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「ストップ! そこまで!」


 アマテラスは戦闘を止めると、ゆい姉によって怪我を負わされた人達を回復魔法で治療してまわった。


「え、回復魔法って実在したの」

「ていうか、アマテラスが魔法を使えることの方が驚いたし」


 最初に俺がその事を知った時のように、みんな一様に驚いていた。


「アマテラス、どういう事ですか」


 アマテラスの治療を受けている加賀さんがそう質問した。


「実戦形式。みなさんが本気にならないと失敗すると判断しました。なので、このような策を赤城三佐と相談して実行した。という事です」


 加賀さんとアマテラスの会話を聴いて、舞さんは眉を顰めた。


「見事に一本取られた訳だが、生徒達全員が成長したと思えば納得するしかないな」

「敷島一佐、ご理解感謝します」

「しかし、だ。赤城のあのデタラメな強さはなんだ。人はあんな風に強くなれるものなのか!」

「舞先輩。敗北は人を強くするんだよ。敵の卑怯な策によって私は致命傷を負って負けた。いや、私自身は負けたとは思っていないんだけど。まあ、次は完璧に叩きのめす。そんな想いが人を強くするんだよ。それにあの戦いで私はいろんな事を学んだしね」


 舞さんに胸を張って強くなった理由を語るが、おそらく誰もそんな答えで納得はしないだろう。

 それになんだよ。私は負けたとは思っていないって、負けず嫌いにもほどがあるだろ。やたら敵は卑怯だと強調するし、戦いに卑怯もクソもないと思うんだけど。


「まあ、ゆいの話すことに私達の常識を当てはめても無駄です、舞先輩」

「れーこ。それじゃ私が非常識みたいじゃない」

「みたい。じゃなくて非常識なの」


 うん。俺も加賀さんに同意する。


「ねえ、速水くん。なんで左目隠してるの」


 八島がそっと布に手を当てて訊ねてきた。


「ああ、ほら。ちょっとしたトラブルがあってさ。左目だけ変わったんだよな」


 俺は布をめくって赤くなった瞳を見せた。


「え、かっこいいし」


 八島は頬を染めて、口を手で抑えていた。


「何々、どうしたの。あ、やばい。これはマジヤバいっしょ!」


 八島のギャル友。初瀬が大声で叫んだ。

 そして案の定、クラスメイト達に取り囲まれる。


「うわっ、オッドアイだよ、オッドアイ」

「ねえ、記念に写真撮ろうよ!」

「速水くんがバージョンアップしたんですけどぉーー!」


 なんだよ。バージョンアップって。


「洸太、なにやってんのよ。隠せって、言ったでしょ!」


 俺はゆい姉にジャケットの襟首を掴まれそのまま片手で持ち上げられて移動した。

 さすがにクラスメイト達もゆい姉に反抗する事はなかった。


『マスターって、ほんと馬鹿ですよね』

「ほんと。考えなしにもほどがあるよ」


 別に隠すことない。何が問題なんだよ。

 ゆい姉に子猫のように片手で持ち上げれてテントに戻ると、桜さんが待ち構えていた。


「あれ、桜さん戻ってきてたんですか」

「やっほー久しぶり。洸太ちゃん元気だった」

「元気でしたけど、久しぶりは違くないですか」

「でさぁ。このステッキの正体が判明したわけ。でね、もっかい変身してもらおうかなって」


 相変わらずマイペースというか、人の話を聞かない人だ。


「桜様、それは本当ですか」


 ゆい姉、この人に様は要らないと思うよ。


「ほんとほんと。このステッキの不思議な金属についてはわからなかったけど、仕様は判明した。潤の、あ、私の弟ね。その潤が、私に対してイメージしてた姿に変わるのっ。だから、洸太ちゃんがあんなに素敵になったのはズバリ、私のかわいさが原因なの」


 は? なんのこっちゃ。


「なにその訳わかんないって顔は。私の解析能力に疑問を抱くわけ。この天才と言われた私の!」


 疑問も何も。説明にすらなってないんだけど。なんでその事に気づかないかな。やっぱ、通訳のアマテラスがいないと会話にすらならない。


「つまり桜様の美しさがそのまま投影された。ということですね。そして弟様がそれを守るために強大な力をステッキに宿した。そういう訳ですか。なるほど。納得しました」


 え、あの話のどこにそんな説明があったの。


「そうそう。さっすが結ちゃん、賢いね!」

「ありがとうございます。これでも私は桜様達皇族に仕える巫女の末裔ですから。当然のことです」


 え、巫女の家系ってのは知ってたけど。そうだったの。


「でね。仕様が判明したのは良いけど。私が変身しても、何故か弱っちい魔法しか撃てなかったのよね。それで、洸太ちゃんにデータ取りを手伝ってもらおうかなって」

「はぁ、別に良いですけど。なんで桜さんの瞳の色は変わってないでんすか」

「いや、変わったし。で、戻ったし」


 はいっ? なんで。なんか俺の勘と本能が危険を知らせているんですけど大丈夫なんですか。


「それで、私はあの時の写真を堪能していて気づいた事があるの。ねえ、これを見て」


 何故かあの時の写真が、今にも販売出来そうな立派な写真集となっていた。そのうちの腰を曲げて上目遣いのポーズがアップになったページを桜さんに見せられる。


「なんか気づかない」

「かわいい。としか」

「結ちゃん。それはそうだけど、ここ。ここをよく見て」


 桜さんは、開いたシャツの隙間を指差した。


「あ、少し胸が」

「そう。胸が女の子なの」


 顔から血の気が一気に引く。


「もしかしたら。もしかしたらなんだけど。下も女の子になってたのかも、しれない」

「桜様、さすがにそれは」

「いやいや。潤の変態具合を舐めてちゃダメ。あいつは私なんかよりずっと完璧主義者なの。そんなあいつが、髪と目の色だけで妥協する訳がないと思うの」


 心配になって自分の股間を見て触る。

 うん、ついてる。大丈夫だ。


「いやいや桜さん! 俺は二度と変身しませんからね。俺はその手のジャンルが駄目なんです!」

「私的にも少し困りますね」


 ゆい姉。そこは少しじゃなくて、大変困るって言ってよ!


「大丈夫。私の勘が告げてる。あと二回は大丈夫だって」

「そんな勘、あてになりませんよ!」

『マスター断固拒否すべきです。それにマスターの最強武装はこの輝夜ですから!』

「私もマスター桜には賛同できません。この解析データを確認しましたが、私の演算能力を持ってしても三割も理解できません。マスター潤を甘く見てるのはマスター桜の方です」


 テントに入ってくるなり、アマテラスが危険だと反対してくれた。その事で少し安心する。


 絶対回避、絶対回避しなくちゃ。


『緊急警報発令! 上空に次元断裂確認。観測数値上限突破! エンジェル級です!』

『総員、戦闘態勢に移行せよ!』


 突然の非常事態が訪れる。

 俺とゆい姉は急いでテントから飛び出した。

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