 クロちゃんと一緒に争議の場に出たのです。

「はあ?商会はこんな娘っ子を寄越したのか?」

「失せろ!娘!」

「シャアアアアーーーー」


 怒られたので思わず泣いてしまったのです。クロちゃんに慰められたのです。


「グスン、グスン」

「ウニャ」


「わり、言い過ぎたぜ」

「泣くな。おい、ハンナ、慰めてやれってくれ」

「あいよ」


 それから一月かけて話会いをして・・・

 私は労働者の要求を支配人達に伝え。

 支配人達は妥協点を提示して。また、労働者も妥協点を出して。


 何とか合意して。

 労働者たちのお給金が少しあがって、託児所が出来て宿舎が新しくなったのです。


 鉱山のオーナーに褒められたのです。


「ロザリー嬢、オスカーだ」

「ロザリーなのです」

「我が商会に来ないか?全く教えられた。時には理よりも情が大事だとな」

「ロザリーは商会長なので無理なのです」



 交渉役としての報酬で金貨100枚を頂いたのです。


「その半分は託児所の運営費に充ててほしいのです。もらいすぎなのです」

「分かった。そうさせて頂こう。立派なご令嬢だ」


 私は何もしていないのです。


 褒められたのです。嬉しいのです。

 アルザック領のアパートに戻ったら、デイジーとお父様、お義母様達が来ました。



「ロザリー、これにサインをしろ」

「何ですか・・・?」


 ウォーミングパンと魔石の販売事業をアルザック家に譲り渡せということのようです。


「そもそもロザリーに商売は無理だ」

「ええ、お義姉様は無能ですもの。後は私達に任せなさい」


「でも、折角、縁が出来たのです」


「「「良いから!」」」

「その代わりに、ロザリーに婚約者を用意しよう」

「え、良いのです・・・」



 商会を取られ。領内の武器職人が婚約者になりました。

 結婚まで手伝う事になりました。


「初めまして、ロザリーなのです」

「ニャア」


「アルだ。アルと呼べ」

 無言なのです。髪はボサボサで、22歳と聞いているのです。ボサ髪で汚れた金髪、顔が見えないのです。


 通いで手伝うのです。

 いつも、彼は売れない兜を作っているのです。

 兜ばかりなのです。



「あの、お手伝いをするのです」

「・・・・」


 無言なのです。辛いのです。


 アル様の作っているのは変な形の兜なのです。


「この兜は絶対に頭を守れるのだ・・・・」


 でも、売れないのです。通常の兜は銀貨4枚なのに、銀貨10枚なのです。


「ロザリーよ。突然、婚約を結べと領主命令で来た。嫌ならどっかにいけ」

「いえ、支えるのです!」



 全く、売れないのです。私とクロちゃんで販売しますが、冒険者ギルドでも相手にされません。


「たけー。倍以上じゃないか?」

「これ、飾りがついてないな」

「キャハハハハ、まるで石炭バケツだ」


 兜は帽子のように全面に小さなツバがあり。後頭部を保護するようにカバーがついています。頭頂部には小さな空気穴がついていて、耳は辛うじて隠れるくらいです。

 色は茶色タイプと緑タイプがあり目立たないような設計です。


「とても頑丈なのです。銀貨10枚なのです。お得なのです!」

「ニャア!」


 誰も買ってくれないのです。デイジーが様子を見に来ました。


「お義姉様が被って実演してみたら如何ですか?」


 デイジーに提案されたのです。

 頭が良いのです。


「頑丈、頑丈と言っているだけでは示しが付きませんわ」

「有難うなのです」


 被ってみたのです。私には少し重いのです。


「うわ、みっともねえ」

「兜は、羽根飾りをつけなきゃ」

「やっぱ、スパイクだな。ギザギザがないと」



 笑われながらヨロヨロ歩いていると。


 ドンと誰かに押され。車道に転がってしまいました。


「あ、危ない!」


 ちょうど、車輪が私の頭を踏みました。私の頭の上を通ったのです。死ぬのです。18歳で死ぬのです。



「おい、大丈夫か!」

「死んでいるだろう・・・」

「脳みそグチャだ・・・」


「おい、起き上がったぞ!」

「あの兜、変形もしていないぞ!」

「どこで売っているのだ!」


 無事だったのです。さすがアル様の作った兜なのです。

 それから大評判になって。

 銀貨10枚の兜は飛ぶように売れ完売、注文待ちになったのです。


 アル様には怒られたのです。


「君って奴は・・・誰が人体実験をしろと言ったか!」

「申訳ないのです」

「ニャア・・・」



「付いてきたまえ・・・」

「はいなのです」


 何故か、立派な馬車が来て・・・立派な老紳士が降りて来ました。


「これは、これはアルバート殿下、研究の成果が出たと評判ですが・・お隣の方は?」

「婚約者だ」

「ロザリーとクロちゃんなのです」

「ロザリー様とクロ殿にご挨拶申し上げます、私は王宮執事セバンと申します」


 クロちゃんにも挨拶して優しい人なのです。


 馬車は王都に着き。それから王宮に連れて行かれました。



「エステメイドを用意させる。ドレスも注文だ」

「はいなのです」


 王宮のメイド達にお世話されました。湯浴みマッサージ、お化粧を施されました。


「まあ、素材は素晴らしいわ・・・」

「今までお化粧は?」

「お義母様から禁止されたのです」


「髪の整えはメイドがしたのですか?」

「自分でやったのです」


「髪のケアは如何されたのですか?」

「はい、壊れたクシが一つだけなのです」


「鏡は?」

「使うと怒られたのです」



 3つ編みを解かれ。肩までおろした髪型にされたのです。


「まあ、何てお世話のしがいのあるお嬢様かしら」

「素晴らしいですわ。殿下とご対面して下さい」

「鏡をご覧下さい。クロ殿もグルーミングさせて頂きましたわ」


「ヒィ、美人なのです!」

 エステはすごいのです。 気に入ったのです。クロちゃんも艶々なのです。


「ニャア」



 いつの間にかアル様は・・・王子の格好をしていました。


「すまない、謀っていた。本当は第三王子アルバートだ。市井で防具の研究をしていたのだ・・君のおかげで実績を作れたよ」


 アル様も髪を整えたらイケメンさんなのです。私の顔はポッと赤くなりました。



 それから陛下と王妃殿下、王太子、王太子妃、いろいろな方に紹介されました。


「ロザリー嬢よ。アルバートは偏屈な研究者だが。よろしく頼むぞ」

「フフフフ、可愛らしいお嬢様ね」

「辺境伯殿がべた褒めだったわ」

「オスカー商会長も見所がありまくりだってさ。王族へようこそ!」



「ロ、ロザリーでございます。ふつつか者ですがよろしくなのです!」



 アルバート様は軍事畑を進むのです。

 生来の優しさ故に鎧や防具の開発に進みたかったのです。

 実績を作れと陛下からの命令だったのです。


 銀貨10枚の兜が爆売れでアルバート様は確固たる地位を築いたのです。


 でも、心残りがあるのです。デイジーの助言なのです。お茶会で正直に言ったのです。



「全てデイジーの助言なのです。あの事故は偶然なのです」

「それでもだ。君が私のために動いてくれたのが嬉しい」



 顔が近いのです。

「ヒィ」


 手を握られたのです。これはキスか?と思ったのです。

 ちょうど良いときに報せが来ました。



「殿下・・・来客です」

「後にしろ」

「それが・・・アルザック伯爵家が婚約者を間違えたと主張しています」


「何だって!」



 2人で面会に行ったのです。

 お父様とお義母様、デイジーとヘクター様がいたのです。


 お父様とお義母様はヨレヨレの服を来ていたのです。アイロンをかける使用人はいないみたいです・・・


 ヘクター様はあの前髪はなく、前歯が一本欠けていました。

「グスン、グスン」と泣いています。


 デイジーだけが綺麗なドレスです。



「アルバート殿下、婚約者をとり違いました。デイジーです。どうか、お納め下さい」

「殿下、デイジー・アルザックですわ」


 デイジーはニッコリ笑ってカーテシーをします。


 不安なのです。殿下がどう答えるかです。



「ほお、私は王族だ。役に立つ妻を欲している。デイジーよ。私の役に立つか?ロザリーは身を投げ出して私の研究の成果を証明してくれたぞ」



 すると、デイジーの顔はパアと明るくなりました。



「殿下の兜が世に出るきっかけは、ロザリーお義姉様ではなく私ですわ。

 私がお義姉様に兜を被るように命令をだして、馬車が来るタイミングで押したのです。

 謂わば、私のおかげですわ」



 自信たっぷりに言うのです。


 アルバート殿下は顔を下げました。

 何て答えるか心配です。



「殺人未遂だ・・・これ、騎士達!こやつを逮捕せよ」

「「「畏まりました」」」


 騎士が入って来ました。

 デイジーを連行します。


「殿下、目を覚まして下さい。ロザリーは無能ですわ!私は役に立ちますわ!」


 叫びながらも連行されました。


「王族の婚約者に対する殺人未遂、死刑だな・・・」


「ヒィ、それはおかしいわ。無能のロザリーですわ!私の方が価値があります!」


「・・・それ以上言うと今叩き斬切る!」



 切ないのです。信じていた義妹が私を殺そうとしていたなんて。


「グスン」


 アルバート殿下がそっと肩に手を回して下さいました。


 すると、ヘクター様が私に話しかけました。



「王女殿下、ぼ、僕をお側において下さい!デイジーとは婚約を解消しております。護衛騎士にでもして下さい!」


 私と気がついていないのです。


「ロザリーなのです・・・」


「ヒィ、その声は・・・まさか」

「何故だ。ロザリー」

「そんな馬鹿な・・」



 それから取り調べで分かって来ました。

 私が商会を譲った後、伯爵家はサウス領にウォーミングパンを販売したが、すでに自領で生産をし、供給過剰になっていたこと。


 アモンに魔石を売りに行ったがストライキが解決したので鼻で笑われたこと。

 立て続けに商売で失敗し破産間際な状態だったのです。


 私がアルバート殿下の婚約者だと公式に発表されて、デイジーと取り替えようとしたこと。

 私の無能はでっち上げだったこと。いつも無能無能と言い聞かせて洗脳をしようとしたこと。

 それは虐待であると判定されました。父と義母は牢屋です。


 とても、嫌な話なのです。ヘクター様は外部の人間なので無罪です。でも、子爵家から勘当されました。


「ロザリー、僕はどうしたら良い・・・」


 思い出したのです。ヘクター様は大商会長や、騎士団長になりたがっていたのです。


「オスカーさんと辺境伯様に紹介状を書くのです。一番下からやり直すのです」

「それは、嫌だよ。僕の実力は君が知っているだろう。幹部からだよ」


「無理なのです」


 ヘクターはアルザック領周辺のイケメンで優秀だったのです。王都では並なのです。貴公子はニシンの群れのごとくいるのです。

 既にヘクターは王宮管理試験に落ちて騎士団入団試験でも前歯を折られたのです。


「もう、いいよ!」


 その後、ヘクターは男娼になったと聞いたのを最後に消息不明なのです。

 

 アルザック伯爵家は破産して領地は私の化粧料になったのです。

 次代は女の子か、第二子に領地引き継ぎが決まったのです。


 虐待に加担した使用人達は解雇です。紹介状もないです。


 私は虐待されているとは気がつかなかったのです。


 


 全てが決まったら涙が出てきたのです。世界が反転したのです。



「信じられないのです。デイジーが私に殺意を抱いていたなんて・・」

「ニャア!」

 グルーミングされて艶々になったクロちゃんが膝の上に乗って慰めてくれます。



「ロザリー・・・」

「はいなのです」


 殿下が手を取ってくれました。

 慰めてくれるのはクロちゃんだけから殿下も増えたのです。


「少しずつ。無能と言われ続けた呪縛を解いていこう・・・そして人生を共に歩もう。私は不器用だから気持は分かる・・・」


「はいなのです」


 少しずつ殿下と一緒に前へ進んでいくのです。




最後までお読み頂き有難うございました。

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