表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/12

刺されて転移

あれからというもの、

俺は毎日ドキドキしていた。

いつ戻るのか?

どんなタイミングで戻るのか?

そんな事ばかり考えていた。


しかし、そのタイミングは一向に現れない。


仕方がないので、しばらく遊んで暮らすことにした。


街の食堂を食べ歩いたり、酒場で吟遊詩人の歌を聴いたりもした。


異世界なんて、行く奴なんか少ないだろうし、どこぞの作家にこの話を持ち込むのもいいだろう。

俺はそう考えた。

異世界に行った声優の話を作品化した作家がいるとかいないとか。

そういう話を小耳にはさんだことがある。


あちこちで遊んでいると、娼館の話をよく耳にした。どこそこの誰がカワイイとか、誰が良い女だとか、そういう話だ。


別に利用はしなくても、見に行くとか、そこの従業員に話を聞くとかもいいかもしれない。


俺はあくまで、異世界文化調査の目的でその地域の歓楽街にむかった。


飲み屋、飲み屋に卸す酒屋、飲み屋の女性にプレゼントする客目的の花屋、飲食店、娼館、アクセサリーや服カバンを売る店、質屋など、その店の種類は日本の歓楽街と、あまり変わりはなかった。


歓楽街の入り口付近にリュートを弾く少年がいた。

技術もあり、歌も上手いが、みすぼらしい格好をしている。

リュートの弦も何本か切れている。

このままだと、彼は消えていくのだろう。


いくつか現代日本では見かけない店もあった。

一つは仮面をつけて入る大人の社交場があったことだ。


顔を隠す事で身分を超えた出会いができる。そういう店だった。


外から遠目に見たところ、なかなか盛況だった。


何をするかは……。

ご想像に任せよう。


あとは媚薬売り、精力剤の屋台がやたら多かった。


屋台には蛇やヤモリ、タツノオトシゴなどが積まれていた。


しばらく観察してると、なんども、店の前をウロチョロしながら、チラ見してから買う客が結構多かった。


なにもしてないふりをしながら、媚薬や精力剤を買うのは、人類あるあるなのかもしれない。


吟遊詩人が歌う店もあった。

酒はあって3 種類くらい。

フードはナッツくらいしかない。

ただ黙って歌を聴き、酒を飲む。

そういう店だった。


そういえば、楽器店があったのは意外だった。

興味がわいて店主に、

「なんでこんなところで楽器店なんかしてるんだ。町中のほうが売れるだろ」

と聞いてみた。

すると明らかに警戒されている。

「あっ。俺は同業者じゃないぞ。

歌姫のマネージャーだ」

そういうと

「それはそれは」

と態度が変わった。

歌姫のマネージャーというと、楽器に間接的に関わる。

下手に変な顔しないほうがいい。

そういう判断だろう。

「この辺りは吟遊詩人の店とかありますから、その修理とか、消耗品とか売れますからね」

と店主。

「あとは吟遊詩人の店に行った酔客などが自分もやってみると買うか……。」

俺がそういうと、

「旦那、はじめからご存じだったんでしょ」

と店主。

「まぁ想像だけどな。それよりここの店にはもっと高級な物は、ないのか?」

俺は聞いた。

「ここらは少し治安がよろしくないので、そんなもの置けませんよ」


「仕入れはできるのか?」

と俺。


「もちろんです」


「なら、カタログ……。

商品の紹介する絵みたいな物を置けば良い。

そしてお店には置いて無いのですが、とお金を持ってそうな客に見せると良い。

注文入るかもしれないぞ」


「それは良いアイデア。さっそくやりましょう。

なにかお礼をいたしましょう」

と言うので、俺はじゃあリュートの弦をくれと言うと

「どうぞ」

と羊の腸でできたガットを10本くれた。


俺は歓楽街入り口付近の少年に会いに行った。

ガットを渡し、これで張り直せと言った。

「こんな高価なものを……。」

「いいんだ。貰いものだし、俺は楽器弾かないしな。

それより聴かせてくれ」

俺はそう言った。


少年はガットを張り替え、曲を弾き歌い出した。

良い歌声だった。

気がつくと、大勢の観客が少年を囲んでいた。

一曲終わった後、拍手の嵐が起こった。一人の身分の高そうな男が近づいてきた。

「あなたはこの少年のマネージャーか?」

俺は少年の顔を見る。

すがるような目をしていた。

「そんなようなものだ」

俺は言った。

「彼を当家の歌姫の専属奏者にしたい。住まい付きで月30Gだそう」

男は言ってきた。

俺は少年に耳打ちした。

「条件はこれで良いか」

と、

少年は

「十分すぎます」

と言った。

俺は

「わかった。それでいい。ただな。衣装がこれしかないんだ。揃えてやってくれるか?」

そう尋ねた。

「もちろん。うちの格式に合う服を用意する」

そう言った。

善は急げという事で、男と俺と少年は男の屋敷にむかった。

男は中級貴族だった。

少年の安全を確認し、俺は少年に別れを告げた。


俺は再び歓楽街にむかった。

今日は思いきって仮面の店に入ろうかなと思っていたら、だれかが、ぶつかった。

また右腹だ。

「いたっ……。」

手は真っ赤に染まる。

周りに人が集まってくる。

意識が……。

これで帰れるのか。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ