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 サボタージュ中の大講堂裏で、りっちゃんと最近の出来事を話し相談していた。


『いつまで手を繋いでいるんですか。金剛様、それ以上繋いでいると妊娠してしまいますよ』

「しねぇよ!」

「しません!」


 あきれた輝夜の戯言に対して二人で同時につっこみを入れる。

 ただ、りっちゃんは耳まで赤くしていて、何気にかわいいと思った。


「そ、そういえば、美緒さんの厳しい魔法の指導で、かなりの成果が出ていると聞きました。洸太はどうですか、上手くいってますか」


 美緒とはイザナミの事だ。


(コウタにその身を尽くす。だからミオ。もちろん、心も尽くすわ!)


 なら、心でもよくない。なんて無粋な事は言わない。それくらいのデリカシーは俺にもある。


「うん。でも習得まではまだまだかな。りっちゃんは」

「私は結菜先輩達と一緒に受けてるけど、一番ダメダメかも。ちょっと自信をなくしてる」

「舞さんや加賀さんとも一緒でしょ。そのメンバーとなら、俺も確実に自信をなくす自信がある」

「自信をなくす自信って」


 軽く握った手で口元を隠して、小さく笑っていた。

 やっぱり、りっちゃんはこっちの方がいい。


「なんか山城が回復魔法で擦り傷くらいなら治せるようになってた。このまま上手くいったら世界初の回復魔法使いになるって喜んでたよ」

「私も彼女から聞いた。とても嬉しそうに話してたよ」

「俺も転移魔法を頑張ってるんだけど、五メートルくらいしかまだ転移できないんだよね。それに五回くらいで魔力切れを起こしそうになるし。ほんと、上手くいかない」

「無理しないでね。あれ、失敗すると壁とかと同化しちゃうって美緒さんが結菜先輩に注意してたから気を付けてね」


 え、そんな注告聞いてないんだけど。


「なに驚いてるの。もしかして聞いてなかった」

「うん、聞いてない」


 何やら危険性を教える為に美緒は丸太を転移させて壁と同化させて見せたらしい。

 壁から丸太が突き出している場所は今、府中基地で人気のスポットになってるらしい。ちなみに恋愛成就の御利益があるらしいが、りっちゃんも俺もなんでそうなったのか意味がわからなかった。


「大人って想像力豊かだよね」

「私達より長く生きてるし、そうかもね」


 何故かりっちゃんの頭に座っている輝夜は俺にジト目を向けていた。


「あ、美緒さんのお兄さんの話とか聞いた?」

「うん。かなりのシスコンなんでしょ。やばいよね」

「女性しか皇帝になれないから皇位継承権とかはないけど、実力的には第一皇女と同じだって。美緒さんがそんな第一皇女をバケモノ扱いして怖がってたから本当にお兄さんも強いんだろうね」

「それとお兄さんのメイド件恋人も、かなりやばいらしいよ」

「あ、聞いた。皇族の末席だけど、その強さだけで特別に皇位継承権を与えられたって。戦技無双で有名だって言ってたね」

「うんうん。だから出会ったら即逃げろって」

「でもさぁ、そんな人達から逃げられないよね。結菜先輩くらいじゃないかな。そんな人達と出会う事を期待してるの」


 そう。あきれる程の戦鬪狂。強い人に挑まなければ死んでしまう病気なのかと最近はマジで疑っている。


(最強は、最強でしか磨かれないのよ!)


 胸を張ってそう話すゆい姉に心底あきれた。


「でも、結菜先輩が強くなろうとしてるのは洸太の為だからね。その想いだけであそこまで強くなったんだから凄いよね。けど、だから私も、まだまだ強くなれる」


 その言葉に、俺はただ笑って返した。

 ゆい姉と一緒に昔から俺を守るって言ってくれてた人だから。上手く言葉にできなくて、俺はただそんなりっちゃんに笑って応えるしか出来なかった。


『マスターをお守りするのは輝夜ですけどね』


 銀髪ミニメイドは、りっちゃん先輩の頭の上にちょこんと座って胸をポンと叩いていた。


「はいはい。期待してますよ、輝夜さん」

『あ、馬鹿にしましたね。輝夜、実はものすごく強いんですから!』


 ちょこんと座ったまま、両手を振り上げて怒っていた。ほんと、賑やかなやつだ。




 そんな穏やかな日だったのに、どうしてこうなった。

 俺は無様にも口から血を流しながら地面に倒れ、必死に起きあがろうと足掻いていた。


(我が最愛のかわいい妹の命を奪った、この星の下等生物共のことは絶対に許さん)


 ゆい姉の首を片手で締め上げてそのまま持ち上げている男はそう話すと、ゆい姉を投げ捨てた。


(貴様は最後に殺してやろう。貴様の大切なやつを一人づつ目の前で殺してやる。自分の弱さを悔やみ嘆き、そして自ら死を望むように絶望の中で死なせてやる。まずは貴様の一番大切なそこの男を殺してやる)


 悠然と歩み寄ってくるその男に抗うために必死に起きあがろうと足掻く。

 そんな俺を助けようと、ゆい姉は叫び、必死に手足を動かして地べたを這っていた。


 本当に強かった。美緒の言う通りだった。

 ただ彼女の言うことと違ったのは、彼と彼女からは逃げられない。ということだけ。


 ゆい姉、ごめん……

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