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私は捨てられていなかった②

アルヴィーナ(アミル)は、隣国の教会の前に置かれた。


襲撃される前、町を歩く侍女に破落戸が声をかけてきて

王宮で働く弟を死なせたくなければ、いうことを聞けと言われたのだ。

襲撃計画を知らされ、狙いは子供たち。

暗殺者に狙わさせるか、どこかで始末しろと言われた。


襲撃直後に直ぐ様逃げた。

大切な命を消されるわけにはいかない。

弟のことも心配だけれど、消えてしまえば…弟に何かあれば余計に足がつくだろう。侍女の家族だとわかるのだから。

逃げて親子のように振る舞った。国境を超える訳にはいかないので森を抜けて入った。その隣国へ入るのはゆるいのを知っていたから。


町はずれまで行き、教会の前に腕の中で眠るアルヴィーナ(アミル)を置き去りにした。

あとは、無事を祈りながらそのままその足で修道院を訪ねた。一生罪を償うために。

弟のためにも、一緒に拐われた被害者だと思われていますようにと願った。



弟を儚くした公爵は、両親と一緒に悲しんだ。

領地に仕事を送れば良かった。そうすれば家族みんなで過ごせていたし襲撃にもあわなかった。

しかし、騎士団長の話を聞くと黒幕は妻に迎えたあの王女だった。

形だけの夫婦で不満があるのは知ってはいたが、どうにもならなかった。

その歪んだ心の刃が弟を儚くし、子供たちに取り返しのつかないことをした。義妹は察しているかもしれない。

知ってしまった時の事を思うと胸が潰れそうだ。

弟の葬儀では、姪は療養が必要だと不在を悟られないように知らしめた。

早く見つけなければ。弟の忘れ形見である赤ん坊が無事に生まれてくることを祈らずにはいられない。



公爵家の領地の別邸で男の子が生まれた。

名前はメイデン。母であるアウラが


「なぜかギルベルトが夢に出てきて名前を一緒につけたのよ?直接言いに来ればいいのにね」


痩せ細った顔に、笑顔を浮かべてそう言った。

目の奥から涙が溢れて来そうになったが目に力を込めて引き込んだ。


気鬱な日々を送っていたのも悪かったのか、

弟が呼んだのか?出血も多く産後の肥立ちも悪く

数日後にアウラは儚くなった。最期にハービットと会わせる事も出来た。

アルヴィーナがいないことも夫がそばに居ないことも

理由はわかっていたのかもしれない。天の国で幸せになって欲しい。弟の隣で永遠にと願う。



王家が集めた証拠が固まって、異国の王女が裁かれることとなった。

外交問題があるので、慎重に異国と交渉を重ね病死という結果であるならばと、こちらの国の判断で処分することが決まった。厚顔無恥な王女がもたらした悲しい現実。親族たちの腹の内は煮えたぎっている。

この女が居なければ、穏やかな家族の幸せはふくらんで沢山の実をつけたはずだ。喪失感は今なお関係者の身体を蝕んでいるのだから。


王宮のとある離宮を整えた。

王妃様の協力なくしては出来ない計画。

使っていないその離宮は、かなり昔の王様が愛人を囲っていた宮らしい。惨劇があったかどうかはわからない。

壊して庭にする予定の離宮。惨劇が起ころうと闇に葬ってやろう。

そこで王女とその使用人たちをもてなすのだ。まだ私の妻だから。


弟の長女はまだみつからないが、長男と生まれたばかりの次男は公爵家の養子にした。

弟の分まで愛するし、まわりを巻き込んで幸せにすると決めた。儚くなった者たちへの想いを何倍にして注ぎ込んでも足りないだろう。憎悪の反対は愛情なのか?

まずは憎悪をなんとかしなければ。



近々取り壊す離宮で、秘密のお茶会を催すらしいと妻の前で口にした。王妃様が近しい親族たちを呼んでその宮を惜しみながら楽しく交流するお茶会だと。

給仕は麗しの男性たちを、警備は近衛騎士が勤めると話た。食い付く王女。予定どおり。

王女の使用人は、侍女が三人。護衛は連れてきていない。その侍女たちも公爵家ではアウラの敵だった。後からわかったことだが、


「私の国ではオッドアイは悪魔の印なのよ、気持ち悪い!」

と何度も何度も攻め立て、弟のいない時は、特に酷い言葉を投げつけていたらしい。


後悔はない。公開裁判と公開処分。

秘密裏だから、外からみれば非公開なのだが。


そして、決行日がやってきた。

断罪するのだ、黒幕を。幸せを奪った悪魔を消しさるために。


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