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 今回の侵攻で多くの人の命が失われた。また、世界中の国が国土の半分以上を灰燼に帰すという悲惨な結果となった。


 世界がニビル侵攻前の状態に戻るのに最低でも100年以上は掛かると予測されている。

 それよりも食料問題の方が深刻で、多くの人がまともに食事をとれないという話だ。

 そんな中で日本だけが大都市を失ったとはいえ、国民は辛うじて普段通りの生活を維持している。

 ならば日本は他国に人道支援を。と思うかもしれないが世界中全ての国に支援できる程の余力はない。だからといって一部の国を支援する訳にもいかず、二進も三進もいかない状況だった。


 しかし本当にこの星の人類は愚かだ。

 ニビルの脅威が無くなった途端に世界中で争いが勃発した。おそらく更に多くの犠牲がでるだろう。

 ティアマトとニビル曰く、こうなる事はいつもの事らしい。故に、地球に支援など絶対にしないと天皇陛下は強く断られたと話していた。


 ああ、そうだ。

 ティアマトとニビルの間で恒久的に和議が結ばれた。今後は互いに手を取り合って共に繁栄しようという事になったが、これはある一人の男のお陰なのかもしれない。



「桜様、何を書かれているのですか」

「伝記さ。とある男の子のね」


 彼は本当に次から次へと厄介事を引き起こしてくれる。だから今のうちからまとめておかないと苦労しそうだからね。

 まあ、私にとっては退屈などしない人生を送れるから大歓迎なのだけれど、彼にとっては本当に迷惑な話なのだろう。実際、理不尽だ、理不尽過ぎると言っていつも嘆いている。


「そろそろニビルに着くらしいです。楽しみですね、桜様」

「結菜はあれでしょ。暴れられるから楽しみなんでしょう。ダンジョンとか闘技場とかでさ」

「それもありますけど一番は冒険ですよ。未知との出会いが待っていますからね。では、桜様も降りる準備してくださいね!」


 はぁ、この子は本当に変わらないなぁ。

 妊娠してもこれなら、出産しても変わらない可能性が高い。母親になるという自覚はあるのかさえも疑わしい。

 まあ、輝夜ちゃんがちゃんと子育てしてくれるだろうから子供については心配ないけれど。現に凛花の産んだ女の子の面倒をみているのは主に輝夜ちゃんだし。しかし凛花があんなにポンコツだとは思わなかった。あれは子供も甘やかすことしか出来ない。あの優れた知能と知性はどこにいってしまったのだろう。


 とにかく彼。私達の家族は順調に増えている。とても喜ばしいことだ。



 この物語の始まりは、とある六人の若者が妄想を現実に、を掲げて全てがスタートした。

 そして皮肉をこめてハルシネーション計画とプロジェクト名をつけた。


 ……もっともらしい嘘。


 世界中の人々全てを欺いて出し抜いちゃえ。

 優秀な人工知能は人々の暮らしを良くするためなんかじゃない。


 魔法少年少女を現実の世界に登場させるため。


 ほんとくだらなくて、どうしようもないお馬鹿な夢。

 けれど。その為に私たちは一つ一つ積みあげてきた。何度も、何度もその積みあげてきたものを崩されても、あきらめずに夢を叶えた。


 もっともらしい(ゆめ)を、現実の世界に示して、それを真実に変えた。


 ほんと、楽しかった。

 でも今の方が百倍楽しい。

 世界はまだまだこんなに広いのだと彼が教えてくれた。

 私の興味は尽きないし、叶えたい夢が次々と溢れ出てくる。楽しくて、楽しくてしょうがない。


 けれどきっと彼は困り顔でこう言うんだろう。


『俺は巻き込まれただけだよ』って。



 私に初めて恋を教えてくれたのは彼。

 私に初めて負けを認めさせたのも彼。

 そして、私が初めて人に頼ることを心地いいと思わせたのは彼。


 彼との出会いは、私にたくさんの素敵な初めてをくれた。


 本当に大好きだ。

 世界中の誰よりも彼のことが愛おしい。



「桜さーん、お願いが!」

「ん、どうしたの」

「オートモードでもかわいいメイドにして!」

「どうして」

「ダメなんだ。あの無機質な声が。どんどん感情を失ってロボットになりそうなんだよ…… 」


 彼は頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

 まあ、輝夜ちゃんは子育てに忙しいから構ってもらってないもんね。


「ちなみにどんなのが良いの」

「純情無垢なロリメイド!」

「おバカか」

「 ……もう嫌なんだ。種を求められるだけの日々が。そのために快楽に溺れる日々が本当に嫌なんだよ」


「 ……いろんな場所で、ところ構わず手を出してくるくせに」


「 ……それはしょうがないだろ、みんなを愛しているんだから」

「だからって、あんっ……」


 もう。ほんとにエッチなんだから。

 なんですぐに発情しちゃうかな。


「桜さん、本当にかわいい」

「ありがと」


 彼は一度死んでから、家族と毎日本気で愛して後悔ないように生きるって、私たちに宣言した。

 それがこの結果。彼の性欲はとどまることを知らない。

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