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55

 ここに居てもどうしようもないので別荘に戻り、ママさん達のいる居間に向かうと、そこで晃が縄で縛られソファに座らされていた。


「おまえ、何したの」

「絵里に縛られた」


 隣にいる絵里を見るとにこやかに答える。


「攫われたら危ないでしょ」


 なるほど、そういうことか。


「だな」


 そう短く答えてママさん達の側にいくと、ホッとした表情を向けられた。

 どうやらとても心配させてしまったようだ。


「色々とすみません」

「ううん。あなたが無事ならそれでいいの」


 ママさんに優しく抱きしめられ、自分の行いを反省した。

 ママさんが俺から離れてから、改めてこの事態について話を聞く。


「この近くに彼女たち海女族の町をつくる事には同意してもらったわ。周辺の町や村を襲わないという条件付きで。ただ」


「ただ?」


「我々は彼に従うと言って譲らないの」

「何をですか」

「コウタさんが我々の王だと。彼が望むなら皇国の民になってやると」

「さすがにコウタの意見を無視して決められないからな。その場ではコウタに確認すると言って協議を一度打ち切った」


 はい? 王様? 

 それはおいしいものなのですか?


「そんなに明白(あからさま)な顔をするな。嫌なのは重々承知なのだが、こればっかりは私達ではどうする事もできない」


 アマテラスを始めとした、その場にいる全員がうなづいた。


「元はといえば僕がモービルを暴走させてしまったからです。僕が直接彼女達と話し合います」


 みんな無念そうな顔をしているし、そう言うしかなかった。

 話し合いは明日行うことにしてこの場を解散した。

 一人部屋でぼんやりと外を眺めていると、ドアがノックされた。

 アマテラス。いや、凛花だったのでドアを開けて部屋に入れた。


「どうしたの」


 二人でベッドに腰掛けて、そう彼女に訊ねた。


「海女族のことで。もし、彼女達が地球に付いてくるような事になっても、私がきちんと手配しますので安心して交渉してください。それに、今回如何なることがあっても、私が全力でサポートします。ですから、周りのことは気にせずに洸太さん御自身が満足する交渉をなさってください」


 まっすぐに瞳を向けられて、それが彼女の真意だと知った。


「わかった。そうするよ」

「はい。それでは私は失礼しますね」


 去ろうとした彼女の手を取る。

 それに驚いた彼女がこちらを見た。


「どうしましたか」

「凛花に一緒にいて欲しい」


 その一言に彼女の頬が赤く染まる。


「あの、そんなつもりはなくて。ちゃんとした下着でも、」


 俺は立ち上がって、彼女の唇を奪って言葉を止める。そして長いキスをした。


 それからはもう何も言葉は要らなかった。

 愛してる、の言葉以外は。

 そして互いに愛を確かめ合った。



 朝、二人で裸で寝ていると廊下が騒がしい。

 なにか言い争いをしている。

 そんな声に目を覚ました凛花と二人でクスリと笑う。

 起き上がる前にくちづけを交わし、服を着て二人で廊下に出た。


「アマテラス、抜け駆けとは卑怯だぞ!」


 やはり騒ぎの元は舞さんだった。

 そんな舞さんをゆい姉と八島が止めていた。


「アマテラスではありません。凛花です。私は速水凛花ですので、今後はお間違えないようお願いします」


 勝利宣言をするように凛花が珍しく人を煽った。というか、初めて見たような気がする。

 そんな凛花に、ゆい姉と八島は祝福の握手を交わし、「良かったね」などと言って一緒に喜んでいた。

 一方の舞さんは廊下で項垂れ、崩れ落ちている。


「とうとう私だけが行き遅れに……」


 舞さんは泣いていた。


「舞さん。行き遅れにはまだ早いですよ。まだ、24歳なんですから」

「洸太、5よ。25歳」


 ゆい姉が余計な訂正を入れる。


「成人しての処女は、私と加賀だけになってしまった。隊の奴等もみな卒業しているというのに……」


 重症だった。

 しかも、後から駆けつけた加賀さんがそれを聞いて顔を真っ赤にして立ち尽くす。


「月日。年って残酷よね」


 ゆい姉の悪辣な言葉は加賀さんにも致命傷を負わせた。

 加賀さんも舞さんと同じように廊下に沈む。

 その様子に根が優しい八島が二人を必死に慰めていた。


 あれ、八島って下の名前なんていうんだ。

 知らないって、やばいよね。とってもまずくないか。

 うん、シレッと後で輝夜に訊いてみよう。

 あくまでも知ってる体で。


「洸太。私を」

「私達を」

「「 抱いてくれ! 」」


 舞さんと加賀さんが俺の足にしがみついて叫んだ。その様に狂気を感じて若干ひく。


「洸太。あまりにも可哀想だから早く抱いてあげなよ。二人も婚約者な訳だしさ。それに二人なら魔王プレイも悦ぶと思うし、ねっ」

「俺が喜ばないよ! なんで魔王プレイが前提なんだよ!」


 八島と凛花にあきれた目を向けられる。


「二人とも誤解しないで欲しい。これはゆい姉の趣味なんだ。俺は付き合わされてるだけだからね!」


 そんな魂の叫びは二人には届かない。

 ますます白い目で見られた。

 

 風評被害過ぎるだろ、こんなの!

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