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25

 次の日の朝から俺の生活は一変した。

 まず二人のSP。それも女性型のアンドロイドが俺の側をひと時も離れる事もなく警護についていた。

 その事について輝夜は憤慨しアマテラスに激しく抗議していた。

 また、ゆい姉も俺から離れる事はなかった。

 近づくもの、女性を徹底的に排除していた。

 それは舞さんでも、加賀さんでも同じだった。


 相変わらず左眼を隠すように布を巻いている。

 そのうち元に戻るかと思っていたが三日経っても元には戻らなかった。


 そんな俺は、今テントをクラスメイト達や舞さん、りっちゃん先輩に取り囲まれて、俺の解放を求めてデモが行われていた。

 その激しい衝突は地面を揺らし、その抗議の声は空気を揺らす。


「あの、これはまずくないですか」

「安心してください。必ず、洸太さんをお守りします」


 アマテラスはそう答えてモニターに映るその外の様子を険しい顔で眺めていた。


 あの、違う意味で訊いたんですけど。


「甘さは命取りに繋がるわ。ここで徹底的に排除しないと洸太が陵辱されるわ」


 アマテラスの隣に立つゆい姉がモニターを見たままそう念を押した。


 なぜ、俺が陵辱されると決めつけているのだろうか、この人達は。

 俺だって、自分の身は自分で守れる。そのくらいの自信はある。


「律との婚約破棄も視野に入れないとね。それに、帰ってからの下宿生活は終わりよ」

「その方がいいですね。いつ何時、洸太さんが襲われるか分かりませんからね。少しでも不安材料は排除しましょう」


 二人の会話についていけない。

 それにテントの守りを固めているアンドロイドの強さにも。

 その強さは舞さんや加賀さんを素手で制圧できる程の強さだった。現にあっけなく二人は捕えられて連行されていた。


「あの力での、」

「時には必要よ!」

「そうです。結菜さんの仰る通りです!」


 この二人を掛け合わせては駄目だ……

 なんでこんな時に桜さんは居ないんだ。


『マスター。マスター桜が一緒なら更に最悪な状況になると思われます』

「やっぱりそうなるのか」


 俺は肩を落としてため息をついた。


『こちら第二班、東側の制圧完了』

『第三班も西側の制圧を完了。これより速やかに中央の抵抗勢力の背後に周ります』

「了解。このまま作戦を継続せよ」


 側面にいる通信官がそんなやり取りをしていた。


「圧勝ね」

「ええ。私達の敵にすらなりませんでした」


 腕を組んでモニターを眺めるゆい姉は、その戦果に満足そうにうなづいていた。


「これが精鋭とは片腹痛い。全員私が一から鍛え直してやる。その乱れた性根とともに!」


 ゆい姉はそんな事を叫ぶ。だが、乱れた性根とは一体何の事だろうか。


『こちら第一班、抵抗勢力の完全制圧完了。これより全員を地下獄房に収監します』


 一体いつの間にそんな物が出来ていたのだろう。


「こうちゃん。みんな大丈夫かな」

「なんとかならないのか、洸太」


 絵里と晃が、項垂れている俺に問いかける。


「駄目だ。俺には止められない」

「そうだよね。無理を言ってごめんね」


 二人は同時に俺の肩に手を置いた。



 だが、クラスメイト達を中心にしたレジスタンスは抵抗を諦めなかった。

 速やかに脱獄すると、武器保管テントを襲撃し新型武装を難なく奪う。

 そしてその新型を装備して激しく戦闘の火花が散る。


 そんな時、加賀さんが砲撃を受け、左胸が露わになる光景がアップでモニターに映し出される。それをこっそり輝夜に保存するよう命じた。

 そして、そのセクシー場面を心に記憶するように食い入るように見ていた。


「これだから童貞は」

「あん。お前も同じだろ」

「はん。一緒にすんな、ガキ」

「そうだよ。いつ命を落とすか分からないのに、今を全力で生きなきゃ駄目じゃん」


 俺は幼馴染二人に知らぬ間に置いてかれていた。

 それも圧倒的に遠く遠く離されて。


「お前ら、俺を裏切っていたのか! あんなに、こんなにも信用し信頼していたのに拘らずに!」

「ねえ、そういう事じゃないよね。全然違うよね」

「だな。それとこれは別だ。大体、あれだけチャンスがたくさんありながら、ゆい姉に手を出せなかったヘタレなお前が悪い」

「そうだよ。私なら一緒にお風呂に入った時点でしてるね」

「そんなのだから、クラスの女子共に弄ばれるんだよ。情けない。身体を触られて何度もイッたお前には愛想が尽きる」

「そうだよ。あそこを触られてもいないのに超敏感過ぎるよ!」


 その二人の言葉はとても深く心を抉る。激しい痛みで、体を丸めて胸を抑えた。


『早く経験する事をお勧めします』


 その俺達の会話を聞いて、ゆい姉は耳の先まで真っ赤になっていた。前を向いているので表情は窺えないが。


「してるし。お風呂で触ってあげたし」

「そうだ。そんな事もあった。そうだよ、手でも、口でもしてもらったし!」

「こ、洸太、そこまで!」


 ゆい姉が慌てて俺の口を塞いだ。


「絵里、晃。今のは忘れなさい。いい。強制的に記憶消去されたくなければ、さっさと今すぐ忘れなさい!」

「イエス、マム!!」


 二人は姿勢を伸ばして敬礼した。

 二人のそんな姿を、なんか久々にみた。


「結菜さん、私との盟約は忘れないでくださいね」


 少し拗ねた感じでアマテラスは言った。

 それを問われたゆい姉は自信満々に答える。


「私は約束を違えない女よ。交わした盟約は必ず守るわ」


 だが、盟約ってなんだろう。とても気になる。


『作戦失敗。南側、突破されます!』

『中央も敵の勢いを止められません!』


 凄い。前回と打って変わって攻勢に出ている。

 特に八島達の活躍が目覚ましい。新型武装を自由自在に扱っていた。


「ふっ、ここまで伸びるとは」

「ええ。想定以上ですね」

「よし、私が出る。奴等に本当の地獄を教えてやる」


 素早くフォームチェンジをして、ゆい姉は天幕から飛び出していった。


 そして上空に紅蓮の翼を大きく広げ、紅蓮の炎をその身に纏った。破壊と絶望を齎す魔王が降臨した。


 彼女が一度手を挙げて、それを斜めに軽く振り下ろすと巨大な炎の塊がもの凄い速さで降り落ちる。

 一瞬で周囲を焼け野原に変え、多くのレジスタンスが地面に横たわっていた。


「あはははは、笑止。この程度で壊滅するなんて歯応え無さすぎ!」

「赤城ーー!」


 舞さんが視界の外から剣を突き出して飛び込んでくる。そんな舞さんに呼応するように八島やりっちゃん先輩、加賀さんも素早く突撃を仕掛けた。


 だが、ゆい姉のただ払った手によっていとも簡単に弾き飛ばされる。

 そこに追撃の炎の槍が放たれ、全員の肩を貫いてそのまま地面に縫い留められた。


 そしてゆっくりと、ゆい姉は両手を広げて大地に降り立つ。

 そして何も言わずに止めの魔法を繰り出すために手をゆっくりと上に振り上げた。


「はい、ストップ!! そこまで!」


 急に戦いを止めたアマテラスに視線が集まる。


「実戦形式の最終模擬戦、全員合格で終了します!」


 皆、その言ってる意味がわからずに困惑していた。

 それはそうだろ。

 俺だって意味がわからないのだから。

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