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5.5 断話

 なぜこうなったのだろう。

 気づけばクラス全員で速水くんの家で下宿する事になっていた。

 そして今も速水くんちの居間でみんなと談笑している。

 まさかこんな事になるとはこれっぽっちも思ってはいなかった。


 私は三笠夢。特殊防衛第二学園、通称北校の中等部から外部入試で本校に入学した。いわゆる外部生というやつだ。

 バトルメイガスになるのならば本校出身の方が何かと有利で、私達分校組が優秀者を集めた本校を目指すのは割と当たり前というか当然の流れだ。

 けれど私は少し違った。

 私は中等部一年の頃に観た、全国闘技大会中等部の部で一年生ながら圧倒的強さで優勝した速水くんに憧れて彼と一緒に学びたいと思い、それまではなんとなく流されるように学んでいたものを本腰を入れて本気で取り組むようになった。


 一年生ながら他を寄せ付けない圧倒的な強さで優勝した速水くん、間宮さん、伊良湖くんの3人組はあの大会以降、闘技会に出場することはなかった。

 速水くん達が大会に出ないと知ったあの頃の私は、かなり落胆してしばらくはご飯も喉を通らなかったのを覚えている。


 そんな私と似たような思いで特殊防衛第三学園通称南校から外部入学した大和さんとは入試会場で隣だったという事もあって、それ以来仲良くしてもらっている。また、速水くん推し友でもある。


 だから、速水くんと同じ五組になった時は天にも昇る勢いで大喜びした。大喜びしたのだけれど、今までとは何もかも違った校風というか、クラスの空気には正直驚き戸惑った。

 とても普通。というか、砕けに砕けた雰囲気に規律を重んじ厳しく学んできた私はかなり動揺した。それは大和さんも同じだった。

 このクラスで女子のリーダー的な存在は八島さんだ。金髪ポニーテール、短いスカートにシャツの上のボタンを外したギャル風の彼女だが、授業や訓練などは真面目に取り組んでいる。まあ、このクラス全員がそうなのではあるけれど。


『初等部からクラスメイトがずっと同じなのはウチらだけだよ。スゴイっしょ。でもねぇ、その為にみんな限界まで努力してるんだけど。これ、内緒ね』


 速水くんと同じクラスでいる為に全員が彼に置いてかれないように全力で努力していたらしい。

 だから、見かけとは違い実力者揃いというか、同世代の中では桁外れの強さを誇っているのだろう。

 正直、私の自信も彼女達に簡単に折られた。


『真面目過ぎ。教科書通りで動きが読みやすい。それに何より、周りが見えてなさすぎ』


 今まで一人で研鑽してきたせいか、連携を通じた状況判断が出来てはいなかった。それは大和さんも同じで、ただ彼女は元気すぎて前に出過ぎだと何度も怒られていた。

 同い年のクラスメイトからの駄目出しは結構堪える。私のプライドなど今や無きに等しい。


『個の力は十分にある。後は使い方だね』


 嬉しいことに今日、速水くんにそう褒められた。

 私なんかでもちゃんと見てくれているんだって浮かれていると、他の女子達の目の色が変わり、速水くんに褒められようとアピールしていた。

 ああ、こうやってみんなは伸びていったんだって納得した。ギスギスしていない良いライバル関係。とても素敵だと思った。


「夢っちって、クールビューティーのお面を被った、ただのコミショー堅物だよね」

「な、なに、いきなり」


 おっとりお姉さん風の山城さんが、そういきなり話しかけてきた。


「うちのお父さんみたいだなって。私のお父さんも東北岩手の出身だからさ。なんか親近感が、ねっ」

「あ、そういうこと、ですか」

「もう気づいてるとは思うけど、このクラスで遠慮してたら乗り遅れるだけだからね。ふぁいと」


 そう言って笑顔で私の肩を叩いて去っていった。

 そんなに私は浮いてるのだろうか。少し心配になり周りを見ると、大和さんは五人の女子と大笑いしながら話してるし、唯一外部生でもなく本校の他のクラスから来た最上さんも八島さん達と見た目と態度のギャップがありながらも談笑している。


 あ、ぼっちでいたの私だけだ……


「三笠さん、ちょっと手伝ってくれるかな」


 ちょっと落ち込んでいた私に速水くんが話しかけてきてくれた。


「うん。なにをすればいいの」

「ごはん。夕飯の準備というか、料理だね」


 やったあ。料理は大得意だ。

 私は名誉挽回ではないけれど、気合を入れて彼にアピールすることにした。


「任せて。料理は得意なの」

「助かる。期待してるよ」


 私はウキウキで速水くんと並んで台所に向かった。


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