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上空で激しいスパークを伴い空間が裂ける。
その生の光景に息を呑んで見つめる。
「リベンジね。私に二度目の敗北はないと教えてやるわ」
『学園生徒は新型武装を装備し、後方支援せよ。決して敵には近づくな。必ず距離をとって後半支援に徹しろ。それと赤城。私と加賀がお前を支援する。必ず敵を倒すぞ!』
「了解」
ゆい姉は上空を見上げながらそう短く返した。
不敵に笑い、その凛々しい立ち姿に頼もしさを感じる。
そんなゆい姉がなんの前触れもなくフォームチェンジする。ファンタジー世界の白をベースにした騎士服なのだが下は短いスカートで上下共に赤で縁取りされている。そしてその上に白の長いコートを羽織るように着ている。
だが、いつも下着の色だけは違う。
『見られて、毎日同じ下着だなんてバレたら恥ずかしいでしょ』
どうやら、本人的には短いスカートを履いてるせいか見られることを想定しているようだった。
けれど、そんなことをしてるのはゆい姉だけだ。もちろん、俺が知る限りの話ではあるのだけれど。
「洸太。ぼけっとしてると大怪我するよ」
「ああ、ごめん」
「早く後ろに下がって、みんなと合流しなさい」
「うん。けどその前に一つ訊いてもいい」
「なに」
「どうして槍なんて持ってるの」
ゆい姉の武装は日本刀を模したタイプだ。確かにそれは右腰に挿してあるのだが、今日は左手に槍を持っていた。
「ふふふ、あの洸太を観て閃いたの。まあ、楽しみにしてて」
どうやら教える気はないようだ。
俺は楽しみにしてるよ、と答えて後ろに下がってクラスメイト達と合流する事にした。
ゆい姉から少し離れた所で、上空の次元断裂が爆けるように丸い異次元のような空間を拡げ、その中から巨大な黄金ゲートが出現した。
大量の魔力をオーラのように放出してそのゲートは金色に輝きを放つ。
ゆっくりとゲートが開き、中から眩い白のオーラを放つアラサーくらいの男が天使の姿で現れた。
中々のイケメンだが、その表情も態度も好きになれない。あからさまに俺達を見下しているのがはっきりわかる。
(ほう。こうして実際に見ると、この世界も随分と進化したようだ)
ほらな。ほんとムカつく。
けれど後ろにもう一人いるような気がして、少し警戒を強めた。
『行くよ!』
ゆい姐は赤の翼をはためかせて、初手から全力全開で紅蓮の炎を纏い一直線に空を裂くように突き進む。
そして途中で半身になり槍を構える。槍の形状が変化して先端が二つに別れ、真ん中辺りにはやや斜めにトリガーが取り付けてあった。
その武装を両手を緩やかに下げて構える。
ゆい姉の口角があがり、トリガーを引いた。槍の先端から放たれた赤の光帯は空を裂くように一気に天使へ向かって伸びていく。
その攻撃に見下した余裕の表者は崩れ、焦りを馴染ませながら右手を突き出すと黄金色の大きな魔法陣が現れ、ゆっくりと回転しいた。
ゆい姉の放った攻撃がその魔法陣に直撃するも、魔法陣が盾となって天使は辛うじてその攻撃を防いだ。
あれだけ魔力を込めた魔法陣を展開しただけあって、さすがに天使も肩で息をしていた。
「一度放ってお終いだと思うなよ」
楽しそうにゆい姉はそう口にした。
槍が周りの魔力を急激に吸い込んでいる。
そして充填が完了し。
「レクイエム、バスターーー!」
一撃目より遥かに強力な攻撃が放たれた。
天使は慌てて魔法陣を展開するが、今度はあっけなく破られて赤い光帯に飲み込まれた。
天使の断末魔があがり、姿形を残すこともなく天使は消滅した。
「さすがにあれはやり過ぎだろ。しかも後ろのゲートまで破壊したし」
『あんな出鱈目な武装を結菜様に渡したのは誰ですか。あれでは鬼に金ビカの金棒を渡すようなものです!!』
確かに。けど、そんな事をするのアマテラス以外にはいないだろ。
『赤城! 少しは私達にも残せ!!』
『馬鹿なの、ゆい。まるで私ピエロじゃない!!』
「あ、ごめんなさい。つい」
終わったと、そんな油断した時だった。
ゆい姉にレーザーのような白銀の光が、彼女の右肩を貫いたのは。
獣並みの勘だったのだろうか、咄嗟に少し避けたお蔭で心臓ではなく右肩で済んだ。
「な、一体あれは」
白銀の輝きが眩し過ぎて姿さえも見えない。
ただ人間大の大きさとしか分からない。
『計測不能! 魔力、質量共に計測出来ません!!』
あれはまずい。
『結菜さん、あれがお伝えしていた上位個体、ゴッドです。気を引き締めてください』
「引き締めるも何も。とっくに私は全力全開なんだけどね」
あんな攻撃をくらって。あんなバケモノを目の前にして、心も折れずにあんなに気丈に振る舞えるのは凄いな。
(あれを避けるの? もう、帰れなくなったしどうすればいいのよ!)
あの白銀の光の中から、女の子の声がした。
(だからやめなさいっていったのに!!)
やっぱりそうだ。女の子だ。しかも、彼女は本気で戦う気はない!
「洸太ちゃん、これ!」
俺がそう思って駆けだすと、桜さんからステッキを投げられ、反射的に受け取り、しかも変身までしてしまった。
「あ……」
「きゃーーー!! なにあれ、かわいい!」
「速水くんよね、速水くんが速水さんになったよ!!」
「あ、ダメ。私もう限界かも」
「ああ、朝日ちゃん、鼻血流しながら気持ち良さそうに倒れちゃダメだよ。しっかりして!」
「誰でもいいから、ちゃんと写真を撮って!」
その場から逃げるように、あの光に向かって飛んだ。それはもう力の限り全力で。
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