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森の中の出会い

いつも、日が昇る前に目が覚めてしまう。

目が覚めて、天井が目に入るけどここは?

そうだ!もう孤児院ではない。

旅立ちを迎えた昨日、なんやかんやあってちょっと疲れて宿のベッドで爆睡したみたい。


顔を洗いに行き、宿泊に含まれる朝食を食べた。

温かいゴロゴロ野菜のスープは、全身に染み渡り気力が湧いてきた。今日もいいお天気に感謝。

おひさまにも、手を合わせて祈った。


身支度を整えて、宿を出て隣町への街道を歩く。

この国は平和なので、荷馬車がたくさん行き交ってるし

道も平坦で、時々警らの馬に乗った人たちが見回っているからひとり旅の人も多い。


私も成人とは言え、見た目は弱っちい少女。

人さらいとか、強奪は怖いけどそんな事件はあまり耳にしなかったから勇気出して夢を叶えるために出発した。

一応、孤児院のシスターからは身を守る術を習った。

唐辛子のパウダーをこっそり忍ばしているのは秘密。

いざとなったら、目潰しだ!

出来るかどうかはわからないけど。自分ガンバ!


街道を歩くのに、チーズが重い。

片手を広げたくらいの大きさのチーズをくれた。

ナイフもあるし、お腹すいたらいつでも食べられるのはありがたい。

隣町まで、お店がないから水の入った水筒を宿で買った。チーズばかり食べてると喉が乾くからグッジョブだ。


お天気が良すぎて、日影で休憩。

街道の両側が、丁度森になっていた。深く入り込むと良くないから、ちょっとだけ入る。

風が心地よく吹いてきた。汗ばむ身体が癒される。

時間的には、お昼頃?そう言えばお腹もすいてきた。

チーズだけでは物足りないからと、昨日バゲットを食堂で多めに分けてもらってて良かった。

晩ごはんで余らせたバゲットが、お昼に丁度いい。

ハムがあればもっといいけれど、街道に店はない。

朝食に付いていたゆで玉子が殻付きだったので、食べずに持ってきた。

それもサンドしたら、めちゃ美味になった。良かった!


あれ?どこからか賑やかな声が聞こえてきた。

それも、大勢でワーワー言っている?

森の奥?助けを求めているのか?いや楽しく騒いでいる感じ?

食べ終えた私は、そろりと奥を目指してみた。

怖いもの見たさとも言う。


広い空間が、目の先にあってそこには十数人くらいの兵隊さん?騎士?がいた。訓練?実践?

同じ制服を着ているが、みんな汚れているように見える。賑やかに笑い合って火を囲んでいるようだ。


はっ!気付かれたの?

一斉にこちらを見た。精鋭部隊ならしかたないか。

気配を悟られたのか。孤児院の図書館では戦記小説や

軍記、物語を読んでいたのでちょっと怖い。

一人が近寄って来て、後退りをしたら


「お嬢さん、こんなところでひとりかい?

僕たちは、森の中で訓練をしていた騎士ではあるんだが

お昼ごはんを食べようとしたらトラブルが起きてね、

大騒ぎしたところだったんだよ。怖がらせてごめんね。

でも、こんな奥までひとりで来てはいけないよ?

人を襲う動物もいるからね!」


外を歩く、ましてや森の中まで入り込むという危機感が無かったことを改めて思う。

ひとり旅に浮かれてしまった。人を襲う動物に遭遇する怖さを知らなかった。


「ごめんなさい」と俯くしかなかった。


一瞬シーンとした場だったが、もうひとり大きな身体の騎士さまがやって来て

「お嬢さんも怖がっている。理解したようだし、そのくらいにしておけ!」

この中で、一番偉い人なのかな?


騎士さまたちは、サバイバル訓練中らしく

この森で三日間、何も持たずに過ごしていたらしい。

今日が最終日で、近くの川で大量の魚を獲り

真ん中の火で炙って、お昼ごはんだったそうなのだが、

(動物捕食は禁止)

焼き担当者が目を離したすきに、魚が真っ黒な炭と化したらしい。


毎日魚と、野草炒めで凌いでいたみたいだが

これが最後と、気を抜いたのか?飽きた魚がダメになり

嬉しいやら悲しいやら?で大騒ぎしていたらしい。


悲しい目をした、しょんぼり男子がいっぱいで

急に静かになったのも、お腹が空いているからなのかもしれない。

私は、これも何かの縁だと感じカバンからチーズを取り出した。

パンはないけど、炙ると美味しいと思う。


最初に声をかけてくれた騎士さまに渡す。

このまま重たいのもなんなんで、ここで手放そう。

国を、町を守る騎士さまが食べてくれたらこの上ない幸せ。


遠慮されたけど、もらってくれた。

人数分にカットして、それぞれに木で作った串を刺し

焚き火で炙る。

持っていた唐辛子パウダーを振りかけてあげると

味変味変~と喜んでくれた!

何でそんなものを持っているかは…察したの…かな?


私にも、炙ったチーズを渡された。

唐辛子はかけないけど、香ばしくて中はとろり。

腹持ちがよさそうで、良かった!


騎士さまが後片づけをしている間に、

最初に声をかけてくれた人とその他数名が街道まで送ってくれた。

妹が故郷に居て私と同じくらいだからと優しく付き添ってくれた。

別れ際に、真っ白なハンカチをくれた。

体格のよい騎士さまは、やはり隊長さんでその方が私にとくださったそうだ。

あれ程制服が汚れていたのに、このハンカチは汚れひとつ無い。絹のハンカチなのか?高級すぎてドキドキした。


チーズは無くなったけど、心は満タン。

美しいハンカチは、見るだけでときめいてしまう。

心もカバンも軽々と、街道を隣町まで歩いて向かう。


いつかまた、この国のあの騎士さまたちと会えるかな?







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