月日が流れた
そして、今の時間軸に戻る。
私、アミルはこれまでの話を聞いて自分が王女様、騎士団長様の姪ではないかと確信した。
顔もお父様に似ているらしい。
お父様のお兄様、公爵様にお会いしたい。
顔でわかったのか?会わせてあげようと言われた。
確信がなかったから、今日は呼ばなかったみたい。
王宮に来てもいいと言われたが、とてもじゃないけれど私のマナーな振る舞いでは無理。
伯爵様のところに、もうしばらく置いてもらうことになった。
私の兄と弟がいた。
会いたいけれど、ちょっと怖い。
私が拐われてしまったから父が亡くなり、母もいなくなった。私が居なければみんな生きていたかもしれない。
また顔に出ていたのか?
「自分を責めてはいけないよ?アルヴィーナは被害者だから、むしろ甘えて欲しい。あ、ごめんねアミルだね。」
「叔父さま、ありがとうございます。どうしても私のせいで?と思ってしまいます。でも生きているから再び会えることの喜びを感じたいと思います。アミルは孤児の名前なので両親がつけてくれたアルヴィーナと呼ばれたいです。」
「「アルヴィーナ」」
「はい!」
いつの間にか、伯爵夫妻はいなかった。
いつからいなかったのだろうか。込み入った話になり始めたからかな?
「伯爵夫妻には、私から伝えておく。」
叔父さまがそう言ってくれた。
公爵家に訪問する日まで、マナーと態度のレッスンをして頂かなくては。
王妃様に、ベビー服の母の刺繍の端切れになった布を見せた。キラリと光るものが目尻に浮かんだのを見た。
私も両親がこの世にいないと知り悲しいけれど、
王妃様が妹を亡くした悲しみもわかる。
そう言えば、お茶会合格を目指していたあのご令嬢のことが知りたい。
王妃様に聞くと、この国の子爵令嬢で私と歳も変わらないみたい。仲良くなれるかな?なりたい。
あの時の顔を思い出すと、声を出して笑ってしまいそう。今だからわかる。貴族令嬢であの顔はないわ。
友達になって欲しい。
「あの令嬢は、ハンカチでご縁をつなげたみたいだよ?」
叔父様が言った。
面白いから友達になって、聞いてごらん?と。
私も、身分は公爵令嬢となる。
療養中で押し通していた話が、完全復帰になる。
マナー不足も、療養中で押し通せるの?
王妃様のお茶会にもお試し参加させてもらえるみたい。
早くあの令嬢に会いたいな。
公爵家に伺うのが先ね。
どうか、この不安が消える結果になりますように。
王妃様が、私が刺した白い花の刺繍があれば欲しいとおっしゃった。
伯爵家では時間があると刺していたからお恥ずかしながら、ハンカチとピローケースをプレゼントした。
生地はそんなに高級ではないけれど、さわり心地は良いと思う。
そうしたら帰り間際に、ポケットから白い布に包まれた紺色の石が付いたペンダントを出してきた。何でも出てくるそのポケットをじっくり見てみたくなった。
「これは?」
「これは、妹が昔くれたものなの。あなたに相応しいからプレゼントするわ。ハンカチとピローケースのお礼ね。
妹と同じ瞳の色なのよ?濃紺だけど少し紫に光る結晶が混ざってる、綺麗ね。」
そう言いながら首につけてくれた。
お母さんはみんなの中で生きている。
今、私の中で息づいた。こんなに家族がいたなんて。
つないでくれた人たちと、つないでくれた大切なものたち、ありがとう。
私は今、幸せです。