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 別荘の応接の間に皇帝陛下とその夫。そして皇太子とゆい姉の俺を含めた五名で会談に挑む。

 一方、相手はあの赤髪の女性と白髪の初老の女性。そして彼女達の後ろに舞さん達と試合した女性達が並んで立っていた。


「まずは彼を紹介します。私の娘で次期皇帝になるセオリツヒメの夫なるハヤミコウタさんです」


 しっかり咲耶の夫だと釘を刺す。中々に強かな挨拶だった。


「我が王よ。私は海女族族長のミズハ。そして隣に座るのが先代の族長ハノメ様だ」


 明るいところで間近で見るとかなりの美人さんだった。しかも昨夜とは雰囲気がガラリと変わって、とても落ち着いていて、清らかな水のような印象を受ける。面差しも繊細で、秘められた美しさを儚く思わせる、そんな人形みたいに整った顔をしている。


「あの、出会って早々失礼かもしれませんが髪を染めてるのですか。地毛は水色とか」


 たぶん戦闘で剥げたのか、髪の所々が赤色ではなく水色だったので気になって訊ねてみた。


「ええ、本来はその色ですが、掟に従い族長の証でもある赤に染めています」


 いろんな風習があるんだな。

 俺としては水色の方が彼女に似合うと思うけど、掟ならしょうがないか。


「そうでしたか。つまらない事を訊ねてすみませんでした。それでミズハさん達は、俺をどうしたいのですか」


 単刀直入に訊いてみる。俺に難しい駆け引きなんてできないし。


「我らの王として我が部族を率いて頂きたい。ただそれだけです」

「それだけなの」

「はい。それだけです」


 俺は腕を組んで考える。

 普段戦闘でしか使わない脳みそをフル回転した。


「駄目だ。よく分からない」


 つい口に出してしまい慌てて訂正した。


「あ、今のは気にしないで。えっと、俺はあなた達と一緒に住めませんよ。地球人だし。それにこの星に来たらセオリツヒメと一緒に暮らすので無理だと思います。大体、ゆい姉にも負けてましたよね。なら、ゆい姉が王様でもいいんじゃないですか」


 ぶん投げた。丸ごとゆい姉にぶん投げる。

 きっとゆい姉なら、この困難から俺を救ってくれる。はずだ。


「あああ、洸太。私じゃ王様になれないのよね。ごめんね」


 えっ、そうなの。なんで……


「メ、女性では族長になれても、王にはなれません。それに昨夜の試合は誇りを懸けての戦いではありません。あくまでもお遊びの範疇です」


 いま、メスって言い掛けなかった?

 まあ、いいけど。


「王よ。私らは長年王を求めて過ごしてきた。皇国と敵対してきたのも、単に私らを屈服させるオスがいなかっただけのこと。私らは攻められたから追い返してきただけに過ぎん。もっとも、かなり昔に海底神殿まで追い立てられたのも事実だが、私らは決して皇国に負けた訳ではない」


 ママさんを見るとうなづいたので、どうやら先代様の言葉は真実のようだ。


「それに王の事情は既にこちらも把握している。故に、一緒に暮らして導いて欲しいとは端から望んではいない。ただ、掟に従い。王の身を護る盾として我らを使って欲しいだけなのだ。もっとも、集落に訪れて皆と交流し、集落に活気をだして欲しいとは思っている。そして未来を示して欲しいとも」


 先代様の言う通りだとすると、そんなに難しいことじゃないよな。


「待て待て、コウタ。勘違いするな。彼女達の交流とは性交渉のことだ!」

「チッ、余計なことを。これだから泣き虫小僧は駄目なのだ」


 あぶなっ。大人ってこわいな、マジで。


「まあ、気が向いたら気に入った者を抱けばいいだけのこと。無理強いはしないさ。けれど、王の盾。王の剣として、隣にいるミズハと、その精鋭四名は王の側で仕えさせて欲しい。なぁに、娶れとは言わぬ。お役目を果たさせてもらえるだけでいい」


 悩む。とても悩む。

 でも、五名くらいなら地球に連れていっても問題ないか。でもなぁ、悩むなぁ。


「あ、そうだ。私らの王への忠誠の証として、贈り物があった。すっかり忘れておったわ」


 先代様が後ろを振り返り、目配せすると一人の女性が頭を下げて応接の間から出ていくと、しばらくして戻ってきた。


 十名ほどの男女が猿轡をされ縛られたままで、彼女に引きずられて部屋に入ってくる。


「ヤダガラズ!」


 その人達の顔をみて、パパさんは立ち上がり叫んだ。


「そう。残りの幹部全員だ。王よ、是非ご自身の手柄として受け取っては頂けないか」


「一日で全員捕まえたのか」

「やかましい、口を挟むな。泣き虫小僧如きが」


 パパさんは先代様と過去に何かあったのだろうか。大人しく席に座り直した。

 そんなパパさんを、ママさんは背中を撫でて慰めていた。


「あの、なんでこの人達を」

「王を殺そうと以前から我らに近づいてきてな。いずれ王の障害となると思い、昨晩捕まえてきた」

「はぁ。よく分かりませんが、ありがとうございます」


 なにこのフットワークの軽さ。

 マジでヤバくないか。


 そして目の前で、縄で縛られた人達が乱暴に連れていかれる。そんな状況に頭が痛くなる。


「では王よ。今後とも我が部族をよろしく頼む」

「待って! 条件がある。この条件を守るのならば王になってもいい」

「よかろう。話してみよ」


 もはや、先代様の方が王様みたいなんですけど。


「まず、男性を攫わない。二つ、皇国のルールに従う。三つ、俺の言うことは必ず守ること。その三つを破らずに守れるのならば、俺はあなた達の王になろう」


 先代様は一度隣のミズハに確認を取る。そして彼女はうなづいた。

 そして二人は席を立ち、床に片膝をついて頭を下げた。


「その誓い、命に懸けて必ず守ろう。我らが王よ、我が部族を末永くお頼み申し上げます」


 不意を突かれた。いきなり傅かれるものだから激しく動揺する。


「あ、うん。今後ともよろしくね」

「はっ!」



「後はミズハに任せたぞ。新しい土地の事もな」


 そう言って先代様は立ち上がる。

 そして去り際に先代様に呼ばれて側に行くと、先代様は俺にセクハラをして笑顔で帰っていった。


 あの人たち、マジでやばくね。

 そう思ったのも束の間。


 ミズハさんは俺に歩み寄ると、片膝をついてズボンの上から股間にキスをした。


 その突然の行為に驚き固まっていると、後ろの四人も次々と同じようにキスをしていく。

 驚き過ぎて、そのまま後ろに倒れてそのまま気を失った。


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