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今夜、あと四話投稿します。

 うちは曾祖父さんの代までは旅館を家業として大正から細々と続けていた。だから、普通の家よりは大きいのかもしれない。だって、旅館だったのだから。

 大正に創業という事もあってか、建物は大正モダンな造りだ。但し、廃業した際に中をリフォームしたので、ただ個室の多い大きな家だ。まあ、あまりというか、ほとんど使用したことのない大浴場もあるのだけれど。それが今になってフル稼働している。それもこれも押しかけてきたクラスメイト達のせいだ。そのお蔭で貧乏性の俺は来月からの水道光熱費に怯えていた。


「大丈夫だよ。下宿代はかなりボッといたから」


 家計簿を眺めていた俺に、ゆい姉はそう言って笑いかけてくれた。


「それに舞先輩がみんなの通学用にマイクロバスを買ったみたいだよ。たぶん、来週くらいからそれで通えるよ」


 え、俺電車通学で構わない。というか、電車が良いんだけど。通勤ラッシュとは逆方向で空いてるし。


「あとね。洸太のベッドも私の部屋に置いておいたから安心してね」

「ありがとう、ゆい姉」


 さすがゆい姉、仕事が早い。ほんと任せて安心のゆい姉様だ。


「おい。教師の前で結婚前の男女が寝室を共にするとはどういう事だ。許さん、絶対に許さんぞ!」

「私達は婚約していますから、ほうっておいてください。それに洸太とは昔から一緒に寝てますから」


 それって小学三年生頃までの話だよね。

 なんか色々と誤解を生む言い方なんだけど。


「な、まさかお前達すでに」

「もう、みんなの前でそんな事は訊かないでくださいよ。恥ずかしい」


 煽る。なんか煽ってませんか、ゆい姉。

 それは修羅への道に続きませんか。


「きゃー! 赤城先輩、大人!」

「やっぱり赤城先輩は格がちがうよねえ。もうほんと、素敵すぎる!」

「赤城先輩、どんな感じで初めてを。やっぱ、ロマンチックな感じですか」


 居間にいたクラスメイト達がゆい姉に群がり質問攻めにしていた。その横で舞さんはやや俯き加減で肩を震わせていた。


 というか、何もしてないよね。

 まだキスしかしてないよね。いつの間に俺は大人の階段を登ったの。全然身に覚えがないよ!


「あれはとても星の綺麗な夜だったわ」


 いやいや、ここから星なんて見えないよね!

 都内で星なんて見える場所ないよね!

 なんでみんなもそんな嘘信じるの。どう聞いたっておかしいじゃないか!


「許さーん! 絶対に許さんし認めない! 洸太の童貞は私が戴く予定だったのだぞ!」

「敷島教官。それは教官の年齢的に犯罪です」

「そうだよ。教官とするなら私達の方が百倍良いよね」

「それに私達なら結婚しても歳の差がないし」


 待て待て待てえーーー!

 確かに国が認めれば複数の人と結婚できるよ。けどさ、なんで俺がそうなる仮定で話してるの。おかしいでしょ!


『マスター無駄です。この状況で口を挟めば火に油。ここは結菜様に任せましょう』


 フォログラムで投影された輝夜がそう進言した。

 その進言を受け入れるべきか悩んだが、輝夜の言う通りにする事にして、俺は静かに居間の隅へ移動した。


「まあ、私と勝負して一太刀でも入れる事ができたら、認めてあげるわ」

「やったあ! 赤城先輩から許可が出た!」

「うん、これからの訓練がんばらないと!」

「ふふふ、燃えてきたあーー!」


 おい、輝夜。本当にゆい姉に任せて大丈夫なのか。さっきより心配になってきたんだけど。


『だ、だいじょうぶ、です。たぶん』

「おい。お前のAI、ああいい加減の略じゃないよな。本当に大丈夫なんだよな!」

『ハルシネーション、です。私を創り出したマスター達もそんな事を言っていました』

「意味がわからないし、答えになってないよね!」


 突然輝夜は消えた。俺の前から逃亡したようだ。

 ちくしょー! ここからどうすればいいんだよ!


「待て赤城。それは私にも適用されるのか」

「ええ。敷島先輩にも、ですよ」

「随分と余裕だな。その余裕がいつまで続くのか楽しみだ」

「あの頃とは違いますから。私も成長してるんですよ、先輩」


 二人の静かな睨み合いに、その場に緊張が走る。心なしかゆい姉の傍にいたクラスメイト達が若干距離をとったような気もする。


 というか、煽り姫になってるよ、ゆい姉!

 二つ名、わがまま姫から煽り姫に変わっちゃうよ!


「おもしろい。ではその成長とやらを見せてもらおうか」


 二人はそう言って不敵に笑い合い、家の地下にある訓練場に向かった。


「ねえ、速水くん。大丈夫なの。地下の訓練場壊れたりしない?」

「あ、山城か。ああ、国がゆい姉の為に造ったし大丈夫じゃないかな。たぶん、だけど」

「山ちゃん。あそこ強固な魔法障壁張れるから安心して大丈夫だよ」

「うん。軍の訓練所と同じタイプだしね」


「なあ、なんで君たち家主の俺より詳しいのかな。というか、訓練場の事は秘密なのになんで知ってんだよ!」

「え、赤城先輩が自慢してたし」

「うん。連れてかれたし」

「手解きしてもらったし」

「もしかして全員?」

「全員」


 俺は頭を抱えた。

 あれだけアマテラスに注意されていたのに。ゆい姉、なんてことしてんだよ!


「あ、揺れた」

「揺れたねぇ」

「新旧エース達対決だもんね、そりゃあ激しいよね」

「観たかったけど、巻き添えくらうのは目に見えてるしね。ざんねん」


 女は愛嬌、男は度胸とは言うが、メイガスに限っては逆なのではなかろうか。


「でもさー。赤城先発もタフだよね。今日も出動してたんでしょ」

「相模湾沖だって。かなりの規模だったみたいだよ」

「でもでも、私達にお土産の干物大量に買ってきてたよね。マジウケる」


 ゆい姉、なにやってんだよ。

 また始末書書かせられるよ。


 この後、一時間近く何度も家が揺れた。

 揺れが収まり、夜の静寂さが戻っても二人は訓練場から出てくることはなかった。

 恐る恐る、みんなで中の状況を確認しにいくと、満足そうな顔をした二人が倒れている。


 はぁ、楽しそうで何よりです(現実逃避)


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