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 季節は夏。夏といえば海。そしてバカンス。

 しかし、俺は病院のベッドの上で点滴に繋がれ寝かされている。


「不幸だ」


 陽射しの眩しい。そんな夏の青空を眺めながら心の気持ちを溢す。

 あの皆を恐怖のどん底に落としたメイガスの落日から一週間。

 俺は悔しさから脳内シミュレーションを何度も行うも敗北だけを重ねていた。


 あの輝夜の強さはなんだったのだろうか。

 見事にフラグを回収された気分だ。


「知りたくても怖くて聞けない」

「何が」


 隣のベッドでタブレット端末で何かを書きながら、ゆい姉がそう訊いてきた。


「いや、それよりさっから何してんの」

「輝夜の戦闘を参考にシミュレートだけど」

「戦闘を参考にって、あの輝夜の動きが見えたの」

「血が片目に入ってあれだけど見えたよ」


 あれだけど見えたってなんだよ。

 片目でもって、俺両目でも全く見えなかったんだけど。


「洸太は見えなかったの。まだまだだね」

「魔力の流れで、なんとなくは分かったし」

「ふーん、負け惜しみだね」


 このまま会話を続けたら煽られ続けるだけだ。

 俺は反対側の隣のベッドで静かに読書をしているりっちゃんの方を向いた。その奥には八島がいて、暑さからなのか上の服の胸元をしっかり広げていた。下着はつけてなかったので慌てて顔を逸らす。


「八島、その見えてるのどうにかしろ」


 りっちゃん越しに八島に注意した。


「ははぁん。見たの。興奮した」

「見てねぇし興奮なんてしてねぇよ!」


 ったく、これだからギャルは。


「ええ、速水くん私のも見て!」


 八島の奥の朝日がおもいっきり服を広げて胸を見せていた。

 思わず鼻血が吹き出して、そのまま倒れた。


「洸太、免疫なさすぎ」


 ゆい姉はそう言って優しく鼻血を拭いてくれた。


「あなた達、洸太を揶揄うのはやめなさい」


 りっちゃんが二人を注意してくれた。


「揶揄ってません。アピールしてたんですぅ」

「そう。クラスで誰が先に選ばれるのか。その為の誘惑です」


 こわい。ギャルこわい。

 でもなんちゃってなんだよな、こいつら。


「八島ちゃんも、朝日ちゃんもそこまでだよ」


 見舞いにきた絵里が病室に入ってくるなり二人に注意した。


「はーい」


 そう二人は声を合わせて返事をする。

 りっちゃんの時とは違い、とても素直だ。

 それもそうだろう。

 絵里はかつて長年君臨したクラスの女子のトップだったのだから。


 一般的、というか他はあまり知らないが、うちのクラスにもヒエラルキーが存在する。それはおそらく他よりも緩いが確実に存在している。


 特に模擬戦などの実技は絵里の言うことが絶対だ。その絵里の指示に背く者などいない。

 そこら辺は緩くても軍学校なのだと思う。


 まあ、他のクラスなど知りもしないが、うちのクラスに上下関係を逆手にとって偉ぶるやつもイジメをするやつもいない。

 仲良しグループはあっても対立なんてしないし、足の引っ張り合いもない。


 そんな事をしてたら戦えない。

 もしそんなやつがいたら、即排除されているだろう。

 というか、第一学園は初等部から進級をかけて互いに切磋琢磨し競い合っている。

 魔力適性があっても、決められた合格ラインに達しなければ容赦なく足切りされる。

 そんな環境で仲間割れをして実技で連携不足となり不合格になる。そんな自らの首を締めるやつなどいない。と、思う。他のクラスを知らないので断言は出来ないけれど。


 それは絵里が支援科に進んでも変わらなかった。但し、今現在のクラスの女子のトップは八島ではなく、山城クラス委員長だ。

 まあ、個性派揃いのこのクラスで冷静に指示できるのは彼女しかいないか。八島はギャルだし。


 そんな固い結束で結ばれているクラスではあるが、あの地獄のカリキュラム後、最初の実戦でやらかした者がいる。


 大和だ。通称火の玉娘の彼女はとにかく元気で突っ走る。それが初の実戦で悪い方にでた。

 山城の指示を無視して、敵に突っ込み過ぎて仲間に負傷者をだした。幸い負傷者は軽傷で済んだが、彼女は山本司令や舞さん、クラスメイト達に激しく叱責された。


 それはもう恐ろしいもので、訓練場で縄で吊るされての激しいものだったそうだ。

 大和曰く、もうお嫁にいけない。と泣いていた。


 まあ、外部生だし少しは大目にみてと言いたいが、もしそんな勝手なことで仲間が死んだらと思うとさすがに言えない。


 同じ外部生の三笠こと、通称ピュア子ちゃんですら怒っていたくらいだ。

 ちなみにピュアでコミ障でピュア子ちゃんだ。今ではみんなからそう呼ばれている。

 また他のクラスからきた最上ちゃんは、あざとく本性を隠している事から、あざもちゃんと呼ばれている。

 全て命名したのは俺だが中々のものだと思う。



「あれ、晃は」

「恥ずかしいから来ないってさ」

「経験者のくせに意外と純だな」

「あ、ばか!」


 俺のその不必要な発言が絵里を窮地に叩き込んでしまった。

 彼女は涙目で俺を睨む。が、俺には頭を下げて謝ることしか出来ない。

 きっと後から晃にも怒られるだろう。


 だが、これもきっと俺を置いていった天罰なのだろう。

 俺はゆい姉としたり顔で握手を交わした。


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