隣町にて
おかしな騎士さまたちと(魚焦がしただけ)
別れたあと、隣町へと向かう。
私の誕生日は五の月なので、新緑が眩しくてキラキラ輝き、風は爽やかに頬を撫でる。
軽くなったカバンからは、心ときめかすオーラが
滲み出てる気さえする。アレか?ハンカチ様と呼んでみようか?
そんなことを考えながら歩いていたら隣町へ着いた。
この町は小さくて教会がないから、私が居た町の教会まで祈りにくる人がいる。
だからか?町の雰囲気も似ていて活気があるけれど、穏やかだ。
ここは、町こそ小さいが大きな商会の支店があるので
目抜き通りは賑やかだ。
大きな製糸工場を持つ商会で、支店は生地や糸も多数に
置いてある。アンテナショップと言うのか?
旅人のお土産向けの刺繍をしたハンカチや、小物も置いてある。
私は、誕生日から二日目ではあるものの、自分への贈り物を買うのもいいなとお店に入った。
愛想のいい店員さんにすすめられ、手頃な値段の刺繍の入った靴下と同じ刺繍のハンカチを手に取った。
大切に使おう。
「バン!」
いきなりドアが開き、血相を変えた少女が飛び込んできた。後ろからピシッとしたスーツを着た男性が音も立てずに入ってきた。
「ハンカチ…ハンカチが欲しいの!刺繍をしなくてはいけないから、まっさらなハンカチはない?生地は最上級のものね!どうしても手に入れないと…。間に合わない…。」
最後は、つぶやくように聞こえてきた。
アンテナショップである、この店の品揃えに期待したのか何処かのお嬢様に見える。
ちょっと遠い領地のお嬢様で、馬車を飛ばして来たらしい。
「王妃様からの要望で、刺繍入りのハンカチを提出しないといけないの。あらたに王妃様のお茶会のメンバーに選ばれるには、素敵な刺繍をしないといけないの。」
産地に近いここにくれば、素敵な生地があると思ってここに来たのか。
朗らかな店員さんは、顔の表情も変えずに
奥から白いハンカチを数枚持ってきた。
私は、素敵なものが見られるかもとその場にそっと居た。
三枚とも、どれにするか決め手がないのか?
どれも高級生地なのだろうけど、お嬢様は選ばない。
「これは光沢がいまひとつだし、これは軽すぎるわ。これは裏地が気に入らないわ。」
どうやら、ライバルのハンカチを見たのか
勝ち残るに値しないと思っているらしい。
光沢なら、私のもらったハンカチの方が
柔らかさも、雰囲気も…と思い出しながらカバンから取り出して…たところ…
「あなた!それよそれ!そのハンカチは?」
と、手からパッと取り上げられた。
広げて、裏と表をじっくり見てから言った。
「こんな上等なハンカチを、あなたみたいな平民が?
どこで?どうやって?なぜ持っているの?」
ここに来るまでの間に、親切にしたら立派な騎士さまがくださったと言うと
譲って欲しいのと言われた。
「どうぞ!」と渡した。
半泣きになりながら、「ありがとう!」と言葉を残して
お嬢様は出ていった。
ぎょ!音も立てずに目の前に居た男性が
「こちらをどうぞ!あとお買い物の代金もこちらで。」
お金を置いて、男性は去っていった。
三枚の美しいハンカチと、私の買おうとしたものが
手に入った。騎士さまにもらったハンカチに刺繍をしようと思っていたけれど、別のハンカチに変わってしまったけれど、
三枚に増えてしまった。刺繍糸をそこで買った。
宿での時間をつぶすのにもいいかもしれなくて。
それにしても、嵐のようなお嬢様だったな。
いつもは、ツンとおすまししてるのかな?
ドタドタバタバタしてたけど、じっとしてる姿は
ひれ伏すような美しい令嬢なのかもしれない。
後ろの男性は…動いてたかな?
不思議な行動の人だったな。綺麗でもあった。
美しいものに憧れて、隣国を目指すアミルにとっては
行く先々でハプニングがありはするけれど、
美しいものが手に入りカバンの中の幸せが増えて嬉しい。
どうかあのお嬢様の刺繍がうまく出来て、王妃様のお茶会メンバーに入れますように!
いや、あの生地…他見てわかったけどタダモノではない?