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 この圧迫感はなんだろう。

 こんなに広い浜辺なのに、なぜこんなに密集する必要があるのだろう。

 いつからうちのクラスメイト達はこんなに距離が近くなったのか。どうしても分からない。

 そんな中で八島だけが少し離れた場所で、お姉さん組のゆい姉たちと笑いながら楽しそうに食事をしている。

 また、咲耶たち三姉妹は遠慮しているようでママさん達と落ち着いた雰囲気の中、にこやかに食事をしていた。

 そんな時、咲耶が席を離れてどこかへ行くのが見えたので、トイレに行くふりをして後を追った。


 そして日本でいうところのキャンピングカー仕様のモービルに入っていくところで、彼女の名を呼んで引き止めた。


「どうしたの」

「元気がないみたいだったから」

「そう。ここで立ち話もなんだから、取り敢えず中に入りましょう」


 モービルの中に入り、適当に座る。

 もちろん、中からはしっかりロックを掛けて。


「本当にごめんね」


 いきなりの謝罪に少し驚く。


「俺は気にしてないんだけどね。それより、あんな別れ方をしたから、ずっと咲耶の事を考えてた。おかげで今日は寝不足だよ。あははは」


 咲耶が俺の隣に座り、肩を寄せて顔を肩に乗せてきた。


「もう、絶対に会えないと思ってた。すごく後悔して。すごくコウタに申し訳なくて」


 小さく震える声で、咲耶が話す。

 彼女が話し終わるまで、ただ黙って聞いていた。


「咲耶。愛してるよ。とても君のことが大切で、大事に思ってる。僕にだって間違うことや、失敗して咲耶に迷惑を掛ける時がくると思う。だから、もう謝らなくていいんだ。間違ったと思ったら直せばいいだけなんだから」


 彼女を抱きしめた。

 彼女の罪悪感が少しでも消えるように。

 そして咲耶への想いが伝わるように。



「あの、お姉様こんなとこに居てしまってごめんなさい!」


 突然、そんな事を言われて声のした方に目をやると、小さな美緒が、さらに小さくなって頭を下げていた。

 どうやらお手洗いでここに来ていたようだ。


 そんなハプニングに少し吹き出してから二人で大笑いした。


「なにらしくもなく気にしてんのさ」

「するわよ!」

「でも良かったよ。美緒に変なところを見られなくてさ」

「みんなで使ってるんだから、こんなとこでしないで。やっぱりコウタはオークだったのね」


 美緒からそんな事を言われると、さすがに傷つく。


「私は本来の用事をしてから戻るわ。先に二人で戻ってて」


 咲耶にそう言われて美緒と二人で手を繋ぎながら戻った。

 なんとなく海を眺めていると、遠くに明かりが見える。不思議に思って美緒に訊ねる。


「え、ママ達の護衛の人達じゃないの」

「いや、でも凄い勢いでこちらに向かってきてないか。ほら、明かりがどんどん大きくなってきたし」


『おおおおおーーー!』


 後ろの別荘の方から女性達の叫ぶ声が響く。

 そこで警報が鳴った。


「え、気づくの遅くない」

「騒ぎに紛れて批判するのはやめて」

「取り敢えず、セオたんの所に行こう」


 俺は美緒の手を引きながら、咲耶のいるモービルに走って向かった。

 途中、美緒の足が遅いので抱えて走る。

 どうにか二人で美緒とモービルに乗り込んだ。


「セオたん!」

「ここよ!」


 彼女は操縦席で通信をしていたようで、また通信を再開した。


「目の前に現れるまで気づかないなんて。とにかく援軍が来るまで防衛に徹しなさい」


 通信を終えた昨夜がこちらに向かってくる。

 何が起きているのかを彼女に訊ねた。


海女(うみめ)族の襲撃よ。本拠地を破壊された報復でしょうね」


 その話を聞いて急に胸が痛くなる。


「あのお姉様。海女族って」

「もう、お兄様はあなたに何を教えていたの。本当にあの人にはあきれるわ。いい、美緒。彼女達はこの星で唯一、皇国に従わない部族なの。女部族で、力こそ全ての戦闘部族よ。数こそ多くはないけれど、皆死など恐れない勇敢な女戦士だけの部族だから覚えておきなさい」


 なんかアマゾネスみたいだな。

 なら、男なんかは攫われるじゃないか。


「あああ、思い出しました。見た目が良くて。ボッキュンボン。良い男を見つけると女は殺して男を攫っていく。って言ってました」


 その美緒の話に、俺と咲耶は頭を抱えた。


「もう少し教え方ってのが」

「少しどころじゃないだろ。おもいっきり変だからね」


 そんな俺達の会話を聞いて、美緒は頬を赤らめてうつむいた。


「大丈夫よ、美緒。これからは私達がちゃんと教えるわ」


 鬨の声が近くなってきたのが分かる。

 既に戦闘は開始されたようだ。


「で、どうするの」

「まずはお父様達と合流しましょう」


 咲耶が操縦席に座ろうとした時に、こちらに振り向いた。


「操縦したいの」


 そんなに羨ましそうな顔をしていたのだろうか。

 だが、それでも構わない。


「してもいいの」

「出来るの」

「たぶん。ワカたんの見てたから出来ると思う」

「壊さないでね」


 俺は操縦席に座りモービルを起動する。

 大丈夫。少し車と違うだけだ。

 アクセル用のフットペダルを少しづつ踏み込んで発進した。


「な、敏感過ぎるよ!」


 少ししか踏んでいないのにギュンと加速していく。


「コウタ、落ち着いて。だ、大丈夫だから」

「ちょ、ちょっと、どこに行くのよ!」

「俺に聞かないで!」


 暴走というのは、この事なのだろう。

 まったくゆうことを聞かない。

 もの凄い速度で戦闘場所につっこむ。


「あああ、こんなので捕まりたくないよ!」

「ブレーキ、ブレーキよ!」

「踏んでるよ!」

「それアクセルだから!」


 戦場を二つに割って、その真ん中でモービルは止まった。

 その異常な事態に敵味方ともに固唾を飲む。


 腹を決めた俺は。一人モービルから降りた。



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