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旅立ちの日

あっちこっちの出会いと別れ。

孤児院育ちで逞しく優しい女の子が主役の物語。

実は…があるかないかは、ありよりのあり!

何処かで見たような展開かもですが、初投稿

未来が幸せに満ちるお話です。トラブルもあるけれども。

私はアミル、物心ついた時孤児院に居た。


あとは、お約束通り孤児院あるあるな生活。

ただし、院長が私腹を肥やすための

あれやこれやは無くて普通に教会シスター関係の院、

ご飯も生きていく為の範囲で食べれたし

病気になるような環境ではなかった。

それもこれも、支援してくれている貴族家があるから。


私は神様にお祈りをするのが好きで、

孤児院が併設されている教会に、誰も訪れない早朝

日が昇る頃こっそり行っていた。


それも、本日で終わりを迎えた。

16歳になったから、ここを出て行かなければならないから。


私は、どこの誰なのかわからない。

シスターに聞いたことがあるが、

歩き始めたあたりの歳に、教会の門の前に木箱に入れられ置き捨てられていたそうだ。粗末な布にくるまれて。

着衣は、上等なものだったからどこぞから誘拐でも?

と調べたりもしたが、該当の子供はみつからなかった。


孤児院では、子供たちが生活全般の家事を担い

支援してくれている貴族家の経営している商売の

下請けみたいな作業を受け持ったりもしている。

簡単な仕事だけれど、それで皆の生活が困らなくなるのでありがたいと思っている。運が良かった。


昨日16歳の誕生日を迎えた私、アミル。

朝から準備していた荷物、

とは言え肩掛け鞄を一つを持ちここを去る。

昨夜は、誕生日の会を開いてもらい全員参加で

楽しく過ごした。小さな子供たちが私のために摘み集めたくれた野いちごを、

たっぷり入れたカップケーキが山のように出てきて食べた。そうやって元気と勇気をもらってみんなここを出ていくのだ。


さて、出てからどうするかって?

これまでの出ていった子供たちのほとんどは、

町の商会やら、商店、農家、食堂などにスカウトされたり売り込みに行ったりして、落ち着く先が決まっていた。

冒険者になりたい者や、違う世界を見に他国に行く者も

居ない訳ではない。親のいない孤児という背景は一生付きまとうけれど、幸せや願いを求めるのはみんな平等なのだ。


前置きが長くなったけど、私は隣国を目指すと決めていた。この国の王都も素敵らしいが、隣国は文化と芸術が発展していて、首都ハルベリーは水と麗しの都と呼ばれているほど。

そこで、何か自分に出来る仕事をしてみたかった。

みんなが神に祈る姿も美しいが、人が造った美しいもの

自然美をこの目で見たい。


さあ行こう!私が麗しいものと出会う未来に向かって。


門を出て、すぐのところで大泣きしている男の子がいた。お父さんであろう男性が隣でしゃがんであやしているが泣き止まない。転んで擦りむいたみたいだ。

話を聞くと、昨夜から奥さんの体調が悪いから息子を連れてお祈りに向かっているとか。


私は、昨日のベリーのカップケーキを男の子の目の前に差し出した。ひとつだけ旅用にもらっておいた。


「このカップケーキはね、食べると気持ちがほっかほかになるんだよ!痛いのも飛んでくよ!」


サッと出したカップケーキを見て、泣き止んだ男の子は

差し出したそれを受け取り、ひと口食べた。

私好みの美味しいやつ、砂糖は控えめだけどね。


「おねえちゃん、おいしい!

なんかここらへんがほかほかになったよ!」


胸に片手をあてて、笑顔の男の子。

私もお父さんも嬉しい顔になった。

お父さんが、お礼にはならないけどと予備の麻紐一束と何故かペンチをくれた。男の子を連れてお祈りのあと職場に行くらしい。大工さんだった。

バイバイと手を振り別れた。

お母さん、体調良くなるといいね。


教会は、町外れにあったので歩いて町まで行こう。

そこでお昼ごはんを食べよう。

お金はある。手仕事の報奨はわずかなものだけど

ずっと貯めていたから。


町に入ると、大きな荷馬車が道の真ん中で立ち往生。

ぐるっと後ろにまわってみると、どうやら荷物をまとめていたロープが、石畳のボコボコの衝撃で切れて荷崩れをおこしたらしい。


荷主なのか?馭者と一緒に困っている様子。

町の入り口あたりなので、店はあまりない。


あ!これがある!

私は、さっきもらった麻の紐を取り出して荷主に

声をかけた。通りをふさいでいるから急がないとと

焦る荷主と馭者。

差し出した麻の紐を受け取り、手際よく荷物を纏め

再び馬車を動かした。良かった。


これからこの荷物で取引があるから約束の時間に間に合いそうだと、盛大に感謝され

娘さんたちに買ったというキャンディーボックスを

ひとつくれた。

綺麗な紙箱に、キラキラしたキャンディーが沢山入っていた。

「ありがとう!助かったよ、急いでてゆっくりお礼出来なくてごめんね!」と言い残し、手にお礼を残し馬車は見えなくなった。

取引が上手くいくといいね。


町の中心、賑やかな場所についた。

広場には、何度か孤児院のバザーやら祭りで来たことがある。近くからいいにおいがする。

いや、あちらこちらからする、丁度お昼時だ。

外で焼いた肉串を売っている食堂に入ってみた。

賑やかだし、美味しそうなものをみなが食べている。


隅っこの二人席に案内されて、日替わりランチを注文した。今日のランチは、チキンのハーブソテーらしい。

本当は、ひとりで入るのが躊躇されたけれど

独立記念日と、昨日の誕生日からのひとり祝いにお腹いっぱいのごはんを食べたかったのだ。

教会に食材を持ってくる、八百屋のジョンソンさんが


「うめぇもんを腹いっぱい食べりゃ~よぉ!おてんとさまがニッコニコになるくらい幸せになれるんだぞぉ~!」

と時々言ってたから、腹いっぱいを体験してみることが

一番最初にやりたかった。


普段から、腹五分目くらいの食事量だからか

途中でお腹いっぱいになってきたけど、頑張ってスープもあったかいパンも、メインのチキンソテーも完食した。

あのカップケーキは、男の子にあげてて良かった。

先に食べてたら、ごちそう間違いなく残してたから。


はぁ~満腹満腹~っとお金を支払いお店を出たところで

ふと見ると、路地の入り口に顔色の悪い紳士が寄りかかっていた。倒れそうになり慌てて支えようとしたものの、非力な少女の力及ばず。

とりあえず安全な表通りの軒先で腰をおろさせた。

意識はあるが冷や汗がすごい。

身なりがいいからか、誰もが遠巻きに心配そうに見てるだけで近づいてはこない。

「大丈夫ですか?何か出来ることがありますか?」


冷や汗を流しながら、か細い声で紳士が言う。

「…何か…何か甘いものを食べさせても…らい、たい」


甘いもの?甘いものでこの状態を脱っせられるのか?

甘いものを買いに行くにも、ここを離れて?

いやー無理無理。カップケーキ!あーもう無い。


あ!

肩から掛けていたカバンから箱を取り出す。

蓋を開けると、キラキラのキャンディーがある。

すぐさま、包み紙を開いて中のキャンディーをひとつ

紳士の口に持っていった。

「キャンディーがあります!なめれますか?!」


口を開ける紳士に、普通のキャンディーよりちょっと大きめのそれを入れた。

段々と、冷や汗が引いていき顔に赤みが差してきた。

どうやら、キャンディーの中に甘いシロップが入っていたようで糖分不足になると酷い症状になる病気を患う紳士の回復が早かった様子。良かった!

昔馴染みの大切な人がこの町に居ることを知り、会いに来たそうだ。一応診療所で診てもらうみたいだけど、

約束の時間までには行けそうだと安堵していた。

楽しい時間を過ごせるといいね!


別れ際に、キャンディーをひとつだけ手元に残し箱ごと渡したら、とても綺麗なブローチをくれた。

「僕は隣国から来たのだが、君が隣国に行くのなら

このブローチをあげよう!国境で役立つはずだから。」

なんと、紳士は隣国の人で私が隣国を目指していると知るとくれた。通行手形なのか?大事にしまった。


日が落ちる前には隣の町まで歩きたいので、頑張って歩く。隣国への境界の町までは、何個かの町を経て乗り合い馬車に乗っても3日はかかるから。


町外れから街道に出る場所で、牛を木につないでなだめようと必死な人がいた。

力こぶがありそうな男の人たちもいた。

急に、引き連れていた牛が大きく動き始めて、まわりの人の力を借りて何とか木につないだはいいけれど、

落ち着かなくて困っているようだ。

なぜか、牛が辛そうな気がして、ケガでもして痛みに耐えかねてなのではないか?と思った。


「通りがかりでいきなりすみません。どこかケガをしているのでは?」


なん言うとんじゃ?みたいな顔をされたけど

牛の持ち主が、牛をじっくり観察したらなんと太ももあたりに木片が刺さっていた。

ちょっと前に、行き交う荷馬車が木箱の荷を落として壊れたらしい。中身までは飛び出さなかったから

そのまま壊れた木箱を乗せて立ち去ったらしいが、破片が刺さったのだろう。

人の手では、抜けそうにない。


あ!これか!

私は、カバンからペンチを取り出した。

「良かったら使ってください!」

力こぶの人たちが押さえ、牛主がペンチで木片を抜いた。

牛の目から涙…は出てなかったけれど

痛みは引いたかな?良かった!


また刺さってはたまらないだろうと、ペンチはあげた。

重たいし。

牛は、町に売りに来たらしい。元気がある間に抜けて良かった。牛の目は見れなかったよ。

どうなるか想像するとね。複雑な気持ちを封印する。

お昼、チキンで良かった!


ペンチのお礼にと、売るために持っていたチーズをくれた。固まりだからどうやって?と固まっていたら、

力こぶのおじさんが、小さな鞘付きのナイフをくれた。

削いで食べれば良いのかな?美味しそうだ。

カバンの中が重たくなったけど、心の喜びで軽く感じた。

牛主さんたちも道中無事でありますように。


夕暮れになっていたので、ちょっと引き返して

町の外れで宿を取った。晩ごはんはチーズと宿の食堂で分けてもらったパン。

これくらいが、丁度いいな。


明日は街道を抜けて、隣の町から乗り合い馬車に乗ろう。憧れの隣国生活を胸にアミルは眠りについた。





おまけ

アミルの見た目や隠された秘密?(あるのか?)

はおいおい出てきます





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