世界0:私の生まれた世界
私が生まれた場所は所謂中世の町だった。それも生きるために精一杯で争いが絶えないスラム街。物心ついた時から親は居なかった。この環境は生きる術を身に付けるという意味ではとても重要だったと思う。
一生このままだろうと思っていた。
だがそうはならなかった。
―――ある時、目が覚めると武装した人間たちが争っていた。この時は全く理解していなかったが、暮らしていた国と他国で戦争が起こっていたらしい。
このままここに居ては危険だと思い逃げ出した。
幸運にも町の外に出ることが出来た。栄養失調によって小さかった体が役に立ったのかもしれない。
町から出ようと目指す場所などありはしない。
ただ遠く、遠く、遠くへ
気付けば別の町まで来ていた。
が、入ることなど出来なかった。
金や身だしなみなどが問題であればまだ良かった。
もう体力なんて残っていなかったのだ。
元から満足に食べ物を確保できていなかったのだから、町から町へ足で移動なんて無茶だった。
生まれを憎んだ。裕福な環境に生まなかった親を。
町を憎んだ。スラムを産み出した町の人々を。
国を憎んだ。戦争を起こした国の人々を。
世界を憎んだ。私を不幸に貶めた世界の全てを。
憎悪は私を包み込んだ。
気付けば世界は壊れていた。