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 皇居の与えられた一室。そのベランダで、俺は体育座りをして星を見上げていた。


『マスターそんなに落ち込まないでください。マスターにはこの輝夜いますから』


 でもずっと何も言わなかったよね。

 ずっと俺をひとりぼっちにしてたよね。


『違います。ロックされていただけです。飛び出したくても出来なかったのです』


 輝夜は俺の膝の上でおよよ、と泣き出した。

 なんとも見事な演技だ。長年君のマスターだった俺じゃなければコロっと騙されているだろう。


『でもですよ。考えようによっては、日替わりで色欲を満たされるということです。マスターの好きなマンガの展開ではありませんか』


 おい。それとこれは別だ。

 マンガの好みと現実を一緒にするでない。


『はぁ、輝夜はマスターの子を産みたかったです』

「それは残念だったな」

『マスターのその時々の好みに合わせて最高の満足感を提供できる輝夜なのに』


 あ、そう。それはとても残念でしたね。

 フワッと風で輝夜のスカートが舞い上がった。


「お前、履いてないの?」

『はい。マスターがそう設定しまたから』

「うそ、だよな」

『いえ、ほんとです。ちなみに毛がないのもマスターによる設定です』


 そんな記憶はない。

 俺は星空を見上げて、深く息を吐いた。


「なあ、どうなると思う」

『これから、ですか。別に日常に性行為の機会が増えるだけでは』

「体が保つかな」

『ほぼ三日に一回のペースで夢精してますから大丈夫じゃないですか』


 え、そんな早いペースでしてんの。

 嘘だ、それは異常だろ。


『まあ、そのせいで輝夜もヘトヘトなんですけど。ですから、私の負担が減ると思えば。いえ、なんかそれはそれで納得できません』

「おい、勝手にすんなって言ったよな! なんで俺の記憶のない時にやってんだよ!」

『無理やり押し付けておいてよく言いますね』

「してねぇよ! 勝手に話つくんな!」


 駄目だ。このままじゃ余計に疲れる。


『証拠として、第三者視点の映像をお見せしますか』

「あるのか」

『はい』


 俺はゴクリと唾を飲む。

 観てみたいが、観たら色々と崩壊しそうなので我慢する事にした。


「しかしイザナミ、あれで俺より歳上なのか。百歳オーバーってエルフかよ」

『まあ、似たようなものですね。ただ、こちらの基準に合わせるのならば小学六年生ですけどね』

「ロリで捕まらないか」

『ハイヒューマン相手にそんな法律ありませんよ。それにロリマンガも好きでしたよね。今は無き、紺色スクール水着系のやつとか、露天風呂系のものとか』


 捏造すんな。そんなジャンルのマンガは購入したことないからな。

 まあ、嫌いではないが。


「はぁ、ゆい姉がなんとかしてくれないかな」

『期待するだけ無駄だと思いますが』


 だよなぁ。

 アマテラスと裏でこっそり盟約を交わしてるくらいだし。


『まあ、一ヶ月毎日日替わり定食を食べたと思って愉しむしかありません』

「え、三人しかいないのに」

『クラスの女子や金剛様なども含めればそれくらいの人数にはなります』


 クラスメイト達とはそういう関係にはならないだろ。あっちもそうだと思うし。


『あの悍ましい陵辱事件をもう忘れたのですか。あの時の彼女達の目と吐息を』


 あれは怖かった。

 あの数々の期待が裏切られるように最後まで焦らされた、あの生殺し状態。

 加賀さんがあと三十分遅く救出に来ていれば、俺は間違いなく精神が破壊されていただろう。

 俺だって普通の高校一年生なんだ。普通に女子に興味もある。ただ普段から女子に囲まれているから我慢してるだけなんだ!

 それに大好きな婚約者もいるし。


『お年頃ですからね。こればっかりはしょうがありません』

「だよなぁ。世界が滅びる前に、俺が消滅しそうだよな」

『やりすぎて消滅したなんて話を輝夜は聞いたことがありません。考えすぎです。それに絵里様の言う通り、明日死ぬかもしれないのだから、その日を全力で生きるべきです。多少好きに生きても天国の神様は文句なんて言いませんよ』


 そうか。そうだよな。

 今日だって杖を振りまわされて追いかけられて、何度も死ぬと思ったし。そうだよな。いつ死ぬかわからない日々なら少しはわがままに生きてもいいよな。


『ええ。マスターの少し足りない頭で深く考えたところでどうにもなりません。なるようになる。その精神でいくべきです』

「お前は常にどこかで俺を貶める一言を入れないと死んじゃう病気なのか。だから良い事言っても、良い風にしかならないんだよ」

『好きなくせに』

「うっせえ!」


「あら、楽しそうですね」


 いつの間に部屋に入って来たのか分からないが、イザナミが窓に手を当てて、俺を見ていた。


『マスターと輝夜の不意をつくなんて』

「いつものことだろ」

「あなたかわいいわね」


 そう言って俺の隣に座り、輝夜を自分の手に乗せて上から下まで興味深そうに見ていた。


「ここまで優れた自立自動進化を獲得した個体は、この星ではあなただけでしょうね」

「自立自動進化? サポートAIなら所有者に合わせて成長するのが普通だろ」

「それはあくまでも決められた枠内でのこと。彼女はコウタの為なら無制限に進化し続けるわ。あなたが望む最高のサポート役として、ね」

「そっか。褒められて良かったな、輝夜」

『はい。ありがとうございます』


 珍しく素直な、いや。たんに距離をとってるだけか。一体何を警戒してるのかは分からないけど。


「コウタはこの子のことを本当に信頼してるのね。なんか少しだけ嫉妬するわ。私も、もっと早くコウタと出会ってたら貴方の一番になれたのかもしれないのに」

「一番は輝夜じゃなくて、ゆい姉だけどな」


 そこは間違ってはいけない。

 俺にとって一番大事なところだ。


「そうね。あの悪鬼羅刹の猪女が貴方のパートナーだなんて未だに信じたくないわ。私も彼女と戦えば少し怪我をしそうだし。いえ、それよりも。彼女、自分が勝つまで追いかけてきそうだから敵にしたくないわ」

「あはははは、それは当たってるかも!」


 少し顰めっ面でそう話したイザナミの表情とその話が面白くてつい、笑いだしてしまった。


『マスター、結菜様に聞かれたら怒られますよ』

「いやいや。どう考えてもイザナミの言う通りになるだろ。あああ、ハラ痛えー」


 手をひらひらと横に振りながら、片手でお腹を抱えて笑う。ゆい姉の性格はハイヒューマンのお姫様にとっても嫌らしい。


 ウケる、本当にウケる。

 俺はしばらく腹を抱えて笑い続けていた。

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