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水の上で憩う

アミルが観たかった、行きたかった場所。

国立ハルベリー美術館がそこにあった。

ひとりでは許可が出なかったので、ユリウスくんを誘ってみた。まだ10歳だから芸術には興味がなかったようだがアミルとならと一緒に行くとなった。


アミルもまた、美術館は初めてで

教会に飾ってあった寄付された絵画すら感動を覚えたのだから、美術館では静かに泣き叫ぶかもしれないと思えた。あくまでも静かに。


ユリウスの護衛が、一緒にとついてきた。

旧宮殿を利用した美術館は、たくさんの絵画で

埋め尽くされていて、迷路のように部屋があり

歴史を感じるものや、前衛的なもの何描いてるかわからないものなど、目と心と感性に刺激を受けた。


美しい風景画などは、草の香り牛の鳴き声が聴こえてくるような感じがした。

舞踏会のコントラストが効いた絵からは、音楽が、ドレスが擦れるような音が聴こえてくる気がした。


労働者の人物画からは、汗が飛び散りそうな

静物画からは、花の甘い匂いが漂ってきそうな

そんな感じがした。


戦争が終わり、慟哭する人々の絵からはなんとも言えない憤りと悲しみを感じ

傷だらけの戦士を癒し、治療を施す看護婦たちの絵からは

凛とした清らかな意思と責任を感じた。


今では平和な国ばかりだけれど、

争いの過去が、犠牲から作られたこの平和がどれだけ

大切なのか知るべきだと思えた。

ユリウスくんも、戦争の絵画に何かを得たようだ。

善も悪も学ぶべきだと思う。どう判断するかは、成長した自分が決めること。学べば学ぶ程に選択肢が増える。


ユリウスくんが、賢い大人になりますように。


ハルベリーの今の季節は、花が咲き誇り始めの季節。

水の都と呼ばれるほど、街に運河がたくさんあり水の上に憩いの場所があちこちにあった。

ランチは、水の上に建てられたカフェで。

小さな船が行きかうのが見える。

ハルベリーの運河の先は海、海鮮と呼ばれる海の幸が食べられるらしい。


足元に揺れる水面に癒されながら、ユリウスくんと

魚介のパスタランチを食べた。

海で獲れる魚介を食べる文化、水の上で憩う文化、

あちらこちらで、路上詩人が詩を唱う。

なんて素敵な日常なのだろう。


露天も出ていて、護衛さんが買ってきてくれたフルーツの飴が美味しかった。

見た目もかわいくてユリウスくんと二人はしゃいでしまった。


たくさん遊んだから、明日からは仕事に没頭しよう。

ここに来れて良かった。


お屋敷に帰ると、奥様に呼ばれた。

お茶会の招待状がそこにあり、出席する予定らしい。

毎回、ドレスコードがあり今回のテーマは

『綺麗な石』

なんだとか。『冠』『金』『羽』などなど

個性の出そうなテーマを知らされるそう。

王妃様は、珍しいものが好きで趣向を凝らしてもよし

平凡でもよしなんだそうで、貶すことはご法度。

そのルールを無視するだけで二度と参加出来なくなるらしい。

楽しみましょう!が目的らしい。


綺麗な石か…

あ!それならば。

お礼のお礼に、せひとも使って欲しい石がある。

奥様に「私にお任せください。」と伝えた。

宝飾店に行かなければ。執事さんに相談したらすぐにお屋敷に呼んでくれた。

奥様には秘密。冒険者にもらった虹色の石を金の土台に埋め込んだペンダントトップに加工してもらう。

そのペンダントをプレゼントして、お茶会へ。

価値が全くわからなかったからダメかな?

と思ったら訪れた宝飾店の店員が


「こ、こ、こ…これは魔境と呼ばれる僻地の洞窟にしかないとても貴重なものですよ!」と言った。


そんな貴重なものなの?

なのに私にくれた冒険者っていったい。

スペシャルドリンク…の価値はハンパなかったのか。

そう言えば、あのイケメン冒険者はいったいどこにいるのだろう?お金なんとかなって、無事に家に帰れていたらいいな。


魔境の虹色ストーンは、奥様用に加工してもらった。

加工代金は、伯爵家が払うと言った。

私が出すと言うと、キッパリ断られた。

実は助かった。金加工はめちゃくちゃ高価なものだったから。

金の細工が、石を映えさせててとても素敵なものになった。

伯爵様には石の価値こっそり伝えたのか?ビックリした顔で部屋まで飛んで来たけれど、気持ちですから!それに私が買ったりしたものではなくてもらいものなんで。

と言ったらさらにビックリしてた。


そんな伯爵様のビックリ顔にビックリしたわ。

家宝にするとおっしゃったので、よろしくお願いしますと返事した。


奥様に渡す日が楽しみ。

喜んでくれますように。








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