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 教室の窓越しにぼんやりと雲一つない青い空を眺める。

 昨晩は途中まで楽しかった。そう、ゆい姉ととても楽しく食事してカラオケをして、とてもとても楽しくて幸せな時間だった。

 それなのに、浮かれ気分で家に帰ると家にはパジャマ姿やジャージ姿のクラスメイト全員がいた。

 なんでそんな状況になってるのか、舞さんに訊ねると不機嫌そうにこう答えられた。


『学園で言っていただろうが。それよりも私に無断で、二人でどこに遊びに行っていたのだ!』


 舞姉改め、舞さんはとても激おこだった。

 俺とゆい姉は居間で土下座させられながら理不尽に延々と怒られていた。

 そんな俺達の周りではクラスメイト達が食事や掃除などの当番を賑やかに楽しそうに決めていた。


「意味がわからん。ゆい姉が反対しないのもそうだし、なんで俺んちが占拠されなきゃならないんだ。これじゃ寮生活と変わらない。いや、寮生活よりもプライベートがないじゃないか」


 しかも次々と部屋に襲撃かけられるし。お陰で撃退に追われて寝不足だ。

 あれだ。今夜からはゆい姉と同じ部屋で寝よう。さすがにゆい姉の部屋にまで襲ってくる度胸はないだろうからな。


「おい、速水! ちゃんと授業に集中しろ!」


 舞さんの投げた電子チョークが頭にヒットした。


「イテッ。いきなりなんですか。ちゃんと聴いてますから」

「嘘をつけ。じゃあ、今年の闘技会の概要とルールを言ってみろ」

「今年も出るつもりはありませんので興味ありま、いたっ!」


 二発目の電子チョークが初弾よりも威力を増して飛んできた。


「聴いてないではないか。それに今年からは総員二十名のチーム戦だ。だから、今年からはお前にも出場してもらうからな」


 え、いやなんですけど。


「はい、質問! 敷島教官、どう編成するんですか」

「ん、八島か。割って入るなと言いたいところだが。いい質問だ。フォーマンセルを五組だろうと、スリーマンセルとツーマンセルなどを自由に組み合わせてもオーケーだ。そこは策に合わせて柔軟に編成して構わない」

「はいはーい! 大会は市街地戦だけですか!」

「現段階ではそうだ。だが、野営戦と海上戦も検討している。想定と準備はしておけ」


 いつになく盛り上がってるけど、みんなやる気に満ち溢れてるのはなんでなの。

 いつもめんどうって、くじ引きで決めてたよね。

 ねえ、どうしたの。熱でもあるの。


「みんな、完全優勝するよ!」

「おーーー!」


 ほんと、みんなどうしたの。

 それに完全優勝ってなに?

 優勝に完全も何もないよね。


「よし。まずは学園予選一位突破を目指す。なあに、この私が指導するんだ。大船に乗ったつもりでついてこい」

「はい!」


 駄目だ。これは悪い夢なんだ。

 そうだ。みんなが俺んちに押し掛けてきたのも何もかも全て夢なんだ。


「はい! リーダーには速水くんを推薦します!」

「賛成!!」


 これは夢だ。絶対に夢だ。頼むから夢であってくれ!


「うむ。では速水。お前がリーダーだ」


 なんで拍手喝采なんだよ!


「あ、すいません。ちょっとお腹が痛いので保健室に行ってきます」


 お腹を抑えて背を丸めて、すごすごと逃げるように教室から出ようとすると、制服の襟首を掴まれた。


「仮病はよせ。お前のブレスレットにそんな表示はされてないぞ」


 ゆっくりとサポートAI搭載ブレスレットに視線を落とす。光れ、光れと願いながら。


 視線を落とし、ブレスレットを見ると、ブレスレットはその願いを叶えるように体調異変を知らせる警告色であるイエローに光った。


「え、本当だったのか」

「き、教官。そういう事ですので、失礼します」


 足早にならないように気をつけながら教室を出る。そして保健室ではなく、校舎の外に出て普段は誰も来ない大講堂裏を目指す。


『感謝してくださいね』


 メイド服姿の、俺のサポートAIが肩の上に乗ってそう言ってきた。


「ありがとう。本当に助かったよ、輝夜」

『でもこれで解決にはなりませんよ』

「そうなんだけどさぁ。わかってるけど、あの場からは逃げたくなるだろ」

『まあ、春ですからね。マスターが弱気になるのは理解してます』


 わざわざ春をつける事に少し悪意を感じる。

 それじゃまるで、春に大量出現する変態どもみたいじゃないか。


「こんな所で実体化していいのか。バレちまうぞ」

『大丈夫です。私は高性能特別モデルですから』


 なに胸を突き出して誇ってるんだよ。

 まあ、こんな輝夜みたいに実体化するタイプは俺も聞いた事はないけどさ。

 けど、実際にその通りだから反論できない。


『だいたいマスターは、やる気がある時とない時の差が激しすぎます。やればそつなく出来るのですから、もっと積極的に物事に取り組むべきです。それに普段から目立たないように力を隠そうとするのも、やめた方が良いいと輝夜は進言します』


 的確に俺の心を抉る、その真っ当な進言が痛い。

 サポートAIは所有者の性格や行動を学び、日々成長する。俺は人より早く、物心ついた頃から既にブレスレットを身に付けていた。そのせいなのかもしれない。輝夜がこんなに口煩いのは。


『しれっと私の悪口を言わないでください。私は口煩くはありません。どちらかといえば放任主義です』

「輝夜、お前とうとう人の心が読めるようになったのか」

『馬鹿なのですか、マスターは。私はマスターの考えてる事を推測は出来ても、口にしてもいない事を正確に知ることなんて出来ません』

「ならなんで分かったんだよ」

『口に出してたからに決まってるじゃないですか』


 二人の間に微妙な間と空気が流れる。


「ですよねぇ」


 輝夜にしっかりジト目を向けられた。


「はあ、家に帰っても心休まる場所がない。俺はどうすればいいんだ」

『別に普段通りでいいかと。それに昨夜の件はマスターを揶揄っていただけで、たぶん昨夜のような事は起こらないと思います』

「たぶん、なのか」

『はい。たぶんです』


 たぶんかよ。全然安心出来ないじゃないか。

 俺も一応思春期の多感な年頃なんだぞ。女子に囲まれて暮らして平気な訳があるか!

 ただでさえ学園だって、女子校みたいなもんなのに。


『生まれ持っての魔力適性は女性の方がありますから仕方がありません。魔力適性を持つ男性の方が稀ですからね。諦めてください』

「輝夜、やっぱり心を読めるだろ」

『そんなスキル持ってません』


 スキル?

 もしかして読心術のスキルってあるのか。


『そんなの存在しません。アニメの見過ぎです』

「しっかり読んでるじゃないか。あるんだろ、俺にも教えろよ!」


『だぁ、かぁ、ら、心の声が駄々漏れしてると先程から言ってるじゃないですか!』


 そう言って輝夜はその小さな拳で、俺の顎を打ち抜いた。その衝撃で一瞬意識が飛ぶ。

 そしてブレスレットがイエローに光り、身体の危険を知らせた。


『あ、心配ないので止めておきますね。私としたことが切り忘れていて申し訳ありません』


 本当に大丈夫なのか。それに切り忘れって……

 色々と不安になりながらも、俺は輝夜と放課後まで、こんな感じでサボっていた。

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