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異世界開拓戦記~幻影政治と叛逆の翼~  作者: ファイアス
異世界の秩序に翻弄されながら築く始まりの一歩
25/114

25話:血塗れの荒療治

作品全体の修正点

作中での役割から言葉の誤用を確認したため

補助機構→補助機関と変更しました。


過去投稿分もこのエピソード投稿後に順次修正します。

 セレディアとの戦いの前にルール確認を行う。

 まず俺は貫通魔法の使用は禁止とされた。

 貫通魔法は魔法弾が体を貫く性質から回復魔法による肉体の修復が困難になるケースが多いとのことだった。


 またリプサリスは俺に常に回復支援を、グランルーンはセレディアに防護魔法支援を、そして直接的な戦いは俺とセレディアの一騎打ちだ。

 決して訓練などという生温い戦いにするつもりはないようだ。

 そして、戦いを制止する役割は元セレディアの目付け役の老人がすることになった。


「禁止は貫通魔法のみか、いくら何でも互いに危なすぎないか?」

「フフッ、そんなこと考えてる余裕はすぐに無くなるよ」


 ダメだ。

 セレディアには安全第一という考えがまるでない。

 訓練中に事故が起きても「事故は起きても仕方ないよね」くらいの感覚で喋ってる感じがする。


 そんなやりとりも束の間、互いに位置に付き戦闘開始の合図が出される。


「戦闘開始!」


 目付け役の老人が戦闘開始の合図を出すと、俺はすぐさま魔法を発射する。

 一方のセレディアはすぐには動かず俺の動きを伺い迎撃態勢を取る。


 セレディアは物理的な痛みを、傷を負いながら戦い続けることがこの戦いの意義だなんて言ってたが、わざわざ痛い思いをする趣味はない。

 だから一瞬で終わらす。

 勝てば文句など無いだろう。


 俺は高さ2m*横5mもの範囲に魔法弾を一斉展開し、セレディアに向けて発射する。

 一斉展開することにエネルギーを使ったため、弾速は然程早くないが避けられる隙間などない。

 これはゲームの世界ならば画面全体範囲攻撃といってもいいだろう。

 威力はそこそこレベルだが痺れや痒みなどの追加効果が付与される。

 あまり傷つけずに勝つつもりならそのほうが良い。


「ふ~ん、いかにも実戦経験が無い人が考え付く戦い方だね」


 しかし、セレディアはそう言うと俺の展開した魔法弾幕の壁を軽々と飛び越え俺に向けてそのままドロップキックをかましてくる。

 その速度は速く瞬く間に顔面へと両足が迫ってくる。


「ごふっ……」


 そのまま俺は転倒をして敗北が決まった。

 これで終わりだ。

 そう思った。


 だが……


「がはっ、ぐぅっ、がぁっ」


 左肩、右脇腹、右腕。

 セレディアは俺の身体に馬乗りになった後、立て続けに俺の身体にナイフを突き刺す。


「お、おいやりすぎだろ」

「止めなくていいのかよ」


 補助機関会員達もセレディアの容赦ない攻撃に動揺していた。


「痛みに耐えてるだけじゃなくて反撃してきてよ」

「ぐぅっ、ごぉっ」


 左太もも、左腕。

 意図的に急所を外しながらも次々と刺しては抜いてを繰り返し攻撃を手を緩めない。

 リプサリスが回復支援をしてくれていることから、一度刺された位置も次第に治癒していくがそれ以上の速さでセレディアは次々と痛めつけるように攻撃を繰り返す。


 刺せば即死する急所や意識を失う部位を意図的に避けて嬲り続ける。

 訓練の一環と言っておきながら躊躇わずに次々と殺しに来るがごとく猛攻を仕掛けてくるのは暗殺者として腕と知識に対する自信の現われか。


「ごぶっ」


 顔面や心臓付近には拳を入れてくる。


「ねぇ、ファーシルまだー? そろそろ次のフェイズに移りたいんだけど?」


 そう言いながらもセレディアは攻撃の手を止めない。

 もう一方的に攻撃されて30秒は経っただろうか?

 戦いにおける30秒、ましてや一方的に攻撃されてる30秒というのは長時間なんてものじゃない。


 なんとか態勢を立て直さなければ……

 全身血塗れになりながらも俺は片腕を上げ俺の身体に馬乗りになり居座るセレディアを振り払おうとする。


「だ~め!」

「ぐっ」


 上げた腕をナイフ2本分突き刺されセレディアに触れることすらできない。

 セレディアに動きを予期されぬまま反撃する術は無いのか?


 なんとか身体を起こさねば……

 そう考えていると俺は首のあたりに動かせる何かがあることに気づく。

 俺は何を動かしてるかわからないまま、その何かをセレディアにぶつける。


「うわっ」

「えっ、なに……」


 俺は動かした何かをセレディアにぶつけた瞬間宙を舞うような錯覚を起こすが、何らかの衝撃で動きが止まったのはセレディアも同じだった。


 この感覚、エディが身体を乗っ取るために何かしてきた時の感覚と同じだ。

 つまり、俺もその気になれば相手の身体を乗っ取れるかもしれないわけだ。


「はははっ」


 俺は軽く笑い動きの止まった一瞬の隙にセレディアを突き飛ばす。


 こんな面白い力に気づけたというのにこのままやられてたまるか。

 なんとか期待に応えなければ、状況を悪くしないために、そんな意識で戦いに臨んだが、その時とは比べ物にならないほど戦意が沸きあがる。

 やはり俺は「〇〇しなければならない」という義務感ではなく、「〇〇したい」という欲求でしかモチベーションの上がらない人間なんだと改めて実感する。

 そう、命が危機を感じても尚。


 それから突き飛ばしたセレディアの動きを止めるために粘着魔法を放ちセレディアを地面に貼り付ける。


「むぐっ……」


 得体の知れない何かに頼った上でようやく僅かながらの反撃は出来た。

 それからなんとか俺は立ち上がり、体に突き刺さったままのナイフを一本セレディアに向けて投げつける。

 急所は意図的に外したが、それでも十分なダメージとなるだろう。


 だが、投げつけたナイフはセレディアに重症を与えるどころか肌に触れることすらなく地面に落ちた。

 そうだ、セレディアにはグランルーンの防護魔法が掛けられていた。

 並みの攻撃では傷つけることすらできずに弾かれる。

 その後、粘着魔法は効果は時間切れとなり、セレディアもすぐに立ち上がる。


「これだけ全身血塗れなのに、まだ殺しちゃうかもしれないなんて考える余裕があるんだ?」

「余裕なわけあるか」


 余裕からじゃない。

 仮に殺してしまった場合の恐怖からだ。


「ふ~ん?」


 だが、セレディアにはそんな意図が伝わないのか挑発するような態度を見せる。


「まっ、アタシに傷一つ付けられないままじゃいつまで経っても終わらないよ?」


 まずい。

 猛攻を凌ぎ、動きを抑える。

 そんな守りの戦いを続けていたら、こいつはいつまでも戦いをやめる気がない。

 ならば、俺はその戦いで負う痛みをこいつに理解させてやる。


 だが、セレディアは俺と違い全く消耗していない。

 まずは何度も何度もダメージを与え続け消耗させてやらねばな。


 俺は最初に放った大規模展開魔法を再びセレディアに向けて放つ。

 すると最初のときと同じようにセレディアは飛び上がった。


 だが最初とは違う!


「掛かったな!」

「えっ?」


 俺は展開した大規模展開魔法を鞭状に変形させ、飛び上がったセレディアを叩き伏せる。

 飛び上がる行為はその瞬間の回避動作として効果的だが、飛び上がってから着地するまでにできる動作は限定的となる。


 だから素早い身のこなしで何を打っても回避しそうなセレディアにはまず意図的に飛び上がらせ出来る動作を限定的にしてから攻撃の狙いを定める。

 こういった手段が有効打になると判断したのだ。


 セレディアは俺の放った鞭上の打撃魔法により背中から勢いよく叩きつけられ、顔面から地面に打ち付けられる。

 だが、こいつがこの程度のダメージで満足するわけがない。


 続けて氷柱を発生させるように地面に伏したセレディアに向けて魔法を放ち続けた。

 するとこちらの攻撃はグランルーンの防護魔法からかだいぶ軽減されてしまったが、何本かはセレディアの体に届き掠り傷程度のダメージを与えることには成功する。


 グランルーンの防護魔法は鞭状にした魔法エネルギーには全く反応しなかったにも関わらず、氷柱魔法には強めに動作したと思うとグランルーンの魔法は近接攻撃、もしくは打撃攻撃への防護作用が無いと見るべきか。


 セレディアが殺す気が来なよと俺を挑発する理由がこの時なんとなく分かった気がする。

 致命傷になりうる遠距離魔法は防護魔法によって弾かれると実感があるんだ。

 一方で俺はリプサリスの回復支援を受け続けていればどこまで傷つきながら戦えるか、どこまで無茶できるかなんて考えてなかった。

 言わばチームプレイが出来ていなかった。

 これが実戦経験の差か。


 追撃行為が掠り傷程度のダメージにしかならなかったセレディアはまたすぐに立ち上がる。


「中々面白いこと考えるじゃん、けど詰めが甘かったかな~」


 セレディアはジャケットの内側に備えてるナイフを2本取り出すと2本まとめて俺に向けて投げつける。


「なぁっ」


 なんとか片方は回避したものの片方は脇腹を抉るほどに突き刺さる。

 セレディアは俺の動きが鈍ったことを確認すると、一気に距離を詰め刺さったナイフをより深く突き刺した。


「がぁっ……」


 今まで以上に大量出血したことが視界を落とさずとも分かった。

 さらにセレディアは攻撃手段を打撃に切り替え、出血が止まらぬ場所を集中攻撃してくる。


「ぐぶっ、がっ、あぁぁ……」


 ひたすら攻撃を受け続けた俺はそれから先、何が起きたのか分からない。

 痛みすら感じなくなった。

 せっかく面白い力に気づけたというのに死んだのだろうか?

 まだ生きているのなら意識を失い倒れたのだろう。


 一度は反撃に転じ、手応えのある攻撃を一度は与えることはできたもののそれが精一杯だった。

 戦いの結果は完敗だ。

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