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42.5 断話

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 楽しく過ごしていたバカンス中にあの愚かなお兄様が多くの兵を率いて現れた。

 もっとも、あの倍の兵士がいたとしても私一人で退ける自信はある。

 けれど、それはさせてはもらえなかった。

 お母様も、お父様もそれを許さなかった。

 お兄様達が現れてすぐに私達に手出しはするなと厳命するくらいに。


 ただ、お兄様のことは抜きとして、彼等ヤダガラズをバカンス中におびき寄せたのは確かだ。

 お父様は言っていた。

 初代の頃から続く悪しき組織だと。

 闇に潜み。皇帝の導き手を自称し、己が利の為だけに腐っていった秘密結社だと。


 奴等のせいで皇位継承権争いは代を重ねるごとに激しくなり多くの血が流れるようになった。

 初代皇帝の血を引く優秀な王は欲しいが、優秀な皇族が増えることは奴等にとって好ましくない。

 故に、皇位継承権を懸けて争うそれは、地球を舞台にした狩を称して行われる皇族同士の戦争に奴等は仕立てあげた。

 本当に悍ましいことで許されざる所業だ。


 おそらく、お母様達は皇位に就てからずっと奴等の存在を探り、追ってきたのだろう。

 結果、今回奴等は見事にあぶり出され、そしてお母様達の罠に落ちて壊滅した。


「あれが死ぬのは構わないけれど、死に方くらいは考えて欲しかったわ。せめてお母様達を悲しませないくらいには」


 しかし何も気付けなかったな。

 お父様は若くして知勇ともに優れた稀代の将として名を馳せただけあって、私なんかに今回の件を悟られるような事もなく見事にやってのけた。

 まったくお父様には敵う気がしない。


 今回の事で、私がまだまだなのだと実感した。



 そんな敬愛するお母様達はコウタと輝夜ちゃんを実の子のように連れまわし。特別可愛がっている。

 それとユイナも。まあ、彼女に関してはその理由に心当たりがあるし分かる。


「でもアニメやマンガとかの日本の特殊な文化にハマりすぎなんだよなぁ。最近は輝夜ちゃんと頻繁に日本に買い物に出掛けてるし。美緒もコウタ曰く、立派なオタクだって話してたし。なんか色々と威厳が薄れてきたような気もするわ」


 私はほんの少しだけため息を吐いてみる。

 そしてテーブルの上に置かれた小さな化粧箱を軽く指で弾く。


「渡しにくくなったわ。こんなことならもう少し早く渡しておけば良かった」


 想い人への指輪。

 お父様が作り、お母様へ贈った願いの指輪。

 指輪に愛しい人へ会いたいと願うと、その人のもとへ会いにいける素敵な指輪。

 でもそれだけではない。

 指輪を身に付けている限り、どんなに傷つけられても回復する。治癒の指輪でもある。


「お父様がお母様をどれだけ愛していたのかが偲ばれる。ほんと、素敵」


(どうして結菜先輩に譲ったのですか。あなたでも良かったはずです)

(そうね。そうかもしれない。私はね。ユイナを一番に思ってる洸太に恋をしたの。だから彼女から彼を奪おうなんて思わない。彼の全てを受け入れて、私は彼を愛したのだから)


 昨夜、ユイナを送り出した後にリツコに問われて返した言葉。

 それは嘘じゃない。


「けれど。ほんの少しだけ、妬いてしまうわ。もっとも、彼に抱かれればそんな事なんかすぐに忘れて消えてしまうのだけれど」


 困った感情ね。

 もう一度、指で化粧箱を軽く弾いて、私は微笑んだ。


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