世界2:家族
今度は家族が居た。
お世辞にも良いとは言えないないが悪くない暮らしだった。
親に可愛がられ、姉と楽しく遊んだ。
この時初めて『ミオ』という名前を付けられた。
初めて幸せを感じた。何故別の世界に居るのかなんてどうでも良かった。
この暮らしが続いてほしいと願った。
―――父が兵士として戦争へ行く事になった。また争いによって安定は失われた。
それどころか国の兵士がやってきて反逆者として捕らえ、処刑しに来た。
父が濡れ衣を着せられてしまったようだった。
残された家族は泣き、悲しみ、助けを求め、なす術無く処刑された。
私は初めて他人のために泣いた。
国を憎んだ。守るべき民に刃を向ける国を。
世界を憎んだ。家族を引き裂く運命を。
「何故無実の私たちを殺す!抵抗すらままならない私たちを!」
観衆は嘲笑う。
「お前ら皆死んでしまえ!国なんて滅びてしまえ!」
初めて世界を破壊してしまいたいと強く思った。
そして、壊す力があることに気がついた。
初めて明確に自分の意思で世界を壊した。
あらゆる場所にひびが入り、崩れて消えてゆく。
人々は慌て、泣き叫び、助けを求め、なす術なく崩れ去った。
とても愉快だった。だが同時に虚しかった。
世界が崩れ去ったあと、初めて虚無を見た。
私の目にはえもいわれぬ美しい景色として映った。
自分と虚無の境は曖昧で今にも体が霧散してしまいそうだった。
虚無の中で別の世界へ繋がる道が幾重にも分岐し、果てしなく延びていた。
数多の星の中から私は1つ選びまた、新しい世界を訪れた。
これが初めて力を自分で使った時だった。