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 寝ついたのが朝方近くだったというのに早朝から輝夜に叩き起こされた。

 広くなった居間には、ゆい姉を始めとした家の住人が揃っていた。

 何事。と思いながらも、言われるがまま前列中央のゆい姉の隣に座った。


 輝夜が一度居間を離れ、また戻ってくると咲耶とその家族全員が現れる。すると左右後ろから殺気に似た気配が放たれた。

 俺は振り返り、両手でまあまあ、とハンドサインを送る。


 俺の目の前で咲耶ファミリーが横一列に並び正座をすると息を合わせて土下座して謝った。


「この度は誠に申し訳ない。二度とこのような真似はしない。どうか我々を許して欲しい」

「申し訳ありません」


 パパさんが代表してまず謝罪し、後からママさん達も謝罪した。

 そして、二泊置いて。


「うん、許す」

「結菜さん、何を!」


 アマテラスが即否定する。


「こんな風に謝られたら許すしかないでしょ。それに洸太もそうでしょ」

「うん。俺も許すよ。たぶん悪気はなかったと思うから」

「洸太さん、また同じことが起こった、」

「待って、アマテラス。その心配はしなくていいと思うんだ。ねぇアマテラス。駄目かな」

「あの、まあ、ダメではありませんけど……」

「なら、決まりね。みんなもそれでいいよね」

「私達は速水くんがそう決めたのなら反対しないよ」

「ええ。ゆいも許したのに私達がこれ以上言うことはありません」


 クラスメイト達や加賀さんも俺に同意してくれたお蔭で、あの居心地悪い気配はすっかり消えて、いつもの陽気な雰囲気に戻った。

 ただ輝夜はアマテラスに少し睨まれて彼女から顔を逸らしていた。ま、輝夜なら心配ないだろう。


 それから咲耶達はみんなと親睦を深めた結果。

 何故かまたあの避暑地に全員で訪れていた。

 どうしてだろう。

 まったく理解できない。


「きゃあーー! 蒼い海!」

「白い砂浜!」

「澄み渡る空! さいっこうーー!」


 白い砂浜に突然咲いた。色とりどりのかわいい花々は砂浜を駆けまわり、蒼い海に飛び込んでいく。

 これも一つの絵画ではないだろうか。


「おまえ、本当に良かったのか」

「ああ」

「ま、成婚パレードとやらが終わるまでは、俺達がちゃんと守ってやるから安心しろ」


 晃が憎たらしい笑顔で俺の背中を叩いた。


「はぁああ、なに言ってんの。学園は、任務はどうすんだよ。こんなに抜けてよ!」

「大丈夫。それに山本司令からの命令だしな」

「どうせあれだろ。舞さんが無理やりだろ」

「んにゃ。こんな状況になったら、どうせ気が散って使いものにならんだろ。って追い出された」


 その話を聞いて溜め息を吐く。

 山本司令、心労とかで倒れなければいいけど。


「ところで。なんで家主の俺より良い環境で、離れなんか勝手に建てて絵里と住んでんだよ。ふざけんなよ、マジで」

「あれは俺達の意思じゃない。舞さんが風紀が乱れるとかいって、俺達は追い出されただけだ」

「人んちでやりまくるなよ。猿なのかお前らは」

「はぁああ。俺達が猿なら、お前はオークだろうが」


 その言葉で闘いのゴングが鳴った。


 俺が晃を背負い投げするも、晃は器用にくるっと体を回し足から着地した。

 そして晃が素早く踏み込んで大外刈りを決める。背中から砂浜に叩きつけられ、一瞬息が止まる。けれど両脚を上にあげて脚を開き、そのまま勢いをつけて回転し起き上がる。そして晃のケツに渾身の回し蹴りを放つと、そのままもんどり打って晃は倒れた。


「思い知ったか、正義の鉄拳を!」


 片腕でガッツポーズを粋に決めると、拍手と歓声が沸き起こる。


「でもあれキックだよね」

「いいの。細かいことは」


 少し離れた場所でいつものように晃は絵里に介抱されている。


「あまり恋人に心配掛けるなよ、晃」


 俺はギャラリーの中を通り、勝利の祝福を受ける。そして何故か水着を半分脱がされ、必死に水着を手で押さえながら海の中に逃げ込んだ。

 襲いかかるクラスの女子から全力で泳いで逃げる。けれど、いつの間にか周りを囲まれていた。


「もう逃げられないよ。観念して、速水くん」


 山城が勝ち誇ったように勝利宣告をした。

 その時だった。あの恐怖の人面魚が現れたのは。


 やつは山城の背後から飛び跳ねて彼女に襲いかかった。そこに一筋の赤い光が人面魚を貫くと海を割って突き進み、そして消えた。

 その余波で山城の後ろから高波が押し寄せ。彼女とその周辺にいたクラスメイト達を飲み込んだ。


 迫り来る高波に。

 俺は空へ飛んだ。あっさり飛んでかわした。そして上から山城達を探し、一人一人抱き抱えて救助していった。


 ただ、みんな上の水着を無くしていた。


 これはきっと天罰なのだろう。

 俺の水着を剥ぎ取ろうとした。彼女達への。

 輝夜にそっと目配せすると、彼女は小さく親指を立てた。


「またコレクションが増えてしまったぜ」


 彼女達にバスタオルを掛けながら俺は呟いた。


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