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異世界開拓戦記~幻影政治と叛逆の翼~  作者: ファイアス
異世界の秩序に翻弄されながら築く始まりの一歩
3/99

3話:幻影政策包囲網を穿て!

前話の修正点

・あらすじ文章を大幅に変更しました。

理由はエピソード1話ごとに付ける仕様と勘違いしていたため

・タイトルの一部を変更しました。(~幻影政治とチキュウ移民改革~ → ~幻影政治と叛逆の翼~)

理由は本来チキュウ人の主人公をチキュウからの移民と見立て改革をするという趣旨で付けたものの、冷静に見るとイデア人がチキュウに移民として大量にやってくるストーリーと解釈できてしまい、そういう展開内容は最初から予定されていないため

※今後執筆していくストーリー展開に対する予定変更はありません。

・改行、句読点の調整(1話の内容も含む)

・一部文章の修正(1話の内容も含む)

 イラ、リプサリスと共にオウボーン宅へ向かう途中、俺は昨日まで意識してなかった街中の景色に目配りをする。

 中世ヨーロッパ風のデザインの建物が立ち並んでおり、当たり前だが何の知識も無い素人が建てられる建造物ではない。

 少なくともこの都市基準の建物を建てるつもりなら、俺の元にはいない建築士の協力を仰ぐ必要がある。

 また、文明の程度も全体としては恐らく15~6世紀程度のものだろう。

 一方下を見るとどうにも首都とは思えないほど道端にはゴミが散乱している。

 公共の道は綺麗であるというのは日本人ならではの先入観かもしれないが、さすがに衛生上の問題があるレベルではないだろうか?

 そんなことを考えてるうちにオウボーン宅へと着く。


「ただいまー」

「お邪魔しまーす」

「……失礼します」

 それぞれ玄関で挨拶を済ませるとオウボーンとその妻のエンサが客人として出迎えてくれた。 オウボーンはチキュウ人開拓補助機関(以下補助機関と省略表記する)の会員達からかなり嫌われてるという前評判の印象とは裏腹に普通に人の良さそうなおじさんである。


 イラに私室へと案内される。

 それから話を聞くに補助機関会員達への印象は彼女にとっても良いものではないらしい。

 補助機関の制度に対する不満が募るのは当たり前と認めながらもその制度を作っているのはオウボーンではなくオウボーンへの評価は不当と認識しているようだった。

 加えて彼ら個人個人の人柄への認識はチキュウ人の異能力に頼って一発狙いしたいだけの無能な連中という酷評ぶりだ。


 続くイラの話を雑にまとめると無能者と詐欺師への注意喚起だ。

 それからもう一つはゲーム風に表現すると【補助機関会員とのコミュニケーション機能がアンロックされました】である。

 もっともイラと対話したときのように至近距離で接していれば元々会話そのものは成立していた為、オウボーンもしくはイラを介すことでコミュニケーションを取ることが円滑になったというべきだろうか。尚、エンサはあまり現場に来ることは無いらしい。


 補助機関のことよりも俺はどちらかといえば昼間イラのことのが気にかかっていた。


「ところでイラは俺が指示したことを唯一最後までやってくれてたが、最初から俺が見えない人だって把握していたのか?」

「いえ、作業をしてたのは何らかの経験になるかと思ったからです」

「なるほど、それなら声を掛けたときの数秒で気づいたのか……」

「いえ、気づいたのはセレディアさんにひっぱられたときにです」


 言われてみれば確かにあの時の動きを見て気づくのは無理もないか。


 また、オウボーンは若い娘の部屋に俺が入ることが不安にならないかのかという心配事は、お国柄の違いで彼女にしてみればそんな心配をするチキュウ人の反応がおかしいだけといった感覚だ。

 チキュウにおける先進国の少子化傾向はイルシオンのみならずイデア全域で広く知られているようで、そのことが反面教師として扱われ性に対して警戒心が薄く自由奔放な社会となっているようだ。


 それから夜が遅くなりすぎないうちにセレディアは自宅に帰宅し、俺は案内された客室で就寝することにした。


 翌日

 この日はイラとオウボーンに伝え補助機関の会員達は休暇にすると伝えた。

 もっとも元々勝手にチキュウ人を利用しようとついてくる人達を抑止するのが補助機関の役割であるため管理するオウボーンにとっては休暇にされるほうが大変なようだ。


 今日の目標は開拓をきちんと出来るようにするための人材確保になる。

 荒地の邪魔な植物や鉱物を破壊するだけなら魔法が使えるイデアでは比較的簡単にできるが作ることは簡単ではない。


「この都市を作り上げた人も当然イルシオンにはいるんだな。 まずはそいつに協力を仰ごう」


 建造物の開発に関わった人物は意外とすぐに、それも複数見つかった。

 しかし、建築士達は比較的待遇が良く、さらに技術の漏洩対策をしている組織が多く適切な人材確保は難航する。

 そんな中、見覚えのある人物が自宅と思われる家の修復をしていた。

 転生初日にトラブルの発端となった召喚者のパワーだ。


「パワー、お前は家の修復作業ができるなんて特技があったのか」

「あぁん? うげっ、お前は……」

「もうそんなことができるとは驚異的な回復力だな ……と、まあ今は別にお前とあの時の続きをするつもりで声をかけたわけじゃない」


 パワーに開拓の為の建築技能のある人物を集めていることを伝えると新たな問題点が浮上する。


「俺様は一から建物を建てれる技術があるわけじゃねぇんだ。 それに俺様が一から全て建てれる技術があったとしてだ。 俺様を雇うだけの金はあんのか? 俺様の人件費は高くつくぜ」

「あっ……」

「がっはっは、今回の交渉は俺様の勝ちのようだな」


 人を雇うには金がいる。

 国が派遣した人材と補助機関関係者と会員達。

 そんな大人数が俺の資産を必要としないままついてきていたこともあり、人を雇うには金がいるなんて当たり前のことがすっかり頭から抜け落ちていた。


 ならば次の目標は資金稼ぎだ。

 盗賊や山賊の討伐といった仕事の依頼なら比較的容易に稼げるだろう。

 転生して強力な魔法の力を得ただけじゃなく、回復魔法を使っただけでそれ以外のあらゆる戦闘力を察してしまえるほどの力を持つグランルーンが付いてきているのだ。

 冒険者ギルドを探そうと次の行き先を告げる。

 しかし……


「待てファーシル。 チキュウ人の冒険者ギルド運用は法律で禁じられている」

「え、何でだ?」

「そういう法律だからだ」


 セレディアから聞いた話を元に考えれば禁止とされる理由は聞かずとも本当は分かっていた。

 しかし、開拓を本気でさせようとしているという建前上ではどんな理由付けにしているのかということをグランルーンから上手く聞き出せないかと思いあえて聞いたが残念ながら予想通りの返答だ。


「ならば狩りやら石材を集めて露天を開けば……」

「チキュウ人の商業活動については都市内外問わず禁じられている」


 またか、どうやら幻影政策におけるチキュウ人への行動制限は予想よりかなり幅広い。

 始めは常識の範囲内かと思われていた山賊行為をして土地を得る行為を禁止するという内容も既存の建造物を自分達のモノに出来ない為の規則として定められたものだと今になって理解した。

 何せ、村や集落の人々を皆殺しにして占拠した山賊が相手であっても、その手段はNGとなるどころかチキュウ人による賊の討伐そのものが禁止されているのだから…


「一応聞くが冒険者ギルドや商業活動を仲間内に任せるのは?」

「開拓活動と直接関係無い斡旋行為は禁じられている」


 開拓活動と直接関係無い、か。

 イデアに録音機材のようなものは無いが、法の穴として突ける表現かもしれないと思うと不意に録音できればと考える。


「リプサリス、メモできる道具はあるか?」

「え、教会に戻ればあります」

「然程時間がかからないのであれば持ってきてほしい」

「はい、わかりました」


 録音は不可能でも言われたことを書き留めることくらいは可能なようだ。

 録音と違って言った言わないの証拠として残す手段としては不十分だが、グランルーンの性格を考えれば嘘を付いて強引に相手の行動を制約しようという判断はしないだろう。


 数分もするとリプサリスが戻ってきた。


「あの、こちらでよろしいでしょうか?」

「ああ、大丈夫だ。 ところでグランルーンは契約書にサインする為の道具は持っているか?」

「いや、持ち合わせてはいない」

「そうか、とりあえず先ほどの会話で確認したルールをグランルーンの発言として記録させてもらう」

「問題無い」


 言質を取るというやり方までは禁じられていないようだ。

 もっとも現状までの会話では斡旋行為が開拓活動と直接関係あるものならば良いというだけであり

 これだけでグランルーンから禁じられていないこととしてお墨付きをもらう収入手段を得ることは難しいだろう。

 イデアの法律について現状まだまだ把握してないことが多いからこそ俺の今の感覚ではグランルーンが合法と判断すれば合法くらいの判断をしている。

 それは言い包めれば非合法なことが合法になるわけではないが、監視者であり俺達の中でもっとも強いグランルーンの許可が出れば活動範囲の自由度が大幅に高くなることは間違いないだろう。


 それから収入手段の確認を何度も繰り返す。

 開拓活動リタイア後はイデア人経営者の元での労働行為が認められるものの開拓活動中はそれも不可能であり逆にリタイア後は事実上サラリーマンとして生きよと道筋が示されているかのようだった。


 冗談ではない。

 そもそも俺は人に使われることが大の苦手で嫌いだった。

 仕事ができるできないとかそれ以前の問題で人間関係、特に上下関係に適応できなかったからだ。


 結婚相手に収入活動を全て依存するという手段は認められているため、辛うじて社会適応力の無いチキュウ人にも生活を営む為のセーフティは存在していると言えるのかもしれない。

 もっとも派遣される女の子の皆が皆リプサリスのように従順そうで社会適応力の高そうな子ならば、の話ではある。

 しかし、わざわざ第二の人生を謳歌する機会が訪れた中でそんな選択をしたくはない。


 それから一つの疑問が浮かぶ。


「ところで【ここが開拓して治めてる最中の土地である】とする定義は何かあるのか?」

「開拓活動範囲として許可されたエリア内で個々が定めた場所になる」

「そのエリアを後から変えることは可能か?」

「可能だ」


 言質は取れた。

「ここが俺の治めてる土地だ」と言えばそこが治めてる土地と定義される。

 つまりそれは橋の付近で勝手に自分の縄張りだと言い張って通行料を取る山賊紛いの収入活動でさえ政治活動として定義されることを意味する。

 そして開拓任務には開拓した土地で自分の国を作り上げても良いとされており、政治活動も認められている。

 本来そのルールは開拓任務の先にある夢を見せるためのものでしかないがルールとして認められてる以上利用しない手はない。


「そうだ! 確か都市の入り口付近にゴミとして捨てられていたカーペットがあったはずだ。 それを広げた場所をしばらくは開拓して治めるべき土地と定義することにする」

「え、あれもだめこれもだめって言われ過ぎて頭おかしくなった?」

「???」


 セレディアだけなくてリプサリスも困惑の反応を示す。

 当たり前だ。

 言ってることは小さな子供がビニールシートを開いてここが私夫婦のおうちと言ってるおままごとそのものだ。


「政治活動をするための条件を満たすためだ。 その条件を満たすことで禁止とされる活動の一部は政治活動の範囲として解釈できる」

「ねぇグランルーン、それでほんとに大丈夫なの?」

「……」

「沈黙は肯定、というわけではないだろうな。 だが、禁止とされてきた行動がケースバイケースになるくらいの緩和はされないか?」

「その質問は断定できない」


 否定されなかっただけでも結果は上々だ。

 イルシオン国の幻影政策包囲網とでもいうべきチキュウ人に対する人生のレールへの乗せ方は恐ろしいくらい完璧でそのレールから外れて生きようとする者への対策が徹底されている。

 しかし、それを管理する人間まではどうやら完璧ではない。

 まるでロボットのように命令、ルールにのみ従うグランルーンはイレギュラーなことへの判断が適切に出来てるとは言い難くルールや定義の矛盾や不備を付けば判断を揺さぶることができると分かったからだ。


 行動に移すのは明日からでいいだろう。


「リプサリス、今日の宿泊先はお前の家で構わないか?」

「はい、お願いします」


 独立への道筋は微かながら見え始めたのだった。

3話目が出来上がりました。

修正ポイントがやたら多かったので徐々に修正箇所が減ればいいかなと思ってます。

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