王宮サバイバル 〜 虐げられた王女の場合 〜
「……どうしてこれが私の目のつくところにいるの?」
王妃は静かな声で呟いた。
「申し訳ございません」
侍女はその場で平伏し、私の頭を無理矢理掴んで下げさせる。
「目障りだわ、見えないところにやってちょうだい」
そう告げると、王妃はその場を後にした。それを見届けるやいなや、私付きの侍女は私を無理矢理立たせ、自室へと押し込む。
「あんたのせいで、私まで怒られたじゃない!!しっかり反省するのね!!」
そう言い残すと音を立ててドアを閉めて出て行った。
私は閉められたドアを見てそっとため息をつく。
私の名前はスフィア。竜王が治める国の正妃の娘で、第一王位継承者である。先ほど私にキツイ言葉を浴びせた王妃は私の実の母。なぜ実の母にここまで虐げられているかというと……。
トン トン
壁にかかったタペストリーの裏から音が聞こえる。
「……はい」
そこから豪華な衣装をまとった2人が現れた。
「スフィアちゃん大丈夫?」
王妃である母は先ほどとはうってかわって私を心配する言葉を投げかける。
「うむ。なかなか迫真の演技だったぞ」
その横で水晶球で一部始終を見届けていた竜王、父が笑顔で母に囁く。
そんな2人の姿を見て、やってらんねーと思う私は悪くないと思う。
「ねね!!」
母の腕には幼い弟が抱かれており、そのまま弟を受け取ると頬に顔を寄せる。
ぷにぷに。
は――癒される。
「……いつまでこの茶番は続けるんですか?」
「もちろん膿を出し切るまでだ、お前を虐げるヤツをあぶり出し、その首をすげ替えねばな」
そう言って父はニヤリと悪い笑みを浮かべた。
実は私たちの家族仲は悪くない。
人族の母と竜族の父の結婚は大反対されたが、父が周りに有無を言わさず結婚した。今も妃は母一人だけ。だが、人族の母のことを表面では敬うふりをして、陰でけなすヤツが意外と多いと知った父は考えた。
娘を人族と偽り、虐げるヤツを不敬罪で一斉に首をはねることを。
母に似た顔付きの私は、皆には竜族と知られていないからちょうど良いだろうと。
もちろん私は嫌だと反対した……のだが。
「これ、レイラン。ねねではなくこれと呼べと言っただろう」
「これ!これ!」
腕の中の弟は無邪気に声を上げる。
弟は父にそっくりだが人族の血筋が出てしまったのだ。
「可愛い弟のため頑張れよ」
ムカつく!!
でも。この可愛い弟のためなら……。
「ねねが、王宮の掃除をしたげるからね」
王宮サバイバル。
虐げられた王女を何としてでも演じてみせます。




