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「今日は闘技大会に向けて市街戦の訓練を行う」


 そう、舞さんから朝のホームルームで唐突に告げられ、何故か舞さんの横には絵里と晃がいた。


「あの、私達支援科なんですけど」

「力尽くで拉致るのは良くないと思います」


 不貞腐れ気味に絵里と晃が舞さんに抗議した。


「今日は洸太、絵里、晃の三人を相手にしてもらう。こいつらを倒したら素敵なご褒美をくれてやるから気合い入れろ」


 絵里と晃の抗議を舞さんは華麗にスルーした。

 ご褒美と聴いてやる気マックスのクラスメイト達と対象的に俺と絵里や晃はどんよりしていた。



 八王子野外訓練場。

 ちゃんとした建物もある市街戦を想定した大規模訓練場だ。そこの端の一端に絵里と晃の三人で円陣を組むように地べたに座っていた。


「めんどくせえ。せっかく支援科に進んだのに、これじゃ前と何も変わらん」

「まあまあ。これで実技の単位が取れると思えば美味しいじゃん。適当にみんなをボコってやればいいんだよ」


 さすが絵里。勝つ気満々、余裕綽々だ。


「いつも通り、後方は絵里でアタッカーは晃な」

「いつも通りも何も、それしかないだろ」


 グレた晃が俺にまで噛みついてくる。


「ねえ。全滅させればいいんでしょ。それだけじゃ面白くないからスコアを競って賭けない?」

「いいけど、何を賭ける」

「ふふふふふ、ねずみの国のパスポートと食事代でどう」


 それ、お前らがデートしたいだけだよね。

 しかも俺、邪魔者だよね。


「ゆい姉も誘えばいいじゃん」

「確かに」


 そういやあ、最近まともなデートしてないような気がする。


「よし、のった。撃墜数で勝負な」

「オッケー。私と晃、対こうちゃんね」

「おい、二人で一組はずるいだろ」

「私と晃はアタッカーと後方支援だよ。アタッカー支援プラス遊撃のこうちゃんが一番有利じゃん。ハンデだよ、ハンデ」


 確かに。そう言われたら納得するしかないよな。


「じゃあ作戦はいつも通り。フルスロット、スピード勝負でいくぞ」

「お、こうちゃんやる気だねぇ」

「どうした熱でもあんのか」


 晃が俺の額に手を当てた。


「ねぇよ! っうか、早く帰って寝たい」

「なんだ寝不足か」

「騒がしくてさ。マジまいる」


 あああ、と同情の目で二人に見られた。

 そんな時、開始の合図か鳴り響いた。


 ブレスレットに魔力を込めてフォームチェンジする。

 黒の外套のフードを目深く被り、腰には一本の日本刀。そして右手に魔導アサルトライフル。

 それが俺のバトルメイガスとしての姿だった。


 絵里は袖の無い黒のシャツの裾をおへその上で結び、下は黒のホットパンツ。手には魔導ライフル、腰の後ろに二本の短刀を装備している。

 そんな俺と絵里とは対象的に晃は白一色。中世の騎士のような姿で自分の背丈程ある魔導大剣を地面に突き刺していた。


「絵里、相変わらずエッチだな。胸というかブラ丸見えなんだけど」

「見せブラだからいいのっ! わざとなの!」

「晃、絵里はこう言ってるが恋人としてはどうなんだ」

「まあ、水着みたいなもんだろ。それに、かわいいから文句はない」


 なに訓練中に惚気てんの。後ろから撃つよ。


「っていうか、なんでお前知ってんの!」

「あん。俺は鈍感系モブキャラじゃねえんだ。見てればわかるっつうの!」


 晃と軽くじゃれあっているとツーマンセルを組んだクラスメイト達に上空から砲撃される。幸い砲撃は外れ、瞬時にこの場を離脱する為に散会した。

 ここら辺の流れは以心伝心、阿吽の呼吸ってやつで別々に三方向に別れて一旦クラスメイト達の前から消え、後で予め決めていた地点で合流した。


「思ったよりより早く攻撃されたな」

「そりゃあ成長するでしょ」

「だが、想定内」

「彼女達の陣地にまわって背後からハントといこうか」


 三人で目を合わせ不敵に笑う。


「さあ、狩の時間だ」


 認識阻害の結界を展開し、低く速く地面を飛ぶ。

 大きく回り込みクラスメイト達の陣地を一旦目指す。途中、遭遇したクラスメイト達を音も出さずに静かに近づき瞬殺、じゃない撃墜する。


「こうちゃん。魔力探知で確認すると、残りは四組ってとこかな」

「では近い順に」


 建物の陰から前方を警戒する三人組を発見し、晃が背後から音を立てずに忍び寄り、三人の首筋を狙って手刀一撃で倒す。


「ん、歯応えないな」

「まあ、障害物ステージの電撃戦なら無敵だし」


 だよなぁ。

 俺達の移動速度と認識阻害は完璧だからなぁ。

 有利ステージ過ぎて申し訳なくなる。


「お、絵里と同じタイプのエッチぃ八島ちゃん発見」


 絵里の黒のシャツが、白のシャツに変わり、デニムのホットパンツ姿の八島ちゃん。

 彼女の戦闘スタイルは俺と同じで遊撃タイプ。ただし、彼女は両手で短刀を持って戦う近接戦を得意としている。また、アーツとして魔法を使う器用なタイプでもある。


「絵里は山城。晃は朧。で、俺は八島な」

「洸太って八島と戦うの好きだよな」

「笑顔で戦ってるもんね」


 そりゃあ楽しいに決まってる。

 一瞬でも気を抜けば斬られてしまう。そんなスリルがとても良い。


 まずは挨拶がてら彼女の後ろから両手で目を隠した。


「だあーれだ」

「は、はやみくん!」


 一瞬で両手を払われ、彼女はクルッとこちらを振り返る。それと同時に短刀が水平に振るわれ、俺の首を掠める。


「ちょっ、それ真剣だよね。反則!」

「あ、ごめん。つい」

「ついじゃないよっ。俺じゃなきゃ首飛んでたからね!」

「だって、急に触られたらびっくりするじゃん!」


 そうこう言いながら彼女が両手で持った短刀が連続で振り下ろされる。時には袈裟斬り、時には水平に。そのパターンは順不同で、しかも時折り魔法で足を絡め止め、本当に厄介極まりない。


 しかも、未だ真剣だ。


「もう、なんで当たらないの!」

「当たったら死ぬだろが!」


 くっ、まだ剣速があがるのかよ。


「いいよ! 八島さんやっちゃえっ!」

「当たる、当たるよ! 八島さんがんばれぇー!」


 ふと周りを見るといつの間にかクラス全員が俺達の戦いを観ていた。

 しかも全員八島を応援している……


「ふふふ、ふぁっあははははは! いいぞ、こい八島。お前の全力を見せてみろ!」


 つい、悪のロールプレイをしてしまった。


「私は、私は必ず貴方の心を取り戻す!」


 もはや彼女の振るう剣は目で追えない。

 五感を研ぎ澄ませて紙一重で躱すしかなかった。

 こんなのを続けてたらいつか必ず斬られる。


 上下に振るった際に出来る、ほんの僅かな隙。

 右と左が上下に離れ、ぽっかりと胸が開いた刹那の時、踏み込んで間合いを詰める。


「楽しかったよ、八島」


 彼女の鳩尾に下から拳を築き上げた。

 一度彼女は呻き、ゆっくりと体が前に倒れる。そんな彼女を俺は優しく抱き止めた。


「勝負あり! 勝者、速水!」


 わぁああー! と、一斉に歓声があがるが、いつの間に個人戦になったのだろうと疑問を覚えた。


 ぐったり俺の腕の中で気絶している八島の顔を一度眺めて深く息を吐く。


「まあいいっか」


 俺は八島を横に抱いて、みんなのもとに戻った。


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