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少し長いですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。

 毎晩、輝夜が治療の打ち合わせをしている時は、俺が不安にならいように絵里と晃が部屋を訪ねてくれていた。

 そんな幼馴染の心遣いが嬉しい。


「こうちゃん。そんなに嫌だったの」

「まあ、そうなのかな。自覚はしてなかったけど」

「絵里、嫌に決まってるだろ。集団でレイプされそうな視線の中で戦ったんだぞ。それにあんな股間にキスをされたら俺でも倒れるわ。けどよ。俺は安心したんだ。こいつ流されやすくて箍が外れた人間にならないかと心配してたからな。今回倒れたのも、ちゃんと外れないように踏みとどまった証拠だろ。だから安心した」


 そうか。

 今までは嫌な事でも多少は目を瞑ってきたし、それって実は多くのストレスを抱えてきたことなんだな。やっぱり、周りに流されてばかりだといけないってことだよな。


「晃、ありがとう。なんかすっきりした」

「まあ、俺はお前の親友だからな。まあ、あれだ。悩んだり困った事があれば聞いてやるから。いつでも遠慮しないで話してくれ」

「なに晃くんテレてんのぉ。晃くんのこうちゃん好きに少し嫉妬しそうだよぉ」


 絵里が晃の横腹を肘でつついていた。

 本当にこの二人は昔から仲が良い。


「でもさあ。こうちゃん正直クラスの女子のこと、そんなに関心ないでしょ。本当にそんなので婚約者にしていて良いの」

「まあ、こいつ。クラスの女子の半分以上は名前すら覚えてないと思うしな」


 それはそうなんだけど。でも国から勧められた訳だし断りづらいというか。それにクラスの中で誰かだけを選んで、クラスの雰囲気を壊したくないってのもある。このクラスのこと大好きだしな。


「おれ、まだ高一だぞ。これから知って好きになればいいだけだろ。それに彼女達から離れていくこともあるだろうし、なるようになるさ」

「はぁー。それが流されてんだっつうの」

「こうちゃんらしいけどね。それに彼女達もこうちゃんに好かれるように、いま頑張って努力してるよ。もうあんなイタズラはしないとか言ってね」


 イタズラ? あああ、水着剥ぎ取り事件ね。

 まあ、ある意味。追いかけっこしてるみたいで楽しかったけどね。みんな、笑ってたし。


「ところで観たか」

「何をだよ」

「輝夜ちゃんが、ミズハさん達をボコボコにしたやつ」

「なんだそれ。全然知らないんだけど」

「こうちゃんが倒れて、輝夜ちゃん激怒してね。上下関係をはっきり教えてやるって、一方的にボコったの」

「まあ、これでも観ろ。かなり強くてビビるぞ」


 晃が投影してくれた映像を観る。

 そこには完膚なきまで叩きのめす輝夜の姿がそこにあった。しかも八島に教えながら。


「なあ、ミズハ死んだよな。それになんで八島を」

「一度に二つも聞くな、ボケ。確かにミズハさんは殺された。すぐに生き返ったけどな。で、八島は。マスターの目指している戦闘スタイルを見せてあげるって連れてかれたんだよ。オーケー」

「そ、そうなの。まあ、確かにあれはそうだけど。おれ、あんなに動けないよ」


 あんなアニメみたいに自在に宙を舞えるかっての。


「本当に強いよね。あの輝夜ちゃんがねぇー」

「セオたんのお兄さんと、その恋人を俺の目の前で一方的にボコったしな。なんも不思議じゃないだろ。輝夜が強いのは今更だよ。あ、それでか! ミズハ達が急に変わったのは」

「気づくの遅えよ」


 晃に肩をチョップされた。

 最近その手刀ツッコミは流行ってるのだろうか。

 平手の方が痛くないから、その流行り早く終わらないかな。


 それから少しとめどない話をして解散した。

 しばらくして輝夜が部屋に戻ってきた。


「マスター。今夜は疲れたからブレスレットの中に戻っていいですか」

「構わないよ」

「じゃあ戻りますね。おやすみなさい」


 輝夜は俺のおでこにキスをして戻っていった。

 そしてゴロンとぼんやりと寝転んでるとドアがノックされ、りっちゃんだったので部屋に招き入れた。


 ベッドに腰掛けて、りっちゃんに隣に座るように言うと戸惑っていた。


「隣に座って大丈夫なの。嫌じゃないの」

「大丈夫だよ。りっちゃんだし。それに晃と話してて気づいたんだ。だから大丈夫」

「そう。なるべく触れないように離れて座るね」


 なんともまた、りっちゃんらしい心遣いだ。

 厳しいけど。なんだかんだで優しい。


「洸太はこれからどうしたいのかなって。無鉄砲に心の治療するよりも、それを先に聞きたいなって思ったの。だってそれが治療に一番必要なことだと思うから」


 ここら辺がゆい姉とは正反対なんだよな。

 ゆい姉なら私に任せておけば安心といってリードしていくタイプ。

 りっちゃんは、俺の希望や意思を聞いてからリードしていくタイプ。

 まあ、ある意味でバランスよく、俺は教育されてきたと思う。きっちり輝夜のフォローがあってこそだけど。


「うーん。どうしたいって言われても悩むな。ひとつあるけど絶対に言えないし」

「ひとつあるなら言いなさいよ」

「怒らない」

「ええ、怒らないから言って」


 本当に言っていいのだろうか。

 そもそも、それを言ったところで俺に可能なのだろうか。

 まあ、でも思い切って話してみよう。


「あのね、俺の中でゆい姉の次に結ばれるのはりっちゃんだって思ってた。でも全然そんな機会がなくて。だから、キスしたい。りっちゃんと結ばれたい。りっちゃんの事が大好きだから」


 嬉しそうにりっちゃんは笑った。


「私も大好きだよ。君と出会った時から」


 そう言って、りっちゃんがキスをしてくれた。

 不思議と怖くないし、逃げ出したいとも思わなかった。

 俺を優しく包むように抱きしめてくれる。


「こわくない」

「うん、こわくない」

「そう。なら、エッチしよっか。でも、私は初めてだから優しくしてね」

「うん。優しくする」


 抱きしめ合い、キスをしながら横になる。

 彼女の服を丁寧に脱がしていく。


「あれ、りっちゃんまた履き忘れた」

「ばかっ!」


 今回は痛い平手ではなく、優しいキスだった。

 丁寧に時間を掛けて身も心も一つに重なる。

 あまり痛くなかったようで、彼女から積極的にリードされた。


「私の方が歳上だからね。洸太を最高に気持ち良くさせてあげる」


 ふざけるように、そう微笑んで話す。

 でも少し耳の先が赤いのは黙っておこう。

 俺のために恥ずかしくてもしてくれてるのだから。


 その日は何度も朝まで肌を重ね合った。

 優しく、時には激しく、二人が疲れて眠るまで。



「洸太。朝だよ。っていうか、挿れながら寝ないで。先に寝た私が言えたことではないけど。もう、寝ぼけて動かさないで。だ、ダメっ。そこはダメッーー!」


 部屋のドアが開いて朝食を待って来てくれたゆい姉が固まる。


「あ、ゆい姉。おはよう」


 りっちゃんに頬を何度か叩かれて目を覚まし、ゆい姉に朝の挨拶をした。

 けれど、ゆい姉からは何の反応もない。

 というか、焦点の合ってなそうな瞳で、一人で何かぶつぶつ言っている。

 心配になり、ゆい姉に全裸のまま近づく。


「寝取られた。輝夜ちゃんではなく律に寝取られた。寝取られた。輝夜ちゃん……」


 その二つのフレーズをずっと繰り返している。

 危ないので朝食のトレーを受け取りテーブルに置いた。

 そしてゆい姉の顔の前で手をかざして左右に振るが、目に反応がない。


 お姫様を起こすのはこれだ。と思い、ゆい姉にキスをした。

 まだ正気に戻らないので舌を入れてみると、ゆい姉の瞳に光が戻る。

 ガバッと肩を掴まれて、そのままベッドまで押されて押し倒される。


「洸太。私の愛を受取りなさい」


 横にりっちゃんが居るのに、俺の腰の上で跨るとゆい姉自ら手で導く。


「律。これが私と洸太の愛のカタチよ」


 暴走気味だが、それでも構わない。

 ゆい姉がそれで嬉しがったり、悦んでもらえるならそれが俺にとっても一番だ。


 久しぶりに三人で手を重ねる。

 そしてあの頃とは違って肌も。

 三人でそうして一日を過ごした。


 本当にとても懐かしい。

 そして大切だった時間が戻ってきたような気がした。

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