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 咲耶に強烈なチョップを脳天にくらい、頭を抑えてうずくまる。

 なんとか痛みを堪えて顔をあげた。


「なんで居場所が」

「それっ」


 美緒がすかさず俺の着けているチョーカーを指差す。

 うちに戻った時に美緒から手渡された黒革のチョーカーで、美緒の瞳と同じ薄紫の石が嵌められた物だ。


「コウタはすぐに誰かに攫われるからね。その人用の首輪に追跡機能をつけたの」

「おい。言い方。それじゃあまるでこれは、ペットの首輪みたいじゃないか」

「あまり変わらないでしょ」


 文句の一つや二つ言いたいのを堪えて、取り敢えず仲間に引き入れる。


「で、二人はどっちに賭ける。ちなみに俺は舞さんだ」

「そうね。私も舞さんにしようかな」


 ちょろいお子様の美緒は簡単に仲間になった。

 しかし、もう一人が手強い。


「ちなみにセオたんはどっちだと思う」


 無邪気な高校生男子のふりをして笑顔で訊ねる。


「 ……気持ち悪い」


 その一言が刃となって胸に深く突き刺さる。

 胸を抑えて、俺は倒れた。

 必死に震える手を咲耶に伸ばす。


「セオリツヒメ、お前もか……」


 そして死んだ。ふりをした。


「マスター。いま輝夜はとても恥ずかしいです」

「あああ、このシーン、映画で観たわ。ちょっと違うけど」


 今は美緒の無邪気さだけが救いだ。

 今度、欲しがっていたレアドロアイテムをあげよう。

 とにかくここはこのまま死んだふり一択だ。


「もう怒らないから起きて」


 咲耶に体を起こされて起きあがる。


「でもアマテラスも一緒に遊ばないで。ちゃんと彼を諌めてくれないと」

「この状況でのこのこ前に出るのは悪手です。却って状況が悪化して収集がつかなくなります」


 そう言ってアマテラスは楽しそうに試合をしている集団に目を向ける。


「確かにそうね」


 そう話し、彼女は海女(うみめ)族の女戦士の所にコインをそっと置いた。


「これで相手に三人賭けた事になる。舞さんが勝てば美緒と二人で三万円を山分けだな」

「うん。ガチャ回せるね」


 俺達は少し遠く離れた試合を息を呑みながら、手に汗を握り観戦した。


 結果、舞さんがなんとか勝利した。

 そして、続く加賀さんは惜しくも負けて、次のりっちゃんも負けた。

 最後に八島が登場すると、クラスメイト達から大歓声が沸き起こった。


「二勝二敗。これで勝敗が決まる」

「ええ。これは思っていたよりも熱い戦いね」


 俺は全額八島にベットした。

 他は全員、相手に賭ける。

 こっちも白熱した戦いになってきた。


「どうやら魔法は禁止みたいだし、八島ちゃんには分が悪いんじゃない」

「魔法が使えなくても、あいつは強いよ」


 美緒にそう答えた。

 八島はずっと俺の背中を追いかけてきた。

 俺の戦い方を真似て。そして弛まぬ努力でその技を昇華させてきた。


「かなりの努力家ですからね。個人的には勝っては欲しいのですが。輝夜は相手に賭けます」


 八島は常とは違い、短刀を二本ではなく。右手に一本、逆手で構える。


「うん、良い判断だ。俺もそうする」


 相手の大剣を何度も交わしながら、わざと服だけを切り裂く。とはいっても、相手の服は革のビキニみたいな物なのだけれど。

 でも、たまに蹴りや拳も当ててるし、かなり良い感じで戦えてると思う。


「コウタ並のゴキブリのような素早い動きだわ」

「美緒。例え方を少しは考えろ」


「あれって、学校の制服をイメージしてるのですよね」

「ああ、前はパーカーを腰に巻いてたけどね」

「コウタは、ああいう服装が好みなのですね」


 咲耶からの心が痛くなる指摘に思わず咽せる。


「マスターのギャル好きは生粋ですから。あ、でも黒ギャルはダメですよ。そこは間違えないでください。かなりドン引きされますからね」


 一々俺の好みをみんなにバラすな!

 馬鹿なのか、おまえは!


 試合に目を戻すと、振り下ろされる大剣を躱し損ねて、八島の緩く巻いたギャルリボンが切れると、悲鳴に似た声が一斉にクラスメイト達からあがる。


 相手はそのまま体を回すと大剣を彼女目掛けて突き刺した。

 そして八島は宙に高く跳ねて、クルッと空中で前転するとそのまま相手の大剣に乗った。それを足場にして間合いを詰めると相手の顎を蹴り上げた。


「ムーンサルトキックだと……」


 その目を見張るような一連の華麗な技で八島は勝利した。

 その華麗な技に興奮したクラスメイト達が一斉に両手を広げて八島に群がり抱きついていく。


「ますますマスターに似てきましたね」

「いや。さすがにあそこでムーンサルトキックは繰り出せないよ。俺には真似出来ないな」


 最後は向かい合って整列して互いに礼をして終わった。

 ゆい姉にしてはすごくまともだ。

 常識の範疇で試合が終わったことに安堵する。


「最近の八島ちゃん、余裕を感じるよね。やっぱり大人の階段を登るとそうなるのかな」


 美緒の感想なのに、なぜか俺にジト目が向けられる。


 まあ、たしかに少しは変わったかなぁとは思うけれど。そんな目で俺を見なくてもよくない。

 目を逸らすように、海女族の人達とパーティを始めたゆい姉達を眺める。


 拳を交わして友情を育むって、どこかの少年誌みたいな展開だな。


「ま、ゆい姉らしいか」


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