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異世界開拓戦記~幻影政治と叛逆の翼~  作者: ファイアス
滅ぼすべきは全ての悪にあらず

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80話:新女王の支持率調査

 イラに大釜の調達を頼まれた俺は、大釜の配置予定場所でリプサリスを待機させることにした。

 彼女に力仕事を頼んでも役に立たないのは分かっていたからだ。


 俺はイラに指定された店で大釜を買うために向かった。

 しかし、店内に入ると大釜どころか商品の一つさえ見当たらない。

 俺の視界に入ってきたのは、家主と思われる高齢の男が昼間なのにいびきをかいて寝ているだけだった。

 向かう先を間違えただろうか?


「んぁ?誰だ?」


 家主の男がちょうど目を覚ましたようだ。


「イラから大釜を買ってくるよう依頼されたのですが、こちらで合ってますか?」

「イラって女王様のことか?」

「ええ、そうです」


 今のイラは仮にもノースリアの女王だ。

 俺もグラトニアの関係者と話すとき以外は、安易に名前で呼ばずに女王様と呼ぶべきか。


「だったら、家の裏手に置いてあるから持っていってくれ」

「分かりました」


 向かう先を間違えたかと思ったが、どうやらここで正しかったようだ。

 俺はイラから大釜を買い取るためのゴールドを渡されていたが、代金を催促する様子はない。

 俺は不思議に思い、そのことを訊ねた。


「ああ、俺にはただのガラクタだったからな」


 彼は若かりし頃、とある男が大釜から様々な道具を生み出す光景を目にして、大金をはたいて売ってくれるよう頼みこんだらしい。

 だが、錬金術を使えない彼が大釜を持っていても宝の持ち腐れになったことは言うまでもない。

 その結果、あの大釜は敷地を圧迫するだけの粗大ゴミとして長年扱われてきたようだ。

 しかも、重く、大きく、頑丈で処分に困っていたらしい。


「災難だったな」


 彼の話に出てきた男は錬金術を実用レベルで使いこなしていたことが分かる。

 もしかしたら家主の男に大釜を売ったのはクサリかもしれないな。


「女王様が必要だっていうんなら、本物だったんかねぇ」

「釜自体は何の仕掛けもないでしょう」

「お前、何か知ってんのか?」


 俺は彼に錬金術について説明した。


「そういうことか、ずっとおかしいと思ってたんだ」


 俺は話を終えた後、城の一室へと大釜を運び、そこでリプサリスと合流した。

 重労働だったが、依頼はすぐに終わった。


 その後、俺たちはイラの元に戻り報告した。

 セレディアとアナドールはまだ戻っていない。

 ならば彼女らが戻ってくるまでの間に、滞在するための部屋の確保をしておくべきか。


「城内に空き部屋はあるか?」

「王室派が使っていた部屋ならたくさん空いてますよ」

「ならば二人が仕事している間に、滞在するための部屋を探してくる」

「分かりました」


 俺はイラに空き部屋の在りかを確認し、すぐさま部屋探しへと向かった。

 城の3階は王室派の連中が好きに使っていたらしく、ほぼ空いてるらしい。

 俺は一通りの空き部屋を調べ終えて戻る途中、廊下ではノースリアの兵士となったXXのメンバーが雑談をしていた。


「なぁ、お前最近まで女王様の指示をろくに聞かなかったよな?」

「お前だってそうだったろ」

「良家のお嬢さんに期待する理由はなかったからな」

「俺だってそうだよ、どうせ甘ちゃんだろってな」


 イラは自分が舐められていると悩んでいたが、戦闘力や幼い外見だけでなく良家のお嬢様だったことも影響していたようだ。

 だが、今の彼らはイラをきちんと評価しているらしい。

 何か彼女を支持するきっかけがあったのだろうか?

 気になった俺は二人の兵士から話を聞くことにした。


「あぁん?お前は誰だ?」

「女王様の客人だ」

「客人?こっちに女王様はいねぇぞ」

「それは分かってるから安心してくれ。俺はこれから滞在するための部屋選びをしていただけだ」

「ほぉん」


 俺は二人の兵士に不審者と疑われているようだ。

 だが、俺がグラトニアの代表であると明かせば後で面倒になりかねない。

 そう考えた俺は自分の素性をぼかしながら、ノースリアに来た経緯を伝えた。


「ああ、それで俺たちが女王様を支持するようになった理由が気になったのか」

「そういうことだ」

「お前は囚人貸出制度のことは知ってるか?」

「いや、初めて聞いた」


 囚人貸出制度とは、イラが10日ほど前に施行した新たな制度だ。

 この制度は誰でも金さえ支払えば、囚人を一日から借りることができるものだった。

 貸し出されている間は奴隷扱いとなるが、早期釈放に繋がるため積極的に受け入れる囚人も多い。

 さらにイラは牢屋暮らしを無料にさせたくないため、囚人から家賃や食費を徴収していた。

 彼女は囚人貸出制度による収入で、囚人の家賃と食費を賄う前提としており、滞納が続く場合は国が奴隷として強制労働を課す方針を定めていた。

 長期滞納者に与えられる選択肢は劣悪な労働環境で働くか、死ぬかの二択である。


「囚人の更生に税金を使うくらいなら、ビジネスとして利用するってことか」

「今の話だけで、よく女王様の考えを理解できたな」

「結構長いこと一緒にいたからな」

「……もしかしてお前、アキナイ家、もしくはファーシルの関係者か?」


 それだけで俺の正体をそこまで絞り込んだか。

 この男、随分察しが良いな。

 俺は素性を隠しておくつもりだったが、嘘を付いてまで隠し通す理由はない。

 俺は自らがファーシルだと伝えた上で、引き続き彼らと話をすることにした。


「言われてみればチキュウ人らしい容姿をしてるな」

「そうか」


 俺の話は心底どうでもいい。

 俺は囚人貸出制度の話題に再び切り替えると、彼らはなぜこの制度を歓迎しているかを話し始めた。


「囚人貸出制度のおかげで、俺たちは好きな囚人の女を抱き放題だからな」

「悪趣味なプレイだろうと、娼館を利用するよりずっと安上がりさ」

「なるほどな」


 囚人貸出制度は主に労働力として使われているが、若い女性は彼らのように性的目的で貸し出されることも多いようだ。

 この制度は基本的に全囚人に適用されるが、組織的犯行を行った人物は例外とされていた。

 制度を利用して脱獄の手引きをした者が、施行初日から多く現れたためだ。


 制度の話を聞き出した俺はイラの元に戻ると、セレディアが既にゾンビ化の調査報告を終えていたようだ。

 生きたままゾンビ化した人は暑さや重労働などで心身が弱っていた人に多く見られたようだ。


「アナドールさんの調査はどうでしたか?」

「王室派の追放を支持する人は8割以上だったんですが、イラさんの支持率は3割ほどでした」

「……」


 俺はこれまでほとんど知られていなかったイラが即位から30日足らずで、3割の支持を得ているならば上出来だと判断したが、イラは納得のいかない表情だ。


「そんなに落ち込む数値か?」

「支持率3割は前政権と同じです」


 王室派の貴族が好き勝手やっていた前政権と同じ支持率では、納得できないのも当然か。


「アナドールさん、不支持の理由はどうでした?」

「『誰かよくわからない』『まだ具体的に何も言えない』『首領の後継指名ではない』『子供に国政が務まるはずがない』といった政治方針と無関係な理由が全体の4割ほどでした」 


『まだ具体的に何も言えない』は不支持と判断すべきではない。

 どうやらアナドールは『どちらともいえない』にあたる判断を、全て不支持として集計してしまったようだ。

 その集計方法を考慮すると、2割ほどは中間層だと判断できる。

 さらに2割の不支持はアナドールが伝えた通り、政治方針と関係ない印象による評価だ。

 彼らは浮動層であり、これからの頑張り次第で評価を巻き返せるだろう。


「政治方針で不支持とした人は、主に貧富の格差を生み出し、国民の分断を煽ったと主張していました」


 経済至上主義者の彼女が貧富の差を生み出したと批判されるのは想定の範囲内だ。

 だが、女王に即位してから30日足らずで、そういった批判の声が上がるのはあまりに早すぎる。

 そんな短い期間でどうやって格差社会を生み出した?

 さらに分断とまで言われるのは只事ではない。


 その後もアナドールはイラを不支持とする国民の声を伝えた。

 彼女によれば、特に強い言葉でイラを非難していたのは主に高齢者だったらしい。


「老人たちから嫌われるのは当然ですね」

「お前は老人たちに何かしたのか?」

「切り捨てたんです」


 政治的に老人たちを切り捨てたというイラはどんな政策を行ったのか?

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