表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/141

23

 新型武装を使用しての訓練は一瞬でも気を抜くと即魔力切れをおこし二日に一回は治療班に運ばれるといった感じで進んでいた。

 特にフル装備での格闘模擬戦は魔力が持って五分という短時間しか戦えなかった。


 そんな中で一人異彩を放つゆい姉。

 まだ傷も完全には癒えてはいないのに、俺達三人を同時に相手をしても疲れ知らずの涼しい顔で打ちのめしていた。


 魔力保有量はそんなに差がない。

 それなのに同じように動けないし戦えない。

 いや、理由ははっきりしている。


 魔力操作が俺達より段違いで上手いのだ。



「くそがあ!」


 舞さんが悔しさをぶつけるように、おもいっきり拳を地面に叩きつけた。

 その気持ちは痛いほどわかる。


 中々上手くいかない俺達に見切りをつけたように、アマテラスは武装と訓練方法を変更した。


「ここ二週間の訓練をみて、装備の変更及び、訓練内容を変更するのが妥当と判断しました」


 その目はとても冷たく、期待外れといった表情をしていた。

 彼女から手渡された新しい武器は少し形状が違うだけで全く同じ物に思えた。


「それでは赤城三佐と戦ってください」


 試し撃ちや練習なしでの即模擬戦に戸惑うもやるしかない。

 不敵に笑うゆい姉に三人で勝負を挑んだ。


 まずは舞さんが突っ込む。それをフォローするように少し後ろに離れて俺がアシストをする。そして後方から加賀さんが支援攻撃を行う基本的なスリーマンセル編成だった。

 手始めに加賀さんが攻撃を放つ。しかし、その変更された武装からは今までとは違った魔法が放たれた。

 魔法弾ではなく、ビーム魔法といえば良いのかは分からないが、とにかくそんな感じだ。

 渦巻きながら直進していくその魔法の威力は凄まじく、放った本人が茫然と立ち尽くすほどだった。


 そんな攻撃に一瞬、俺と舞さんの意識が奪われ動きが止まる。そんな好機をゆい姉が易々と見逃すはずもなく、光剣で舞さんに斬り掛かる。咄嗟に光剣を発動して、ゆい姉の光剣を大きく弾き返した。

 その様に、舞さん自身が目を見開いて驚く。逆にゆい姉は口角をあげてニヤリと笑った。


 光剣を大きく弾かれて、光剣を持つ左手が高くあがる。がら空きとなった体に向けて俺は魔導アサルトライフルを放つ。

 変更前と変わらず魔力の消費は激しいものだったが、負荷を感じることもなくスムーズに伝わり、加賀さんと同じようなビーム状の魔法が放たれた。


 その攻撃は間違いなく、ゆい姉に直撃すると思った。しかし、あろうことか、ゆい姉はその魔法を光剣が弾かれた勢いを利用してクルリとまわり、魔力を纏った足でそのまま蹴り上げて魔法を逸らした。


 その信じられない光景に唖然とする。


「甘い。うちのコーヒー並に甘いわ」

「知らんがな!」


 舞さんと加賀さんが同時につっこみを入れて、攻撃を再開しようとしたが、そこでアマテラスからストップが掛かって模擬戦は終了した。



「どうでしたか。本来の新型武装の使い勝手は」


 してやったり、といった表情で訊いてくる。

 そこで今まで騙されていたと気づく。


「訓練用のじゃじゃ馬仕様よりは使いやすかったんじゃない。威力も増してるしさ」


 そのゆい姉のしたり顔には今回だけは腹が立った。


「まあ、悔しさは成長のスパイスだよね」

「この女狐め!」


 またしても舞さんと加賀さんが同時につっこみを入れた。いつの間にこんなに息ぴったりになったのだろうかと疑問を感じた。


「だがこれが本来の仕様か。これならば使いこなせる」

「ええ。反応、威力。全ての面において、とても良い武装ライフルです」


 確かに桁違いに扱いやすいし、威力もある。


「だと思ったんだよなぁ。アマテラスが用意した武装があんな扱い難いのはおかしいって思ってたんだよ。くそ、まんまとやられた」


「まあ、一日中魔力操作の訓練だったって訳。そりゃあ苦戦するよねぇ。毎日調整を変えてたんだからさ」


 ゆい姉はそう言ってペロリと舌をだした。

 そのかわいさに何気に腹が立つ。

 でもその煽りに舞さんと加賀さんがゆい姉に詰め寄る。

 二人に散々文句を言われるが一向に気にしていない。まさに柳に風。さすがはゆい姉といったところだった。


「じゃあ、ゆい姉は一人だけ本来の仕様のやつで訓練してたのか。そりゃあ強いよ。ずる過ぎだよ」

「そんな卑怯な事しないよ。洸太、もしかして私を今までそんな風に思ってたの」


 両手で髪をわしゃわしゃされた。


「まあまあ。そのくらいにしてください。三人の訓練は一応ここまでになりますが、まだ全体の訓練が終了した訳ではありません。ここからは他の方達に指導しながら、自身でも魔力操作の訓練を引き続き行ってください」


 そして去り際にアマテラスがよく頑張りましたと頭を優しく撫でてくれた。

 褒められて少し嬉しく思った。けれど。


「みんなはこの訓練に耐えられるのか」


 そんな疑問を考えながら自分達のテントまで戻った。

 少し遠目に見えるクラスメイト達の訓練を眺めながら。

もしよろしければ感想や評価、ブックマークなどもお願いします。

★★★★★ も出来たら付けてくれると嬉しいです。

是非、私のモチベアップにご協力ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ