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異世界開拓戦記~幻影政治と叛逆の翼~  作者: ファイアス
刺客への攻防と村の発展
31/113

31話:刺客の情報経路と想定される襲来傾向

 なぜ偵察行為を阻止したにも関わらず襲撃を行う刺客が現れたのか?

 偵察行為をまともにできる相手でないと判断するには明らかに時期尚早だ。

 そもそも最初に捕らえた偵察と、先程の刺客三人が現れるまでの間隔を考えると、偵察行為が成功した場合でさえ後発の三人には情報が伝わらないだろう。


 つまり、最初に捕らえた偵察が送られてから、刺客として送られた三人が現れるまでの間にジャーマスは何らかの情報を得たのではないかと憶測できる。


 そして、俺はその情報源が補助機関の管理者側であるオウボーンなのではないかと睨んでいた。


「……ということなのだが、何か心当たりはあるか?」

「この場所に関しては話しておりませぬが……」

「それ以外には何か話したようだな」

「ああ、はい。 仕事上の報告義務がありますゆえ」


 オウボーンは毎月補助機関の管理者として補助機関本部への報告義務があると説明する。

 そして報告内容として挙げたものが主に活動内容である。

 建築技術を学んだことや、村の基礎となる建物を作ったことなどは、彼が報告すべき事柄として報告していたらしい。


「この地に関しては今後も誤魔化しておくつもりですので……」

「わかった」


 オウボーンが報告した内容は裏切ったと言えるような報告内容ではないため不問とした。

 実際彼から聞き及んだ報告内容ではこの地を特定することは不可能だ。

 だとしたら、この地が特定されるに思い当たる点は一つだけになる。


 給料日にイルシオンへ向かった各グループが帰り道に尾行されていたのだ。

 1回目の偵察と、2回目の襲撃。

 いずれもタイミングは給料日のために向かっていたグループが往復から帰ってきてから間もなくの出来事だった。


 これは逆に考えれば次の給料日までは安全だといえるだろう。


「刺客がどのようにして情報を得たかは大体把握した」

「……と申しますと?」

「尾行されていた線が濃厚だ。 いや待て……」

「どうしました?」

「尾行されていたなら、本人たちから聞けば分かる話だなと」

「なるほど、それはそうですね」


 俺は直ちに計4人の刺客にここへ来るまで尾行してここに辿り着いたかを問いただす。

 すると俺の睨んだ通り、彼らはそれぞれのグループの後を尾行していたことが発覚する。


 結局なぜ情報が不十分なまま偵察から襲撃に切り替えたか、納得できる有力な情報は得られなかった。

 しかし、襲撃のための情報経路自体は把握できただけでも今は良しとするしかない。


 また、オウボーンにはジャーマスが我々の人員構成についてどれくらい把握してるかと聞くと、後から俺たちの活動に加わったダスティナも含め大体の人員は把握してると答える。


 送った刺客のことも戻らないことから近いうちに気づくだろう。

 場所が分かればエサ村の人々が共にいることだって分かるだろう。


 今後も存在を把握される可能性が低いと言えるのはセレディアの元目付け役の老人くらいだった。


 そのため、セレディアを通して彼にはイルシオンへの買い付けを命じた。

 購入のためのお金は刺客たちから没収した貨幣で賄う。

 捕らえた刺客はいずれもそう大金を持っていたわけではないが、セレディアが始末した監視役の刺客はそれなりの貨幣を持っていたため、それなりの買い物が可能だった。

 買い付ける商品は野菜や穀物の種、及びリプサリスに作成依頼する道具の見本になる品々だ。


 セレディアに買い付けの話をしていると、先程捕らえた刺客のうちの一人が居ないことに気づく。

 あの水商売をやっていた女だ。


「あの女、裸のまま脱走したか?」

「もう人生諦めてるって感じだったし、そんな気力は無いと思うよ」


 セレディアが彼女と話した印象によると、俺達の誰かしらと交流を図りに行った可能性が高いという。

 元水商売の女なら確かにそういった立ち回りは得意だろう。


「……あの女の場合、丸裸にしたことが返って利点になりかねないな」


 それから付近を確認すること数分。

 案の定補助機関会員の一人に色目を使い性交渉しようとしていた。


 元刺客とは積極的に交流を行い、我々のルール文化を教え込む必要がある。

 全員に向けてこの方針を確かに伝えた。


 しかし、この女のように色目を使って交流を深められるのは何かとまずい。

 色恋営業のような交流の仕方をされると、逆に取り込まれる者が出てくる恐れがあるからだ。

 そもそも捕らえられてる側が意思決定の主導権を握っていることが大問題だ。


 このあたりは後程ルール化しなければならないだろう。


 だが、今は意思決定の主導権を持たせぬように注意するだけのほうがかえっていいかもしれない。

 まずこの女はそもそもが元々金欠になっただけの一般イルシオン人だ。

 特定組織との繋がりや偏った思想などはない。


 加えて水商売で売れなくなったことを自覚していたことから男を誑かすことよりも、身を固めたいという意識の芽生えていると期待できる。

 そして何より今は自律的に行動してくれる人材を早急に増やしたい。

 そう考えると型に当てはめて彼女の行動を咎め、一緒にいる補助機関会員から引き離すよりも逆に二人で行動することを推進してしまったほうが効率的だ。


 何せ補助機関会員の多くはまだ人となりの分からない元刺客の彼らを腫れ物として見ている。

 だが、この補助機関の男は意思決定の主導権を握られてしまっていたとはいえ、この女をそう悪い目では見ていない。


 ただ注意だけはしておく必要があるだろう。


「その女はまだ指導更生期間なのだから、関わる時は意思決定の主導権を常に握っておけ」

「は、はい」


 俺が注意した補助機関会員は比較的内気な男だ。

 だからこそ心を掴みやすいと思われたのだろう。


 セレディアの話に出てきたカナハのように、心を掴まれ情報漏洩の原因となりうるのはリプサリスだけでないと痛感させられる。

 この男のように異性慣れしてない人物も若干注視したほうがいいかもしれない。


「それとお前は……」


 刺客だった女には他者に依存せずにこの村での生活に必要な役割を何かしらの形で担えるようになれと伝える。


「え~今必要なのって基本は力仕事でしょう? それにアタシ真面目に日々労働なんてのはさ……」

「ならばあれこれできるようセレディアに仕込んでもらうか?」

「いやいややめておきます、地道に、真面目に、コツコツと学ばせていただきますので!」


 セレディアの名前を出した途端この態度だ。

 彼女が目を離した隙に場を離れ補助機関会員の一人にこうやって接触していたのは、どうやらセレディア個人から逃げたくて仕方なかったということが浮き彫りになる。


 どうもセレディアは更生すべき相手に対して恐怖や苦痛を与えすぎてる感じが否めない。

 彼女が育ったXXにおける教育方針がそういうものだったのかもしれないが、あまり万人に適したやり方だとは思えない。


 だが俺は指導更生のようなことはしたことがないのはもちろん興味を持って調べたことすらないので、対応マニュアルを作るにも作れない。

 この問題のマニュアル化は時間を掛けて試行錯誤を練るしかないだろう。


 それから再び皆を集めて情報共有を行う。


「刺客の情報経路に関して皆に共有しておきたい」


 刺客に尾行されていたこと、ジャーマスは我々の人員構成の大半を把握していることを皆に伝える。


「現在まで来ている刺客から話を聞いた限りでは、途中で帰った者はおらず少なくとも次の給料日までは刺客が襲来する可能性は低い。 ただし、セレディアが討った監視役の刺客が戻らないことをジャーマス側も把握して次回以降は一定距離ごとに途中で帰還人員を足すことで徐々にこの位置は特定されるだろう」


 毎回監視役さえ討てばこの地を把握されないと安心できるほど、甘い相手だとは思えない。

 むしろ今回情報を持ち帰るための人員を最後までこちらに向かわせたのは明らかに幸運だったと思うまでだ。


「えっと、つまり俺達往復の際に襲撃される可能性があるってこと?」

「グランルーンさんが同行してくれてても不意打ちされたら殺されますよね……」

「うそだろ……」


 今からでも脱退すべきかと何人かが不安を口にする。


「道中でお前達が殺されることはまずないだろう。 狙いは俺への妨害なのだから、道中で交戦すれば目的が達成できなくなる」


 ギシアが襲撃されていた時だって補助機関会員が狙われたという話はなかった。

 ……とはいえ、ギシアは一人で何でもこなしていたのに対し、俺は皆の協力をしてもらうことで現状の状態を作り上げてることを考えると彼らが狙われないとは言い切れない。


「後を付けられてる最中は、皆の安全を優先して尾行に気づいても気づかぬフリをして戻ってきて構わない」


 どうせこの地を特定されるのは時間の問題だ。

 ならば次回の給料日までに出来る限りこの村をできる限り発展させて、こちらも傭兵を雇うくらいの経済力を身に付ける方針でいきたい。


 発展させて、経済的に豊かにすることは安全にも繋がると言えるからだ。


 そして、村の発展、開発を進めるには衣食住の確保はもちろんだが、その他それらを成す為の小道具や刺客の襲来に備えた武器なども必要になる。

 そして、現状それらを作ることのできる設備環境はなく、現段階で作ることができるとすればそれはリプサリスの錬金術によるものだ。

 そのことから想定できる問題はリプサリスに負荷が集中しすぎてしまう。


「この問題について何か意見はあるか?」

「農具や釣り具なんかは一通り作ったらしばらくは使えるから大丈夫じゃない?」

「それらを優先してくれればね」


 活動インフラになる物を早めに作れば大丈夫との声が多く上がる。


「なあこの流れ…… 俺たちずっと素っ裸のままじゃ……」

「諦めろ」

「……」


 元刺客達の衣服と住まいの問題もあるが、後回しになるだろう。

 補助機関会員の男に色目を使った女の住まいは彼と同じ家で過ごすという形で解決できそうだが、他の三人は住まいを得るのもまだ先になりそうだ。


 一通り伝えておきたいことを伝えた後は、生活環境改善を目指し皆各自で動くことにした。

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