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異世界開拓戦記~幻影政治と叛逆の翼~  作者: ファイアス
刺客への攻防と村の発展

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53話:新たな収益源

 グラトニアに冒険者ギルドを作っても、俺たちの資産が尽きてしまえば冒険者ギルドを活用できない。

 だからまずは冒険者ギルドの依頼を通して、安定した利潤を生みださねばならない。

 俺はそんなことを考えていた。


 しかし、販売ルートが確立されていないグラトニアでは、依頼を通して取ってきてもらうものを誰かに売って稼ぐこともままならない。

 何人かの行商人がグラトニアによく顔を出すようにはなったが、彼らは発展途上の村であることを理由に安く買い叩こうとする。

 そのため、在庫過多になりがちな一部の作物以外を売るべき相手ではない。

 さらに冒険者ギルドで仕事をする想定のノースリアの傭兵たちは、本来はイルシオンへ向かうまでの中継地点としてグラトニアに寄るだけだ。

 グラトニアの相場で人件費を買い叩こうものなら、すぐにイルシオンへ行ってしまうだろう。


 俺はそんな環境下でいろいろ模索したが、結局いい方法は思いつかなかった。

 そのため、俺はグラトニアの運営資金の約4割をイラに渡し、彼女に冒険者ギルドの依頼を通じて稼ぐ手段を模索してもらうことにした。


 やっていることは丸投げだ。

 到底褒められた判断ではない。


「ファーシルさん、しばらくダスティナさんを借りていいですか?」

「まあ構わないが……」


 イラは問題行動が目立つダスティナを名指しで借りたいという。

 何をさせたいのかまでは言わなかったが、何か良い案が浮かんだに違いない。


 それから約10日。

 建てただけで使われていなかった一軒の家から、何やら騒がしい声が聞こえてくる。

 俺は様子を見るため中に入ると、イラとダスティナがいくつかの着色された石ころを並べてゲームをしていた。

 その周りには観戦しているグラトニアの人々が二人の勝敗に一喜一憂する。

 どうやらどちらが勝つか賭けているようだ。


「何をしているんだ?」

「ダスティナさんから賭け事を学ぶために実践しているんです」


 なぜいきなりこんなことを始めたのだろうか。

 冒険者ギルドの依頼を通して収益を上げることにはまず繋がらないだろう。


「賭け事を学ぶことと、この前頼んだことは何か関係あるのか?」

「はい。冒険者ギルドの依頼とは関係ないですけど、要は支出先から回収する手段さえあればいいので」

「……」


 まさかそうくるか。

 つまりは冒険者ギルドで傭兵らに支払った賃金を、自分たちが有利な賭け事に引き込んで回収してしまうつもりらしい。


「しかし、大負けした客がトラブルを起こす可能性にはどう対処するんだ?」

「問題はそこなんですよね」


 ギルドの依頼で傭兵らに護衛をさせる手段も考えたが、現在の来訪者の数を考えると割に合わない。

 そのため、しばらくは俺かダスティナがディーラーをすべきというのが彼女の結論だった。

 なお、グランルーンはあまりにも愚直過ぎるため、ディーラーには向かないと判断されたようだ。


「ルールはどうなってる?」


 俺は彼女らにゲームのルールを教えてもらう。


 着色された2個の石のうち挑戦者の子が片方を選んだら、ゲームホストの親が2個の石を手の中で転がす。

 その後、子が最初に選んだ石を当てるだけだ。


「親と子の勝つ確率が同じでは、収益が見込めないと思うが?」

「今はただの練習ですので」


 実際に事業としての賭け事をするときは石の数を増やして、左から何番目かを当てるルールにするという。


 リスク管理を見越したルール設計はさすがだと感心する。


 ダブルアップを繰り返した勝利報酬は最大でも32倍までだ。

 運悪く大負けしても損失の上限は控えめだ。

 ダスティナなら、こういうリスク管理は絶対考えないだろう。


 さらに合計で32倍の勝利を重ねた子は殿堂入りと煽て出禁とする対応だ。

 つまり賭け事なら無敵の異能力を持ったチキュウ人が現れても、最大損失は掛け金100G×倍率32倍の3200Gに抑えられることになる。


「大体分かったが、イカサマはどうなってる?」

「もちろん禁止ですよ。やったら即出禁です」

「ふむ、それは少し面白味に欠けるな」

「え、何でファーシルさんまでダスティナさんみたいなことを言うんですか」

「賭け事の基本は遊びだからな、駆け引きがあるほど面白い」


 俺たちは収益源と見込んだ賭け事を考えているが、客側は遊びで参加するのだ。

 だから面白くなければ価値がない。


 その面白みを増やすには、イカサマありきのルールとしたほうがいい。

 相手のイカサマを見破れるかどうか、それ自体を娯楽とする。


 もちろん親側からもイカサマをして、収益の安定を図るつもりだ。


「あっはっは、ファーシルは賭け事の楽しみ方を理解してんじゃん」

「むぅ……」


 ダスティナは俺の提案に賛成する。

 イラは自分の判断が『面白くない』とマイナス評価を食らったためか、まるで賭け事に負けたかのような表情だ。


「賭け事で収益を得ようってなら他にも色々考えられるな」

「おっ、じゃあコロシアムなんかもやろやろ」

「コロシアムはさすがに今の環境では無理だろう」


 ダスティナの提案したコロシアムには幾つかの問題がある。

 苛烈な魔法を用いた本気の戦いをすれば、普通の建物では崩壊してしまう。

 野外でやったとしても観戦者が巻き込まれるリスクがある。

 本気でやりあえば死傷者が出るに違いない。


 また、見世物となる剣闘士が本気で戦ってくれるとは限らない。

 報酬次第では八百長試合をして、賄賂で稼ぐほうが効率的と判断されてしまう問題もある。


 そのため、賭け事の事業はひとまず石ころゲームのみにとどめることとなった。


「ところでイラは渡した資金を有用に使う当てはあるのか?」

「はい、まあ本来はファーシルさんがやることですけど」

「どういうことだ?」

「グラトニアの発展投資に繋がるように彼らを雇うだけです」

「なるほど、確かに俺のやるべきことだな」


 彼女が現在のグラトニアで一番問題視していることは行商人たちが余剰分の作物を買い叩き放題なことだ。

 そのため、彼女はイルシオンの商人らをターゲットにしたグラトニアの観光案内と護衛を冒険者ギルドに依頼するつもりだという。

 多くの商人にイルシオンとグラトニアを往来させることで、購入競争を起こすのが狙いらしい。


 少し前に作成した絹の販売ルートは今も確保されていないが、彼女の目論見が成功すれば絹の販売による高収益も見込めるだろう。


「俺のほうでも販売ルートの確立方法は考えておくが、せっかくだからイラの考えた方法も試してみてくれ」

「はい」

「ねぇねぇ買い叩きの問題ならアタイからも提案があるけどどう?」

「ん?」


 ダスティナのことだからろくでもないアイデアだろうが、彼女の提案を聞いてみるべきだろう。

 彼女はグラトニアの物価を上げるために何をしようというのだろうか?

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