13
彼女の私室に戻り、夕食を食べていた。
本当に彼女はよく尽くしてくれるタイプで、食べ物を口に運んだりもしてくれる。
今まで身近にこういうタイプは居なかったので、とても新鮮で愛されていると心から実感する。
そんなイチャラブタイムを邪魔する者が現れる。
部屋の外が騒がしくなり、そして部屋のドアが勢いよく開けられた。
息を切らし、入ってきたのは、お兄さんだった。
「お前、どういうつもりだ! こいつと結婚するとは、どういうことだ!」
入ってるなり、お兄さんがそう叫んだ。
しかし、彼女は驚くこともなく、逆にお兄さんに向けてとても冷たい視線を送る。
「いくらお兄様といえど、こんな無粋な真似は許しません」
ヒューと雪の結晶が舞い、お兄さんの下半身を一瞬で凍らせた。
「こいつはイザナミとも、」
「知っての上でのこと。お兄様には関係ありませんわ」
「しかし!」
「これ以上お兄様と話すことなんてありません。ああ、ひとつありました。イザナミには私の使いを送っています。また、彼の国の王にも親書を送り届けるように依頼もさせています。お兄様には皇帝陛下より、近いうちに勅命が下るでしょう。あの青い星を奴等の侵略から守護せよ、とね」
「な、そんな、まさかお前は、」
「ではお兄様、さようなら」
彼女が軽く手を叩くと、部屋に兵士たちが入ってきてお兄さんを部屋から連れ出していった。
「とんだ邪魔が入りましたね。食事を再開しましょう」
いつもの優しい彼女に戻った。
そんな彼女をいたわるように、一口大に切ったお肉をあーん、と言って食べさせた。
はぁ、かわいい。ほんと、癒される……
イチャラブタイムが再開した。
次の日。二人で街ブラに出掛けた。
彼女は白いシンプルなドレスで身をつつみ。つばが広めの白い帽子を少し斜めに被っていた。
ピンクゴールドの髪が風に揺れる。
あまりの美しさに、俺は足を止めてしばらく見惚れていた。
「そんなに見つめられたら恥ずかしいわ」
彼女は少しだけ頬を赤く染めて、俺の手を引いた。
「美味しいお茶でも飲みましょう!」
彼女に手を引かれ、ゆっくりと走る。
そんな穏やかで優しい時間。
それはいつ振りだろうか。
幼い頃の記憶が蘇る。
俺だけがこんなに幸せでいいのだろうか。
茶店のテラスで彼女のお勧めを味わう。
とても爽やかな香りがして飲みやすい。
「ねぇ、お姫様なのに危なくないの」
「ここは皇都よ。この都市で私に敵意を向ける人なんていないわ」
「そっか。なら安心だね」
そんな話をしながら行き交う人々を眺める。
ギリシャ神話に出てくる人達の服装によく似ている。とてもシンプルな服装なのだけれど、その服の素材はとても良さそうに思えた。
「私達のような長命種は、どんどんシンプルな生活になるものなの。贅を尽くしても飽きてしまうし。結局、疲れてしまう。そんなものなの」
哲学的ってやつなのかな。
俺達が普段家ではTシャツ一枚なのと然程変わらないのかも。
「ところでコウタはいつまで、僕なんてかしこまってるつもりなのかな」
「えっ、バレてた」
「バレるよ。たまに俺、とか言ってるからね」
かわいく小さく笑われた。
「ふん、緊張してただけだから」
「へぇー、あんなに激しいのに」
「もう、揶揄わないでよ!」
ゆい姉とは違う意味で敵わない。敵う気がしない。
「昨日、お兄様と話してたこと気になってる」
「まあ、そりゃあ気になる。今だって俺が幸せになってる時に、あっちでは戦ってるのかと思うと少し辛くなる」
「少しじゃないくせに。でも、そうよね。コウタの気持ちも分かるわ。コウタ安心して。あちらが私達の言葉を信じてくれるのならば、私があなたの星を守ってみせるわ。必ずね」
ああ、天皇陛下への親書って、そのことだったのか。
「ちなみに、イザナミへの手紙も気になるのかな」
「意地悪だな。もしかして夜の仕返しなの」
初めて言い返してみたら、思いの外、クリーンヒットしてしまった。
みるみるうちに顔が赤く染まり、耳まで染まった。
「こゆな人前で、そんな事は言わないで」
噛んだ。ほんと、かわいいんだけど。
「ごめんごめん。もう言わないよ」
「ばか」
まだ顔の赤さはひかず、顔をプイッと背けてしまった。
このギャップには堪らない。
夕暮れが時が近づき、景色の良い高台へ移動した。
そこからは街を一望することが出来た。
夕暮れに染まっていく、石造りの家屋がとても幻想的に見える。
そんな美しい景色を手を繋ぎながら二人で眺めていた。
「君の名を、咲耶にしたいんだけど、どうかな」
「サクヤ?」
「日本で一番綺麗な女神様の名の一部からなんだけどね」
「ありがとう。嬉しい」
「うん。二人だけの秘密だね」
俺達は向かい合い、そしてキスをした。
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