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 東富士演習場へはヘリで移動した。

 今回クラスに合流したのは案の定、絵里と晃。そして、りっちゃん先輩だった。


 絵里と晃に関してはすごく不満な顔していた。

 しかし、無事にカリキュラムを終えたら魔導機甲第一艦隊へ所属されると聞いて、いきなりやる気を漲らせていた。それもいきなり階級が二尉の特別待遇で。



 東富士演習場に着くと、物々しい重大警備が敷かれていた。その中央に設置された一際大きい天幕には大勢の人達が忙しく出入りして何かの準備を進めていた。

 それに、加賀さん率いる第一小隊四名もこの場にいた。


 そこで気づく。あの叱責は、俺にこのカリキュラムを受けさせる為だったのだと。


「お待たせー」


 ゆい姉が軍服姿で車椅子に乗って現れた。

 そして大歓声の中皆に迎え入れられて、天幕の中へ入っていく。


「大人気だね」


 絵里が手を立てて俺の耳元で囁いた。


「そんな情けない顔してると、誰かに盗られちゃうよ」


 晃も俺の前でニヤニヤと笑っている。

 俺は自分の頬を両手で叩いて気合いを入れた。


「イテッ!」


 加賀さんに頬を打たれたのを忘れていた。その痛みと重なり、痛みで思わずしゃがみ込んだ。


「ダサっ」


 晃から短く辛辣な言葉を送られた。


「はずっ」


 絵里からも同じように馬鹿にされる。

 頬を抑えたまま、上目遣いで二人を睨んだ。




 一時間程、外で待機させられていると天皇陛下とアマテラスが多くのSPを連れて天幕の中へ入っていく。そのSPの中にはあの桜さんもいた。

 彼女は俺を見つけるなり微笑むと、小悪魔的なウィンクをして天幕の中に消えた。


 その行動に呆気に取られていると、クラスメイト達から一斉に関係を問われる。

 必死に誤魔化していると舞さんから中に入れと指示がとんだ。


 天幕の中はかなり広く、簡易的な教室のようになっていて、数多くの機材が側面に並び、多くのオペレーターがそこに配置されていた。

 そして俺達の前には黒板より大きなモニターと、その前には半円の大きな机が設置されている。


 その半円の大きな机に優雅な足取りでアマテラスは移動した。

 その優雅さに皆が息を呑んで、小さく感嘆の息を吐く。


「本日より、みなさんに受けてもらう特別カリキュラムですが、参加は強制しません」


 ほぼ無理やり連れてこられた俺達に、アマテラスはそんな言葉を告げた。

 それに対し一斉にブーイングがとぶ。しかし、車椅子に座ったままのゆい姉から無言で発せられた圧により、みんなは押し黙った。


「昨日、パリが消滅しました。三週間程前に赤城三佐率いる第一小隊が交戦、撃退した新たな地球外人型知的生命体。それの同タイプの来襲によって。

 この特別カリキュラムはそれに対抗する為の訓練になります。そしてここに集められたみなさんは、現在唯一の対抗できる新型の魔導武装兵器の数少ない適合候補者です。その訓練は過酷かつ苛烈なものとなるでしょう。下手をすれば魔力障害により日常生活を寝たきりで過ごすことになるかもしれません。

 まずは非公開重要機密でもある。赤城三佐の戦闘映像を特別に今からお見せします。

 その敵の脅威を映像で実際に確認してもらった上で、カリキュラムへの参加の是非を問いたいと思います」


 アマテラスがそう言い終わるとすぐに暗転し、モニターに戦闘映像が流れ始めた。

 巨大なドラゴンタイプを先頭に、群れをなすように中小のドラゴンタイプがこちらに向かって飛んでいた。

 その大きさなどを通信官とやり取りしている音声も流れる。その生々しさに息を呑む。


 皆、食い入るようにモニターを見つめていた。

 大型のドラゴンタイプの首を一刀で落とした時は大歓声があがった。ゆい姉の横に立つ加賀さんは頭を抑えている。逆に俺の横にちゃっかり座るりっちゃん先輩は胸を張って、まるで自分の事のように誇っていた。

 しかし、そんな浮かれた気分は一瞬で底へ叩き落とされた。


 ありえない早さで出現した黄金の巨大ゲート。

 そしてその中から余裕の表情で不敵に笑う三対六枚の翼を持つ天使が出てきた。頭の上に輪っかがないだけで、まるっきり神話や絵画に出てくる天使の姿そのままだった。そして最悪な事にその天使は人智を超えた圧倒的な魔力を誇示するように眩いオーラを放っている。


 斜め下を飛ぶドラゴンタイプの群れに邪魔だと言わんばかりに魔法を放ち一瞬で消滅させた。


 その威力と範囲に皆が言葉を失う。

 その脅威を前にして荒々しい通信が飛び交う。

 その緊迫した様子がにモニターに詳細に映っていた。


 あの時のゆい姉の決断。下した命令、その全てが心に痛みを伴って深く突き刺さる。

 甘く考えていた。敵を甘く見ていた。

 今のままではゆい姉を守れない。


 漁船を守る為に躊躇する事なく、放たれた魔法の線上に移動するゆい姉が、あろう事か迫りくる魔法を刀で斬った。その信じられない選択に理解が追いつかない。

 けれど次の瞬間、敵から放たれた白い蔦によって魔法障壁ごとゆい姉は自身の体を貫かれた。


 その光景に小さく悲鳴があがる。


「……笑いやがった。あの野郎、蔦を放つ前に。許さねえ、絶対に許さねえ!」


 怒りで、叫んで立ち上がった。


「笑った、って。洸太、敵の顔が見えるのか」

「見えないのか、晃。あいつは確かに笑ったんだよ。楽しそうに!」

「こうちゃん、落ち着いて!」


 絵里と晃。りっちゃん先輩の手によって無理やり座らされて口を塞がれた。それでも暴れる俺のところに加賀さんがやってきて鳩尾にキツイ一発をもらう。その痛みで、俺は意識を失った。


「一日で何回やらせるつもりだ」


 加賀さんのその悲痛な表情に少しだけ申し訳なく思った。

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