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 バトルメイガス初期の武装は杖、いわゆるステッキだった。それは王道的な魔法少女もので開発者の趣味そのものでもあった。

 現在のブレスレットではなく小さなステッキで変身したり、変身に併せて大きくなったステッキから魔法を放って地球外生命体を倒していたという。


 今では博物館でしかしお目にかかれないそんな貴重なステッキを桜さんが自慢して見せてくれていた。

 まあ、開発者の一人なんだから持っていてもおかしくはないと思った。

 いざ手渡され、その大きさと持ちやすさ、軽さに感動する。

 指揮棒よりやや短くて、先端に赤い宝石がついた典型的な形をしているが何気に実物を手にすると興奮する。つい浮かれて変身してしまった。


 ステッキは長い杖に変形して先端が槍のように尖り、槍の穂先から下にあたる部分は輪っかになっていて真ん中に赤い宝石がはめられていた。

 おそらく尖った先から魔法を放つのだろう。そんな杖を観察するようにまじまじと眺めていた。


「ちょっ、アマテラス記録。映像記録し忘れちゃ駄目よ!」

「わかっています。マスター桜」


 なんか二人がやけに騒がしい。

 それに二人で動きまわり色々な角度から写真を撮っていた。


「いい。男の子なのに魔法少女。サイッコォー!」


 桜さんは鼻血を吹き出して倒れた。

 相変わらずあほだな。と、思いながら鏡に映った自分の姿が目に止まる。


 下は白のフリフリが付いた黒の光沢がある短いスカート。上も白いフリフリのついた半袖タイプの光沢のある黒のドレスシャツ。

 また、髪は白くなって腰まで伸びていた。

 その姿はまさに魔法少女そのものだった。


 あまりの自分の美しさとかわいさに、色々なポーズをとる。そんな俺をアマテラスは褒めながら色々な角度でパシャパシャと写真を撮っていた。


「いいです。なんか違う扉が開けかけています。かわいいですよ、洸太さん。そう、もっと腰を倒して上目遣いちょうだい!」


 のせられて更に調子にのる。

 あのアマテラスが頬染めてハァハァいっている。

 復活した桜さんも加わり、さらにエスカレートしていった。



「あの、これは一体」


 ゆい姉がテントに入ってきて、俺達を見て戸惑いをみせる。

 しかし、そんなの関係ねぇ。とばかりに撮影会は続く。


「洸太なの。あなた洸太よね。きゃーーー! かわいいーーー!」


 ゆい姉も撮影会に参加した。


「いいよ、洸太。そうお尻を突き出してスカートチラッとめくって。そうそう、サイコーにかわいいよ!」


 ゆい姉は興奮して鼻血を流しながら写真を撮っていた。それは桜さんも一緒だった。


「やばいやばい、やばいよ! 違う自分に目覚めそう!」


 ゆい姉に喜んでもらって大変嬉しい。


「よし、次は夜の空で月をバックに魔法を放とう!」

「いい。それ、いい!」

「まさに魔法少女ですね!」


 空に浮かび、月をバックに杖を突き出し魔法を放つ!

 ドーン、と爆音を立てて赤色に輝く光帯が夜空を一直線に突き進み雲を貫いて消し去った。


「え、凄くない、これ」


 その新型武装を遥かに凌ぐその威力に言葉を失う。

 それは地上ではしゃいでいた三人も同じだったようで唖然と立ち尽くしていた。


 魔法を放った爆音でテントからぞろぞろと人が出てくる。

 一足先に復活したアマテラスが空を飛んで、俺を横抱きにしてテントまで転移した。


 しばらく二人でそのまま茫然としていると、ゆい姉が桜さんの手を引いてテントの中に飛び込んできた。


「あぶなかったぁ」

「この姿の洸太を他の人に見せる訳にはいかないよね。絶対に襲われるよ!」


 え、そっち。杖の魔法の威力じゃないの。


「洸太安心して。君の貞操は必ず私が守るわ!」


 アマテラスに横抱きにされたままの俺の手を取って、ゆい姉はそんな誓いをたてた。


「ありがとう。って、違うよ! あの魔法はなんなんですか!」


 その俺の魂からの叫びで、ゆい姉と桜さんがハッと気づく。


「あれにあんな高出力な魔法出せたっけ?」

「いえ。私は知りませんでしたが、あれを製作したのはマスター潤です。何かを秘めていたとしてもおかしくはありません」


「潤かぁ。あいつなら大切な姉の為なら、やりかねないか」


 あ、双子の弟さんのことか。


「でも、婚約の贈り物です。そんな物騒な物を送りますか」

「いや。あいつは最後まで反対してたからね。私は絶対に皇室でイジメられるって。だからかもしれない」


 桜さんは顎に手を当てて考えていた。

 でも、その表情は楽しそうだ。


「ここまでの変身機能。そして強力な杖。あいつは私に何をさせようとしてたんだ」

「わかった、復讐。レクイエムだよ! 悪に寝返った組織を飛び出しての、世直しレクイエム!」


 ゆい姉、それ皇室相手ってことだよね。不敬にも程があると思うよ。楽しそうだとは思うけど。


『あの、マスター桜。この武装を解析してみては如何でしょうか。きっと安全かつ強力な新武装を開発できると輝夜は具申します』


 桜さんはそうねと、手をポンと叩いた。


「あの、そんな事より、さっきから変身を解こうとしても解けないのですが」

「え、もしかして時間式。それか魔力が尽きるまでとか、かな」


 桜さんはそう言って、アマテラスにお姫様抱っこされたままの俺をジロジロと観察し始めた。

 そして胸元の赤い宝石のついたペンダントを手に取った。


「これだわ。これが核ね。洸太ちゃん、これを握って元に戻れと念じてみて」


 言われた通りに赤い宝石を握り、元に戻れと念じると姿が元に戻った。


「おおーー」


 それ見た二人から拍手がおきる。

 そしてなぜか、アマテラスは残念そうに俺を降ろした。


「この事は秘密ですね」


 アマテラスがそう言うと、二人はうんうんとうなずいて答えた。


「あれ、洸太。色は戻ったけど、髪の長さはそのままだよ」


 鏡で確認すると本当にそうだった。どことなく中性的な雰囲気がするのは気のせいだろうか。


「さすがに一度伸びた髪は、あいつの頭脳を持ってしても戻せなかったか。しかし、姿をきっちり指定するあたり、ほんとあいつらしい」

「洸太まずいわ。これ、れーこの好みそのまんまだよ」


 ゆい姉のその発言でこの場に緊張が走る。


「なんか顔つきも何処となく変化したままですね」


 アマテラスがそう言うということは、絶対にそうなのだろう。


「やばいね。まずは髪を切ろう」


 ゆい姉は何処から取り出したのか分からないが、手にしたハサミで俺の髪を切りだした。

 超さっぱりした俺は鏡で確認する。それを、ゆい姉が髪を整えながら微調整していた。


「よし、オッケー。これで完璧だね」


 何故か左眼を隠すように布が巻かれていた。


「片方だけ赤い瞳なんてバレたら襲われるよ」

「オッドアイも元には戻らず、か。あいつ、色々とやばいことしてくれたな。それに現在の技術を全て集めた輝夜の武器形態よりも強力な武器を作るなんて、あいつはマジで姉馬鹿だな」

「本当に仲がよろしかったですからね」


 ん、なんか話がズレてないか。


『私は負けてません。マスターが覚醒すれば余裕で凌駕します!』

「お前まで話をややこしくするな」


 俺はそう言って左手首に着けているブレスレットを軽く叩いた。

 そして明日からの生活に少し不安を覚えていた。


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