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異世界開拓戦記~幻影政治と叛逆の翼~  作者: ファイアス
異世界の秩序に翻弄されながら築く始まりの一歩
2/97

2話:ご都合主義の幻影ハーレム

前話の修正点(修正点は修正し次第随時追加します)

・主人公の本名:大神光→叛神光 に変更しました。

理由は現実にそれなりにいるであろう名前を避けようと判断したため

・エピソードタイトルの冒頭に「1話:」を追加しました

・あらすじ文章を大幅に変更しました。

理由はエピソード1話ごとに付ける仕様と勘違いしていたため

※こちらはこのエピソード投稿後の変更であるため次のエピソードにも同じ表記をする予定です。


 危険人物判定された経緯をセレディアとリプサリスに説明してから推定一時間ほど……

 今日は数日前に召喚された場所から少し離れた比較的開けた場所にきている。

 開拓エリアはイルシオン王国の領内ならば俺自身が好きに決めていいらしいが幾つかの制約がある。

 もっとも制約といっても既に人が住んでいるところを襲撃して開拓するような山賊まがいの悪事を働くななどの常識的な内容だ。

 しかし、DIYを趣味にしているような人ならば一人でもすぐに取り掛かれるのかもしれないが、俺はノコギリ一本握ったことすら無い人間であり、開拓と言ってもどこから手をつけるべきなのかといった状態だ。


 とはいえ、このまま戸惑い続けても埒が明かないのでまずは今後の開拓指針を決める為にも、皆に一度技術確認の旨で指示を出すことにした。


「まず各自で木材、石材などを集めて簡単な犬小屋を建てて欲しい。 木材の分解は各自でできると思うが、石材の分解が困難な場合は俺かグランルーンが魔法で分解するからその時は声を掛けて欲しい。 製作時間は推定3時間程度とする。 尚、完成させてほしいわけではなく、技術確認を趣旨とするので完成を目的とはせず焦らずにやってほしい」


 俺は指示を発する。

 しかし、きちんと反応を示したのは数人で、半分くらいは雑な態度だったり、中には全く動かない者もいる。

 困惑しているのか、ただやる気がないのか、舐められてるのか、原因はよくわからない。


「セレディア…… この状況は俺の指示に問題があったか?」

「う~ん…… さすがに釘も工具もなしで犬小屋を作れはハードルが高かったんじゃない?」

「は!? それすら誰も持ってないの!? 指揮するのは俺の役目、とはいえ突然訳も分からないまま任命された挙句に誰も何も準備してないことすら伝えられないまま始めろって無茶苦茶過ぎないか?」

「だってよグランルーン」

「……俺は監視及び護衛、後はイルシオン王国の利と相反しない範囲でお前に協力しろとしか言われてない」


 数日前に話しかけられたときにもなんとなく感じていたが、グランルーンの人柄は国に忠誠を誓った騎士というよりはまるでロボットのようにまるで自分の考えが無いだけのようだ。

 圧倒的な戦闘力を有してると思われる相手が自らの能力、立場を鼻に掛けることもなく右も左も分からない俺の言葉に素直に従ってくれるのは有り難いがどうやらそれ以上の期待もできないらしい。


「まあでもさ、100人以上いたら適当なのが十数人はいるなんて普通じゃない?」

「100人以上……? どう見ても俺とお前達も含めて全員で20名前後しかいないんだが」

「え、ちょ、ちょっと待って…… ちょっとこっち来て」

「ん、いきなりどうしたんだ?」


 セレディアに引っ張られるようにして、先ほどいた場所から少し離れた物陰へと距離を取らされる。


「ねぇ、ファーシルって()()()()()なの?」

「どういう意味だ? 幽霊なんかが見えると思ってるほうがよっぽど変わり者だと思うんだが」

「あーそっか…… 召喚地点だと幻影の発生はしないみたいだし、見えない人の確認なんてされないもんね」


 セレディアが言うにはチキュウから召喚された者の大半はイデア人には見えてない自分にとって都合の良い幻影が見えており、特に好みのタイプの異性からチヤホヤされているという感覚らしい。

 だからチキュウ人が自分達に向かって何らかの命令を出すこと自体が稀であり、先ほど指示を出してもまるで聞こえてないかのようだったイデア人十数名はそもそも自分に対して発信された言葉と思ってない可能性が高い、とのことらしい。


「リプサリスのことは見えてるが、あいつも幻影なのか?」

「いやいや、リプサリスちゃんは本物の女の子だよ! あ、もちろんアタシもね」


 リプサリスに与えられた役目というのはご都合主義を見せる幻影の特徴と類似している。


「ならリプサリスは見えない人間に対する保険なのか?」

「保険っていうか本命? まあアタシもよく分からないんだけどさ、リプサリスちゃんはファーシルにとっての本命になって欲しい相手として選定されたって感じ」

「可愛くて良い子に見えるが…いやまあリプサリスのことは本物とだけ分かればいいか」


 正直結婚相手に推進するには幼過ぎると思うが、俺が、もしくはチキュウ人全体がロリコンだと思われてるのだろうか?

 まあそれはどうでもいい話である。


 気にすべきは偽りのハーレムと、その中にいる本物。

 それらを危険人物扱いされた俺に与える理由。

 加えて開拓させる気がない環境下で与えられた開拓指令。

 全員が幻影、そしてイデアそのものも幻影だというなら大掛かりなテーマパークとも認識できたが、そういうものとも違うだろう。


 セレディアからは色々と気になることを聞きたいものだが……


「ところで俺をあの場から遠ざけたのは何でだ?」

「だってファーシルが始末対象になる可能性あると思ってさ…… 危険人物判定が出てた上に幻影で浮かれることも無くておまけに雑な引き継ぎで苛立ってるでしょ」

「また何かやらかして今度こそ始末対象になる可能性が高いってことか」

「うんうんそうだよ。 それにそうなったらアタシは久々のチキュウ人監視護衛の仕事が飛んじゃうんだよ。 危険人物手当てまであるの勿体ないじゃん」

「……」


 理想や夢を与える幻影と結婚候補の用意、一方でチキュウ人には標準として何らかの得るらしい能力の確認と秘密主義。

 そこから導き出される答え。

 イルシオンのチキュウ人召喚プログラムの国家目標は……


「そういえば俺がパワーをボロボロにしたとき後方にいた奴の一人が随分と満足そうに微笑んでたがそういうことか。チキュウ人の戦力が欲しいんだな」

「え、何に気づいたの?」

「チキュウ人にイデア人の結婚相手を準備して、イルシオンを居場所として認識させる。 そして異能力を持ったチキュウ人がイルシオンを居場所と認識させれば多種多様な国防戦力を得られる。 違うか?」

「おー、さっすが危険人物!」

「たださすがにこの開拓をさせる意味までは検討も付かない。 侵略者に対抗するために前線になる土地を開拓させてそこで盾になってもらうという意図ならともかく、まともに開拓できない前提の準備で指揮官をさせるというのはな……」


「もうそこまで理解したならこの開拓のことも伝えるけどさ。 ファーシルが思ってる通り国側は最初からきちんと開拓してもらうつもりはないよ。 わざわざ開拓作業に挑戦させる目的は異世界に来て理想的な扱いを体験していながら、上手く人を指揮して何かを成し遂げることが全くできなかったっていう挫折感を与えて一人のイルシオン人として生きる妥協を自分の意思で決めてもらうため。 チキュウ人って冒険者のリーダーや軍師に夢見る人が多いんだけど、そんな才能なんてないってことを叩きつける為の開拓命令ってわけ」

「はっはははっ…… どこまでも用意周到なものだな……」


 異世界転生ものの小説や漫画が増えたことでそれらに多く描かれる理想像まできちんと把握している。

 さらにはその体験ができる可能性まで与えて最後に挫折を与えて妥協させる、か。


「イルシオンのトップはチキュウ人なんだな?」

「いや、王様はイデア人だよ。 でも、チキュウ人の入れ知恵があるのは間違いないと思う」

「そうか」


 置かれた状況に対する謎が全て解消された今から考えることはこれからどう振る舞うかだ。

 一番簡単で安全な方法は国の思惑通りにリプサリスと一緒になることだが、狡猾な国の思い通りになって捨て駒にされるのだけは御免だ。


「そういえばイルシオンの敵って誰というかどこなんだ?」

「サグラードっていう西の大国だね。 あ、一応言っておくけどサグラードに亡命しようってのは無しだよ。 その選択はイデア人でも始末対象だし、その選択をするならアタシも敵に回るから」

「あ、ああ分かった」


 セレディアは国に忠誠を尽くすようなタイプの人間でないが敵国サグラードを敵として見做す意思は明確にあるようだ。


 一通り気になることを聞き終えた俺はセレディアと共に皆のいた場所まで戻った。

 そして戻ると指示した作業に対して稚拙ながらなんとか形にしようとしている一人の少女に目がいった。

 俺は彼女の元に近づき声を掛けると不思議そうな反応をしたがすぐに状況を理解し……


「ふふっ、ファーシルさんは見えない人なんですね」

「!?」

「ああ、大丈夫です。 お父さんやお母さんには言いませんので」

「あ、ああ…」


 今度は俺が慌ててセレディアを少し離れた場所に連れていく。

 先ほど話した少女にすぐに見えない人であると気づかれたことを伝えると、見えてるはずの幻影が見えてない挙動は察しの良い人ならすぐに分かるらしい。

 だから下手に誤魔化し隠し通そうとするのではなく気づいた相手とどう接するか考えろとのことだった。

 ただ、幸いなことに見えない人であることを知られるとまずい可能性の高いグランルーンと先ほど話した少女イラの父親であるチキュウ人開拓補助機関幹部のオウボーンは不自然な挙動にかなり鈍感らしい。


「チキュウ人開拓補助機関って何だ?」

「建て前上は開拓支援集団なんだけど、実際は有能なチキュウ人や騙しやすいチキュウ人を相手取って上手く立ち回ろうって集団かな」

「どこの世界にでもあるんだな」

「まあ、敵か味方かっていうよりはビジネスの相手って思ったほうがいいかな」


 グランルーン、セレディア、リプサリスの3人以外はチキュウ人開拓補助機関幹部のオウボーンの管理の元で動いてるらしく国から給与が与えられてるわけではないらしい。

 また補助機関の会員人数がやたらと多いのはオウボーンが自らチキュウ人と交渉することはなく団体の参加に参加費を必要としておきながら交渉行動に厳しいルール制定、制限、監視をしているだけで交渉には個々で動かないといけないらしい。

 そうしたことからオウボーンはかなり嫌われてるようだ。

 そしてそれだけ嫌われながらもその役割が成立するだけの権力が裏で糸を引いてる構図だ。


 それから何も開拓らしいことはできないまま、時間は過ぎ去り日が落ちて解散する頃合いだ。


「ところで昨日までは召喚された初日に渡された金で宿に泊まれていたんだが、今日以降の宿代はどこからか支給されるのか?」

「いや、無いよ」

「さっきの話からしてなんとなくそんな気はしてたがやっぱりか…」


 定住、兵隊化させるため、と考えたら一人で宿に泊まり続けるよりは派遣された子と同じ家に住まわせるように手引きして距離を縮める。

 最初からそういう意図なのだろう。


「それなら今日は私の自宅で泊まっていきます?」


 タイミングを見計らったかのようにリプサリスが声を掛けてきたか、と思ったらその声を掛けてきたのは意外な人物だった。


「イラ?」

「はい、既に色々聞いているみたいですが、補助機関会員の皆さんとの関わり方なんかは私から話そうかなと思って」

「両親に何か言われないのか?」

「問題ありません。 それと不安ならセレディアさんにも同行してもらって大丈夫です」

「セレディアは大丈夫か? 最初だけで良いんだが」

「うん、それに室外にいるときはアタシかグランルーンが監視役としてついてく必要あるし」

「ああ、そうだったな。 あとグランルーンには明日以降の準備を、リプサリスには予定だけ決めて伝えておこう」


 俺は二人に明日以降の予定を告げ、イラ、セレディアと共にオウボーン宅へと向かった。

エピソードタイトル詐欺ではないですが、そこだけ見て読み始めたら第一印象と中身がだいぶ違ったという印象にはなったかもしれません。

今回様々な設定と一気にドバッと出したため、まるでもう終盤になるの?と見えるかもしれませんがまだまだ続く予定です。

この先も良ければブックマークとご愛読よろしくお願いします。

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