閑話1:滅びゆく世界と人々
世界1の住人目線で崩壊してゆく世界を見る。
特に残酷な描写が含まれます。閲覧の際はご注意を。
「お、おい。なんか様子が変だぞ」
あまりに異質な状態に暗殺者の一人が声を上げた。
少女の周りを黒い渦が巻いていた。
他の暗殺者が反応する間もなく黒い渦が飛び散り始める。渦は暗殺者たちを切り裂き、瞬く間に肉片に変えてしまった。
貴族の男は寝ていたが気配に気付き起きる。
人とは思えないほどの殺気を放った何かが屋敷のすぐそこに居るのだ。
それは一瞬で2階にあるはずの部屋まで迫ってきた。
「お前はあの小娘じゃないか!?」
それはなんの反応も示さずゆっくりと歩み寄ってくる。
「手取り足取り教えてやった恩を忘れたのか!」
少女の周りに黒い渦が渦巻き始める。
「ヒッ!バケモノ!こっちに来るな!」
男はその場にあるもので抵抗するが全て粉々に砕け散った。
やがて男を黒い渦が覆う。
すぐに死なないようにと言わんばかりに表面からゆっくりと男の体を切り裂いていく。
「うわぁ!痛い!やめろぉ!やめてくれぇ!」
男には悲痛な叫びを聞き少女が笑ったようにも見えた。
「誰か助けろ!助けて!痛い痛いいたいいたいいた 」
懇願する男の声は届かず、肉は抉られ、頭はかき混ぜられ、変わり果てた男の姿しか残っていなかった。
すぐに、男の屋敷がこの世界で一番最初の虚無となった。
「おい、なんだ?あれ」
門番の兵士の一人が言う。
「カラスの群れかなんかじゃなくて?」
「大きくなってねぇか?」
「なってるな」
「逃げた方がいい気がしてきた」
「俺もだ」
兵士たちは武器を投げ捨て逃げていった。
しかし逃げる速度よりも速く黒い渦は拡大し、城壁を破壊し、町を飲み込み、国を破壊していった。
「黒い何かが迫ってくる!」
逃げ惑う人々。
「神様、いや悪魔でもなんでもいい!誰か助けてくれ!」
ひたすらに祈り救いを乞う人々。
「ああ、神よ我らは何か間違いを犯したのですか」
ただ運命を受け入れる人々。
いずれの人々もなす術なく深淵へと飲み込まれる。
悲鳴が響き、そして、虚無が残る。
原初の輝きへと。