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 勤務地用の別邸で気を悪くするかもしれません。と言われたが、とんでもない。

 石造りの一階建ての屋敷だったが横に広く。そして何より白亜の石を使ったとても美しい建物だった。


 しかしなんで第二皇女もここに居るのだろうか。


「どうぞどうぞ、皆様お掛けになってください。今日はウズメ様もご一緒しましょう」


 ウズメ様? メイドさんなのに。


「いえ、私は、」

「お姉様の師でもあるウズメ様に、私達がお世話してもらう訳には。それに私の侍従も数多くここにはあります。ですから、ここではお客様としておもてなしさせてください」


 ウズメさんはあきらめたように席についた。


「コウタ様、先日はお世話になりました」

「ヤガミヒメ様。こちらこそお世話になりました」


 座りながら互いに軽く頭を下げた。


「そっか。ちい姉様は会ってるんだったね。先を越されてしまった」

「たまたま、公務でお会いしただけです。それに話し方。お姉様の前なのですよ」


 あ、素はこんな感じなんだ。見た目通りって感じだよな。


「あ、はい。それではお姉様と私達の婚姻を祝って乾杯!」


 俺とワカヒルメさんとヤガミヒメさんだけがグラスをあげた。


「あなた達の婚姻なんて聞いてませんよ」


 咲耶が二人にそう訊ねる。


「もう。お姉様。お姉様の心を射止める殿方が出来ましたら、私達もご一緒にその方と婚姻するとお約束してたではありませんか」

「そうです。だから、ちい姉様といつ私達にもご紹介して頂けるのか楽しみに待っていたのですよ」


「あなた達、それって子供の頃の話でしょ。それに二人にも恋人がいるじゃない」

「あれは勝手に付き纏われてるだけです」

「そうです。迷惑してるのです」


「それでも子供の頃の話を真に受けるなんて」

「イザナミが良くて、私達は駄目なのですか」

「ちい姉様と二人で。そのお姉様のお約束を信じて、ここまで純潔を守ってきたのに」


 二人とも涙目だ。

 咲耶との約束を守って、楽しみに過ごしてきたんだろうな。


「でも、コウタの意思も……」


 あああ、あの涙目はきつい。

 さすがの咲耶も何も言えなくなってしまったよ。

 そうだよな。仲の良い三姉妹だもんな。


「私達では駄目ですか」


 ヤガミヒメが俺に涙目を向ける。


「駄目なのですか」


 ワカヒルメが同じように涙目で。

 あんな目で見られたら断りづらい。

 それに咲耶の大事な妹達だし。


「輝夜は良いと思います。セオリツヒメ様さえ良ければの話ですが」


 え、そこは俺が良ければじゃないの、輝夜さん。


「わ、私は構わないわ。ただもう少しだけ二人でいたいというか。コウタは地球に戻りますし、その。二人だけの思い出が欲しいというか」


 咲耶がこんなに動揺して言葉を濁すのを初めてみた。

 輝夜さん。録画頼みましたよ。

 そっと輝夜に目をやると、小さく親指を立てた。


「なら、お姉様が満足された後でも構いません」

「はい。私もちい姉様と同じです」


 なんでそんなに悲痛な顔で涙目で訴えるのかな。

 こんなん絶対に断れないよ。

 そんな二人を見て、咲耶は一度大きく息を吸って吐いた。


「分かりました。お母様にも私から、」

「いえ、その必要はございません。既に了承を二人とも得ています」

「婚約のお話がでる度に、私達は前々からそうお母様にはお話していましたから」


 俺と咲耶は同時に絶句した。


「そ、そう、だったの。うん、なら問題、はないわね。ええ。わかりました」

「やりましたわ! これで一緒に、四人仲良く住めるのですね!」

「夢が叶いましたわ!」


 二人はハイタッチを何度もして喜んでいた。

 その様子に咲耶はまた絶句している。


「あの姫様。これは皇室始まって以来の珍事です。本当に宜しいのですか」


 ウズメさんがあきれ顔で咲耶に訊ねる。が、まだ彼女はフリーズしていた。


「輝夜は。セオリツヒメ様が、昔の出来事を思い出していると推測します。約束した、その日のことを」

「お前って、本当に図太い性格してるよな」

「そうでなければ。マスターにお仕えなんか出来ません。輝夜も頑張って強くなったのです」


 あら、そうですか。


「引越しの準備をしないとですね。ちい姉様!」

「ええ。色々と準備もしないと」


「姫様、しっかりなさってください!」


 ウズメさんに何度も体を揺すられるが、まだ咲耶はフリーズしたままだった。


 ここまで咲耶を追い込むとは恐るべし、だな。

 いや、二人が純で無垢だからか。

 まぁ、妹思いだからな。そうなるか。



「いや、待って! 俺の気持ちは!」

「マスター。今更です。あきらめてください」


 俺はがっくりと肩を落としかけるが、涙目でまた二人に見られて背を伸ばして微笑んでみせた。

 上手く笑えていたのかは分からないけれど。


 そして。その日の夜の咲耶は気持ちを晴らすかのように激しく乱れていた。


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