世界4:進んだ世界
これまで見たこともない世界が広がっていた。
高い建物が立ち並び、人が多く行き交い、常に誰かの声が聞こえる。全てが初めて見るもので新鮮な気持ちだった。
気付いたときには施設に預けられることになっていて、親の顔を見ることは一度も無かった。
でも、仲間が居るだけで幾分かマシではあった。
施設は町の外れの方にあり、すぐそこが山でよく遊び場になっていた。
「ミオちゃん!早く行こう!」
親に名付けられていない場合、自分で決めることになっていたので、忘れないためにも前に付けてもらったミオを名乗ることにした。
「分かった」
「ミオちゃんはさー、いっつも暗い顔してるよね。もっと笑ったりしなよ!」
そんなことを良いながら指で無理に笑顔を作らせようとしてくるのはミホと言う名前の子で、私が施設に来て少しした頃から「名前が似てる!」とか言ってずっと構ってくる。
ちょっと面倒でもあるけど私としては嬉しい。
「こんなに可愛いのにさ、目が赤いってだけで引き取ってくれる人も見つからないって酷いよね~」
この世界では(もっとも、他の世界でも似たようなものはそれなりにあるのだが)目が赤いと家に災いをもたらすって言い伝えがある。このせいでそういう話は一切やってこない。
「でもミホと暮らせてるから」
「強がっちゃって~」
否定したくても否定出来ない。実際、家族を求めているのだから。
施設に来てから何年か経ったであろうある日、突然引き取り手が決まったと伝えられた。それもミホと一緒に。
喜びと期待を抱いた。それによって気付くことが出来なかった。事前に何も相談がないという異常事態に。
「やったね!ミオちゃん!これからも一緒に暮らせるよ!」
彼女が気付けるはずもなかった。施設以外のことをほとんど知らないのだから。私が気付いてあげるべきだったんだ。この空気に流されずに。
連れてこられた場所にはよく分からない機械があった。国主体と思わしき実験場だ。足の付きにくい丁度いい実験台で、口減らしにもなる。
引き取り手が来る見込みが無いと判断されるとこうなるらしい。確かに一定の年齢以上は一人も居なかった。
気付いた時にはもう逃げ出せなくなっていた。
「だれかたすけて!ミオちゃん!」
自分より先にミホが実験室に入れられた。
実験台にされるところを見ることしか出来ない。
初めての友達。友達を守ることが出来なかった。
せめて、長く苦しむことがないように。
「ごめんね」
苦しみを消し去った。
代わりに私が苦しくなった。