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異世界開拓戦記~幻影政治と叛逆の翼~  作者: ファイアス
刺客への攻防と村の発展

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52話:貨幣経済の導入に向けて

「贅沢品といえば何がある?」


 ヤリテナが訪れた翌日、俺は皆にこんな質問をして回っていた。

 グラトニアに貨幣経済を導入するなら、まずは贅沢品に絞ろうと考えたからだ。

 しかし、俺は何が贅沢品かすら分からなかった。

 そのため、俺はグラトニアの皆から何が贅沢品なのかと聞き回っていた。


「ワイン!」

「宝石の類ですかね」

「ワインかな」

「希少な布地を用いた衣類でしょうか」

「絹」

「本」

「わかんない」


 これが贅沢品だとして多く挙がったのがワインと幾つかの布地だ。

 ワインは製造環境を整えられないから見送るとして、高価な衣類を作る選択肢はありかもしれない。

 問題は素材となる絹をどうやって確保するかだ。


 絹の素材は蚕の糸だ。

 絹自体が高価なら、蚕の養殖事業から始めるべきか。


「イルシオンで蚕の卵を買うことはできそうか?」

「何ですかそれ?」

「何言ってるのかよく聞き取れなかったんですが……?」


 俺はグラトニアの何人かに蚕の卵について質問するも、その存在すら認知していない様子だ。

 言葉自体聞いたことないためか、俺の発音に何か問題があるのではと捉えた者さえいた。


 製造工程を知らないか。

 まあ作る側じゃないならそんなものか。


 こういうときはイラに聞くのが一番手っ取り早い。


「イラは蚕のことは知ってるか?」

「えっと聞いたことないです」

「え……」


 イラさえ知らないのか。

 俺は絹の素材が蚕の糸から作られてることを彼女に説明する。


「チキュウの絹ってそういうものなんですか」

「イデアでは異なるのか?」

「はい」


 ……イデアでは絹の素材の前提から違っていたのか。

 どうやら何も知らなかったのは俺のほうらしい。


「絹は冒険者の方に巨大蛾の繭を取ってきてもらって、それを煮て糸を取り出す感じです」


 対象生物の特徴が少々違うだけで流れはほぼ同じか。


「巨大蛾ってサイズはどれくらいだ?」

「グランルーンさんと同じくらいじゃないですか」


 完全に化け物の域だな。

 そんなものを養殖できるはずがない。

 だた、大きい分、一匹あたりから採集できる素材の量はそれなりに期待できるか。


「その巨大蛾とやらはこのあたりにいそうか?」

「居ないと思いますよ、居たら騒ぎになりますし」

「それもそうか」


 俺は彼女から巨大蛾のことを聞いたその日から、グラトニアを訪れる傭兵たちと話す機会のある者には巨大蛾の目撃情報があれば教えてもらうよう指示をした。


 それから10日ほどが経ったある日、高さ30cm、横25cmほどのふかふかとした繭を手にしたダスティナが上機嫌で俺に話しかけてきた。


「ふっふーん、ファーシルーはこれが何か分かるかなー?」

「なんだこれは?」

「巨大蛾の繭だよ」

「!?」

「お前、いつの間に!?」

「個人的な興味でリギシアの調査に行こうとしたんだけどさ、道中これを抱えながら倒れてたのがいたから持ってきちゃった」


 ……俺に確認せず勝手に行くなよ。

 しかも行き倒れの死体を漁って手にしたのか。


「こいつ羽化しちゃったら結構面倒だし、今回はいいことしたでしょ!」

「ああ、まあそうかもな」


 あまり褒めたくない行動だったが、結果的に助かったのは事実だ。

 俺はリプサリスの元に巨大蛾の繭を持っていく。


「何ですかそれ?」

「巨大蛾の繭で、これが絹の素材になるらしい」

「なんか動いてますけど、大丈夫です?」

「え?」


 まずい。

 早く釜に入れて煮なければ……

 俺は急いで準備を整える。

 そして、釜の中に巨大蛾の繭を入れだ。


「なんとか孵化せずに済んだか」


 今回の作業は錬金術を必要としない。

 ならばまずは俺が手本を見せたほうがいいだろう。

 祖母が蚕の飼育をしていたことから、糸引きの手順は把握している。

 もちろんこんな巨大蛾の繭から糸引きしたことはないが、手順が同じなら問題はない。


 糸を引くのに必要な道具が揃っていなかったので、俺は近くのガラクタを魔法で形状加工して使えそうな形に変えていく。


「これでいいか」


 そして、釜の中で繭を煮ると無事糸引きに成功した。


「俺の知ってる絹と比べると、若干色がくすんでいるか」


 まあ、実用性があれば色の問題はこの際どうでもいいだろう。


「リプサリス、この絹の量で服を一着作れそうか?」

「……この量だと必要な分の1/10にも満たないと思います」

「やはりそうか」


 もっと集められればいいのだが、今使った繭はたまたまいた行き倒れの冒険者からダスティナが盗ってきたものだ。

 そのため、十分な量の絹を確保できず、服の制作に取り掛かれるのはいつになるか分からない。

 それならばいっそ絹を絹のままイルシオンの商人に売却して、その金額で何か買う判断をするほうがいいかもしれない。


 俺はイラを呼んできて、絹のまま売却する方針を伝える。


「この量の絹だと大体相場は3000Gになると思います」

「これで3000Gとなると相当な金額だな」

「今回は原価が0Gですからね」

「この繭、調達に結構金がかかるのか」

「冒険者に繭調達の依頼を出したら、2000Gは出さないと誰も引き受けてくれませんね」

「最低限で2000Gとなると、利幅は1000G以下か」


 話を聞いていくうちに分かったことは、どの工程も決して暴利を得られないということだ。

 一番稼げそうなのは、繭を拾ってくる冒険者か。


 だが、冒険者の仕事は基本的に割に合わないものだと聞いている。

 金を稼ぐ目的とは別に、夢を追う目的で始める者が多いことから、低ランクの冒険者はとんでもなく安い金額で人件費を買い叩かれる現実がある。

 だから、比較的報酬の良い巨大蛾の繭を拾ってくる依頼は危険なものになるのだろう。


「巨大蛾はやっぱ強いのか?」

「討伐になればBランク以上、繭を取ってくるだけでもCランク以上の冒険者ランクが求められたと思います」

「ふむ……」


 冒険者のランクと強さの相関関係が具体的にどの程度のものになるのか俺は分からない。

 ただ、そこらの駆け出し冒険者にできない仕事ということはよくわかった。


「ちなみにイラはダスティナの冒険者ランクがどのくらいか分かるか?」

「確かEランクって言ってたと思います」

「ダスティナでEランクとなると、相当厳しいな……」


 巨大蛾の巣を何かのきっかけで見つけたとしても、安易に手を出すべきではないか。

 下手に手を出せば命を失うことになる。


「一つ提案があるんですけど」

「どうした?」

「グラトニアにはノースリアの傭兵が結構な頻度で来てますし、冒険者ギルドをグラトニアに開設してみませんか?」

「そうか、その手があったか」


 資金があるのなら、素材の調達は何もグラトニアに住んでる者たちだけでやる必要はない。

 それに冒険者ギルドなら、維持コストは軽く、安い人件費で労働力を買い叩くことができる。

 何なら貨幣経済を進める第一歩は冒険者ギルドを作ることで良かったのかもしれない。

 彼女の案を採用することにしよう。


 販売ルートの問題をヤリテナに相談すればいいだろう。

 リギシアに向かった彼女は、イルシオンへ戻る途中で再びグラトニアに寄る予定がある。

 相談はそのときにすればいい。


「さて、まずは冒険者ギルドの開設からだ」


 俺は使われてない一軒の建物を冒険者ギルドとして運用することにした。


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