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異世界開拓戦記~幻影政治と叛逆の翼~  作者: ファイアス
滅ぼすべきは全ての悪にあらず

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67話:鈴の効力は……

「リプサリス、これを見て何か分かるか?」

「いえ……」

「やはりわからないか」

「そもそもこれは何に使う道具なんですか?」

「……」


 この反応、リプサリスは普通の鈴を見たことがないのか。

 俺はリプサリスに普通の鈴について簡単に話した後、問題を切り出した。


「それで問題は、この音でグランルーンが気絶したことだ」

「……」


 リプサリスは無言で考え込むが、俺の手から鈴を受け取ろうとしない。

 直接調べてほしいのだが……


「どうした?」

「この鈴を鳴らした人や、近くにいたファーシルさんには何の影響もなかったんですよね?」

「ああ……」


 言われてみればそうだ。

 音が原因でグランルーンが倒れたのならば、近くにいた俺や、この鈴を鳴らしたジャーマスにだって影響が出るはずだ。

 それなのに、なぜグランルーンにだけ影響が出た?

 ジャーマスが鈴を鳴らすときに、グランルーンにしっかり見せていたためだろうか?


「少し試してくる」

「何をですか?」

「見せて鳴らせば効果が出るのかどうかをな」


 最初の検証は不測の事態が起きやすい。

 そこで、最近盗みを働いた女に検証協力をさせた。

 グランルーンが気絶したときと同じ状況を再現するため、鈴を彼女に見せながら鳴らす。


「なんですかこれ?」

「……」


 彼女は不思議がるだけで、気を失う様子はない。

 この鈴の効果を発動させるためには、何か特別な手順や操作が必要なのだろうか?

 どこを見てもこの鈴にそんな機能を発動させるスイッチは見当たらない。


 俺はそれから何人かに頼み、検証の協力をしてもらったが、誰一人として効果が現れなかった。

 一度きりしか発動しない使い捨ての道具だったのだろうか?


 俺はどう使えば効力を発揮するのか疑問に思っているときだった。

 グラトニアに住む一人の男が俺に慌てて声を掛けてきた。


「ファーシルさん、大変だ」

「何があった?」

「グランルーンさんがあっちで倒れてるんだ!」

「何だと……」


 そういえばさっき鈴を何人かに向けて検証したとき、近くをグランルーンが通りかかったはずだ。

 この鈴はもしやグランルーンにのみ効果が発動する仕組みなのだろうか?

 ならば、彼には悪いが検証のためにまた彼の近くで鈴を鳴らしてみるとするか。


 俺はグランルーンの元へ向かうと、彼は意識を取り戻しており何の問題も見られない。


「何が起きたんだ?」

「いや、わからぬ」


 やはり彼は自分が倒れた原因が分かっていない。

 あの時と同じ状況だ。


「痛みや体の不調などは起きているか?」

「いや、全くない」

「最初に倒れたときは、ある音を聞いて倒れたように見えたが、心当たりはあるか?」


 俺はあえて鈴という言葉を伏せて質問を投げかける。

 彼は俺の監視役であり、秩序を守る役割を担っている。

 俺が彼の弱点を知ったと伝えると、厄介な問題が起こり得るからだ。


「全くない」


 彼自身に聞くことで鈴の特徴を特定することは不可能か。


「グランルーンが気を失う原因を特定したいんだが、そのための状況再現を繰り返しても構わないか?」

「……」


 やはり承認を得られないか。


「グランルーンに突然倒れられると、俺も困るからな」


 ……突然倒れると困ることは間違いないが、今は正直検証の承諾を得たいのが本音だ。

 俺はグランルーンが突然倒れるようでは、イルシオンの秩序が損なわれる可能性があるなどと適当に付け加えて説得を行う。


「分かった」


 なんとか承諾してくれたようだ。

 これで安全に鈴の検証が行える。


 さっきは近くで鳴らしただけで倒れたのだから、彼に見せることなく鳴らしてみよう。

 俺は再び鈴を鳴らす。


「うっ……」


 すると、グランルーンは再びその場に倒れてしまった。

 やはりこの鈴は彼にだけ影響があるようだ。

 俺は彼が起き上がるまでの間の安全確保をした後、リプサリスの元へと検証報告に戻った。


「どうでした?」

「効果はグランルーンにだけ現れることが分かった」


 しかし、なぜ彼にだけ効果が現れる?

 しかもジャーマスは明らかにグランルーンに効果が現れることをわかった上で、この鈴を鳴らしていた。


 鈴の検証をした者らの中で、グランルーンにだけ当てはまる条件は何だろうか?

 俺が思いついたのは、圧倒的な戦闘力と、自我の希薄さと、イルシオンの騎士であることくらいだ。

 このうちの一つである自我の希薄さが答えならば、リプサリスに使っても効果を発揮することになる。

 彼女にも検証の協力をしてもらうか。


「リプサリスも検証に協力してくれ」

「はい」


 俺は彼女の前で鈴を鳴らす。

 しかし、リプサリスにも他の者と同様に効果が現れることはなかった。


「特に何も起きませんね」

「そのようだな」


 俺はこのとき一つの仮説を閃く。

 もしや、この鈴自体は何ら特別なものではなく、グランルーンがイルシオンで何かされていたのではないかと。

 グランルーンはリプサリスやエンサのように、孤児院で洗脳教育を受けたわけではない。

 しかし、孤児院の洗脳教育が国のプロジェクトならば、城の中で何らかの洗脳行為が行われていた可能性は高い。

 何よりドルミナーで見た他の最上位騎士(グランルーン)もまた、俺たちと行動を共にしているグランルーンと同じように自我が希薄で、ロボットのような反応をしていたことが気になる。


「リプサリスはこの鈴と同じ音が鳴るものを作れるか?」

「素材と構造が分かれば多分できると思います」

「それなら大丈夫だろう」


 鈴の構造はそんな複雑ではない。

 それに形を再現できずとも、同じ音さえ出せれば効果の再現を検証できる。


「素材の調達はアナドールに任せるか」


 彼女は行商人としてイルシオンへよく向かうことから、その際に素材の買い付けをしてもらうことにした。

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