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「これはいい! あやつ宣言通り落としたぞ!」


 え、あれってコウタなんだよね。

 かわいいってレベルじゃないわ!


「お父様、そんなにはしゃがないでください」

「ヤガミヒメ。あんなのを見て、冷静でいられる方がどうかしてるぞ! しかも娘の夫が女の子になるとはな!」


 まあ、言いたい事や聞きたい事は山ほどあるけれど、今はこの貴重な光景を心に焼き付けよう。


「セオリツヒメ。あの星の常識はどうなっているのですか。生身で宇宙空間で戦闘とか。性別が変わってしまうとか。色々とおかしくはありませんか」

「あの星というより、彼の国ですね。今度あの国のカルチャーを知れるものを取寄せますので、ご自身で確認してみてください」

「わかりました。その時は確認しておきましょう」


 上品な光沢のある黒のドレスシャツに、同じように光沢のある黒の短いスカート。それにアクセントとして白いフリルがついている。シャツは襟に、スカートは裾に。はあぁーー、まずい。今すぐにでも襲い掛かりたい!


「ヤガミヒメ。よだれ。あなたヨダレが出てます」


 隣の妹に視線を移してみたら、口をポケッと開けて、涎を垂らしていた。本当に情けない。


「す、すみません。お姉様。でもクールでキュートでかわいくて。あんなの反則です。あああ、間近で見れるワカヒルメが羨ましいですぅ」


 まずいわ。ヤガミヒメの頭が壊れかけてる。

 ん、ワカヒルメが羨ましい……


「宇宙に上がるわ。夫をちゃんと出迎えないと」


 私が一歩踏み出すと、肩を掴まれた。


「皇太子ともあろう者が、何をするつもりだ」

「お父様。手をお離しください。私は夫を、」


 お母様が席を立ち、私の頭を軽くポンと叩いた。


「ここに居なさい。これ以上、おかしな振る舞いをするのなら、婚約を取り消しますよ」


 はい。と小さく返事をして元の位置に戻った。

 お母様のいう通りだわ。こんな様では彼が星に戻ったら、私は自滅してしまう。


「お姉様。ここはグッと我慢です。私も頑張って我慢しますから。ですから暴走して、私の婚約まで取り消されるような真似はおやめください。お願いします。二人で頑張りましょう」

「そうね。二人で我慢しましょう」


 しかし、あんなにも華麗で可憐なのに、直にこの目で見れないのがとても悔しい!

 大体、何よ。迫ってくる宇宙艦から放たれたビームを、まるで遊んでるかのようにその外円を回って避けて、逆に宇宙艦に迫って行くとか。もう、全然目が離せないじゃない!


「あの可憐な少女は一体誰なんだ」

「ええ。あの華麗な動き。戦場で踊っているようです」

「ええぇい! いいか、あの少女の戦闘記録を一切逃すことなく記録しろ!」

「了解しました。最大画像数、最高映像で記録します!」


 下がとてもやかましい。

 将軍もいい歳して何をしてるのでしょうか。


「お姉様。下にいる将軍達には、私達と輝夜ちゃんとのやり取りを聞かれてなかったみたいですね」

「あの子、ほんと抜かりないわね」


「おおお! また撃ち落としました! これで彼女の撃墜数はちょうど三十隻です!」

「素晴らしい。本当に素晴らしい戦果だ!」


 階下にいる将軍達の盛り上がりに、こちらは逆に冷静になる。


「まずいです。お姉様、とてもまずい状況です。口封じに皆、消しますか」

「駄目よ、あなたまた何おかしな事を言ってるの!」

「ですがこのままでは、コウタ様が皆に狙われてしまいます。体目当てに襲われたら、どうするんですか!」


 取り乱すヤガミヒメの傍に立ち。またもやお母様が呆れたように彼女の頭を軽く叩く。


「あなたも婚約を取り消されたいのかしら。きちんと皇女らしく振る舞いなさい。大体、あの輝夜という子が彼の側にいるのに、一体誰が危害を加えられるというの。しっかりなさい」


 そして彼女も私と同じく。はい、と小さく返事をした。そんな時、全艦隊に向けて通信される。


『私は宇宙軍元帥ワカヒルメだ。その権限により、全艦隊に向けて通達する。現在、一人の少女が敵艦隊を悉く粉砕し、敵を蹂躙している。その、可憐で華麗に、一人孤独に戦場を舞う、彼女のその姿を、その目に焼き付けろ。そして彼女の勇姿を、未来永劫忘れるな。だが、一つ覚えておけ。彼女は私が最も敬愛するセオリツヒメ皇太子殿下の夫である。そして、ヤガミヒメ皇女と私の夫でもある。よいか。夢夢忘れるな。彼女に対し不敬な念を抱いた者には苛烈な罰が待っている事を。その罪は万死に値する事を。さあ、私達三姉妹の夫の勇姿を、心に深く刻み込め! そして、彼女を讃えよ。永遠(とわ)に。そして最後に皆に命ずる。彼女と共に、敵を完膚なきまで叩きのめせ!』


 将軍達は一斉に振り返り、私達を見上げる。

 そして、両手を突き上げ、咆哮した。

 続々とワカヒルメの通達に皆が応える。

 戦場の士気が一気に上がった。


「ワカヒルメちゃんのこういうところは尊敬する。本当に機を見るのがとても上手い。しかもしっかり皆に釘を刺すところも。まったく、敵いませんわ。お姉様。この勝負、私達の完全勝利ですね」

「ええ」


 はあぁ、あの子何さらっと言ってんのよ。

 まだあなた達の事は、公式に発表してないでしょうが!

 こっちが一生懸命に婚姻理由を考えている最中に、なにしてくれるのよ!


 私は心の中で頭を抑えた。

 そしてお母様とも視線が合う。きっと、私と同じことを思っているのだろう。けれど、お父様は満足げに何度もうなづいていた。

 

 彼は敵艦隊が半数以上減ったところで、何度か危ない目にもあいながらも、なんとか無事に総旗艦セオに戻った。

 その後に彼が出ることはなかったが、ワカヒルメの指揮のもと我が艦隊は、敵艦隊を見事に殲滅した。


 まさに完勝。これ以上ない勝利だった。



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