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異世界開拓戦記~幻影政治と叛逆の翼~  作者: ファイアス
滅ぼすべきは全ての悪にあらず

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71話:活動を休止した彼女はどこへ?

 俺はこの日、ミウルスから得た情報をもとにドルミナーに滞在していた。


「以前来たときと比べて活気がないな」

「えー、どこが?」


 俺は市場の方を指さしながら答えた。


「露天の数が減ってるし、人の往来も少ないだろ」

「アタイの印象ではあんま変わらないんだけどねぇ」

「お前は酒場の活気だけで判断してないか?」

「あ、バレた?」


 ダスティナには酒場以外にも目を向けてほしいのだが、関心がないのだから仕方ない。


「ところでファーシルさ、ティアラちゃんはどこにいるの?」

「それなんだが、ドルミナーの人々も彼女の居場所が分からないみたいだ」

「あの派手な格好で、歩いてたらすぐに気づきそうだけどね」

「ああ、それは俺も同感だ」


 フリルの目立つ衣装を身にまとったティアラは遠くから見てもかなり目立つ。

 そんな彼女が歩いていたら、誰かしら気づくはずだ。

 しかし、彼女がライブ活動を休止してから、誰もその姿を見ていないらしい。


「活動休止してからの約10日間、誰もティアラを見ていないのは妙だな」

「城に引きこもってるんじゃないの?」

「普通に考えればそうなんだが、城で大人しくしてる性格に思えないからな」


 俺はティアラが姿を見せなくなったことに違和感を抱き、それ以外に最近ドルミナーで起きた変化を聞いて回ることにした。

 すると、皆が口を揃えて言うのが朝からサキュバスクイーンと面会可能になったことだ。

 ティアラがライブのついでに要望を聴取できないことから、代わりに面会時間を増やしたようだ。


「ティアラの活動時間の代わりを、サキュバスクイーンが穴埋めしているのか……」

「普通じゃない?」

「あまりに普通過ぎて、逆に違和感があるんだよ」

「どういうこと?」

「今まで昼の間ずっと寝ていたサキュバスクイーンが、急に真面目に働いてるんだ。お前が酒を一滴も飲まなくなるようなものだろ」

「アタイが酒を飲まなくなるような問題って、脅迫されてるってこと!?」

「脅迫はないと思うが、別の問題が起きているかもしれない」

「ほっほー」


 サキュバスクイーンの隣には常にイルシオンの最上位騎士が控えており、イルシオンの機密に触れることを聞き出すことはできない。

 そのため俺は、機密に関わりそうなクサリの件は、サキュバスクイーンの娘であるティアラから聞き出すつもりでいた。

 しかし、彼女はどういうわけか今どこにいるのかすら分からない。


 俺たちはティアラの動向を探るために、城の門番らを尋ねた。


「ここ最近ティアラが城から出る姿を見ましたか?」

「いや、見ていません」

「そうですか」


 城の門番らが見ていないのであれば、城から出ていないのは間違いないだろう。

 変装して外出する可能性もゼロではないが、ライブ活動の休止は彼女が国の要請に従っただけである。

 わざわざ変装して外出する理由がない。


「サキュバスクイーンに直接ティアラのことを訊ねるか」

「護衛の最上位騎士たちはどうするの?」

「具体的な内容はぼかしながら話すしかないな」

「うわぁ、めんどくさそう」

「ほんとにな」


 これ以上、ティアラの行方を探っても情報を得られそうにない。

 そう判断した俺は明日サキュバスクイーンと直接対話することにした。


「ところでサキュバスクイーンってどんな人?」

「ああ、そういえばお前は会ったことないのか」

「うん、わざわざルール作ってる人に覚えられたくないじゃん」

「……」


 多分会ったことなくても、ダスティナの素行はサキュバスクイーンの耳に入っているだろう。

 ……とはいえ、政治に関心のない放任主義なサキュバスクイーンのことだ。

 ダスティナのことをどうこう言うことはないだろう。


「お前とは割と気が合うと思うぞ」

「へー」


 それから宿で一晩泊まった後、俺は面会可能時間の規定に則りサキュバスクイーンの元に向かった。


「あっ、ファーシルくんじゃん久しぶりー」

「えっと、お久しぶりです」

「あー、お堅い言葉遣いに戻ってない?」

「ああ、そうだったな」


 そういえば彼女と対話するときは、息苦しくなるから堅苦しい喋り方はやめてほしいと言われていたことを思い出す。


「それでファーシルくんは何の用できたのかな?」

「ティアラの様子が気になったので……」


 俺がドルミナーに来た本来の目的はクサリのことを訊ねるためだが、まずはティアラのことについて聞くのが無難だ。


「ティアラちゃんなら、寝室にいるよ」

「ここ最近ずっと城から出てないらしいが、何か理由はあるのか?」

「国の要望があったからね」

「ライブの休止に留まらず城から出ることまで制限されてたのか?」

「それは違うけど、ティアラちゃんって目立つでしょ?」

「ああ……」


 国は目立つことを避けてほしいという要望をした結果、いるだけで目立つティアラは一歩も外を出なくなったのか。

 目立たない服装でいれば済む話だと思うが、あの衣装は彼女のアイデンティティなのだろうか?


「要件はそれだけじゃないよね?」

「ええ、そうですね」


 ミウルスから言われた通り、クサリのことを聞きに来たのだがどう質問するべきか?

 ミウルスはイルシオンで扇動者として指名手配されており、彼女の名前を出したくはない。

 さらにクサリはイルシオンの暗部そのものである可能性すらある。

 イルシオンの最上位騎士が隣で控えているこの場では、クサリのことを聞きだすことは困難だ。


「もしかして、ファーシルくんがここに来たのって王様が倒れたことに関係ある?」

「はい」


 クサリの話をどう切り出そうかと迷っていたが、彼女のほうから話の切り口を提供してくれた。

 これでなんとかクサリの話に漕ぎつけるだろう。


「正確には、そのことがきっかけで、とある人物にサキュバスクイーンを訊ねろと言われたのです」

「あの子に会ったんだね」

「あの子?」


 ミウルスは『あの子』と子供のように呼ばれるような年齢ではない。

 話の内容から、『とある人物』とぼかしても伝わると思ったが難しかっただろうか?


「多分ファーシルくんが聞きたい事って、あんまり周囲に聞かれたくないことだよね?」

「えっと……」


『聞かれたくないことだよね?』と言われて、『はい、そうです』と言えるはずがない。

 そんな返し方をすれば、彼女の隣に控えているイルシオンの最上位騎士らがどういう反応するか分かっているだろう。

 こういう返答に困る発言をしてくるのは相変わらずだ。


「ちょっと待っててね」

「ああ……」


 俺の困惑した様子から何を聞きたいかを察したのか、彼女は立ち上がり玉座の後ろにある扉の奥へと入っていった。

 扉の奥は彼女が開けたときに少し見えたが、おそらくは寝室だ。

 寝室に何をしに向かったのだろう?


 サキュバスクイーンが扉の奥へ向かってから3分ほど経つと、彼女は再び出てきた。

 何をしていたのだろうか?


「内緒話を始めよっか?」


 サキュバスクイーンはそう言うとそっと鈴を鳴らした。

 すると、彼女の隣にいた二人の最上位騎士はその場で倒れてしまった。

 やはりミウルスの言っていた鈴のことを知っている残りの一人はサキュバスクイーンだったのか。

 彼女の知るクサリとは一体どんな人物なのか?


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