いざ隣国へ
朝起きて、ここも素敵な宿で、
簡単な朝食をもらって部屋で食べた。
部屋数が多いから、食堂は無いタイプのお宿だった。
冒険者の青年に会おうとしたら、もう出発したよと
おかみさんに言われて驚いた。
「いつかまた会おう!」と伝言を頼まれたそうだ。
今日会いたかったわ。
でも、せっかくだからもらっておこうかな?
持っているだけで、ドキドキするから。
大人になって初めての宝石?これも護ってくれそうな大切な宝物になった。
さて、行きますか。
歩いて国境を目指す。国境からは隣国のあちこちに
乗り合い馬車が出ていると、昨日親子連れのお母さんが教えてくれた。
隣国の田舎町にいる父母に会いに行くらしい。
かわいい孫に会えたら喜ぶね、きっと。
国境に着いた。
こちら側は、スルッと出られた。
隣国側の国境警備隊がいる場所に向かう。
並んで順番に向こう側へ。
身分証明書か書類を見せる所で、私も書類を見せた。
16歳の、見た目はもう少し幼いかもしれない私の書類をじっと見る。どこか?だめなの?
「キミ、これから目指す場所はどこなのかな?」
「首都のハウベリーです!」
「住む場所はどこなのかな?」
「…まだ、決まっていません。」
「そうか!キミの国の成人は16歳なんだが、うちの国では18歳なんだよ。身請人がハッキリしていないと難しいんだよ?」
知らなかった。そこまで調べていなかった自分が情けない。18歳までさっきの町で?
いやいや、ないない。
どうしよう?どうしたら?
あ!
「あの~これ?わかり…ます…か?」
カバンから、大事にしまったおいたブローチを取り出す。国境で見せろって言われたよね?
手のひらに乗せて警備隊に見せた。
「これは!
もしかして、少し前に倒れた病人を助けたことが?」
「はい。背の高い紳士が目の前で倒れられたので
少し手助けしたら、こちらをもらったのです。」
「その時に、その男性にあげたものはわかるかな?」
「シロップの入ったキャンディーです。」
「待っていたんだ!キミなんだね。
その紳士から聞いているよ。わが国に入国するだろうから手厚く対応してくれって。命が危なかったところを助けてもらったと。国の騎士として、感謝申し上げる。」
頭を下げられてビックリ。
両手を振りながら、挙動不審になる私。
いえいえいえ、そんなことと。
それからは、スムーズに建物を通りすぎたところまで案内されて、綺麗な封筒を渡された。
紳士の字だろうか?とても達筆な字。
『あの時はありがとう。あなたのおかげで親友とも無事に会えて交流出来た。実はその親友は病におかされていて、余命が短いのだと聞いた。
今回会えなければ、きっと後悔してもしきれなかっただろう。私の命も散っていたかもしれない。ありがとう。
お礼と言ってはなんだが、もしよければわが家でしばらく過ごし、この先の生活を整えてみたらどうかな?
あなたの過ごした宿の奥さんに、あなたのことを聞いたので提案してみたよ。
訪問をお待ちしている。 ヤコブ デインジャー』
お言葉に甘えていいのだろうか?
でも、ここを通過出来たのはデインジャーさんのおかげ。このブローチも返さなくちゃね。
孤児院を出てからは、流されるままに行動して
良いことばかりで嬉しくてしかたない。
これは、乗るべきか?
よし、乗ろう!
警備隊の人が、頼まれていたのか馬車を呼んでいた。
貸し切りだ。警備隊の人も乗り込んだ?
護衛?何それ?私、何かした?
隣国でも、ハラハラドキドキな日々がはじまる~?
乗り合い馬車で出会ったみなさんが、無事に隣国で
過ごしますように!